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『The Witness』は私にとって、傷ついた心を癒やしてくれるゲームだった

私は一時期、精神的にうつ状態になったことがある。
そのきっかけは、ある人間(正確には複数の人間達)から攻撃的なことをされ、自分にとっての自信と気力を完全に奪われたことだった。

いつもはネットで日記なり何かを書いているが、その時期は何もする気力が持てなかった。そもそも、その人間から受けたのは「書くことに対する自信を奪う攻撃」だったので、それから書くことが怖いと感じるようになった。

それに悩んでいる時期に触れたゲームが『The Witness』だった。

本作は2016年に発売された、オープンワールド型の大規模なパズルゲーム。このスタッフは過去に、Xbox360で発売されたアクションパズルゲーム『Braid』を製作している。

『Braid』の発売は2008年。前作から約8年経って、それを遙かに超えるスケールのパズルゲームが発売されたと、当初は話題になっていた。

参考記事:4Gamer

オープンワールドのパズル

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本作の舞台になるのは、大きな「島」。木の生い茂る森や川、砂漠、中には桜の木もある。その自然に紛れるように、建物や機械、装置など、人の手で生成されたものが存在する。
だが、この場所には人がいない。それどころか、動物などの生物も全く存在しない。
なぜいないのか?建造物や機械は何のためのものか?全てが不明だ。

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それらに紛れて、唐突かつ不自然な形で「パネル」が置かれている。描かれているのは、格子状に描かれた道のようなもの。そこでボタンを押すとパズルが始まる。
ルールなどの説明は一切無い。だが最初は道に沿って「線を引けばいい」と一目で分かる。解くと隣に別のパネルが出現して、次は「行き止まりがある」など少し難易度が上がる。解くとまた次、また次、と何度か繰り返すと、突然扉が開いたり装置が動くなど何かがアンロックされ、次の道が開かれる。その先には次のパズルが待っている。

このように、パズルを解くことて行動範囲を広げていきながら、島の謎を解き明かしていく。言わば、オープンワールド形式のパズルゲームという、全く独自のジャンルとなる。

その中には、パズルだけを見ていても解けない、そもそもルールが分からないものも数多くある。

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その時は、その周りにあるオブジェや地形などを見ると、それが大きなヒント、もしくは回答となっていることがある。
また、どう考えても解けない、そもそもパズルとして成立していないものもあって悩まされるが、ある場所からガラス越しにパズルを見ると解法が導き出されるものもある。

あらゆる場所にパズルがある、それは、あらゆる「場所に意味ある」ことを示している。

頑張らなくてもいい

そんな広大かつ不可思議なゲームに私が触れたきっかけは、うつ状態でネガティブな感覚を続けていては良くない、少しでも何か始めようと考えたことだった。
ゲーマーとしては不本意な動機ではあったが、その時の私にとって、このゲームは最も大きな「癒やし」になってくれた

癒やしとなった理由の1つは「自由」であること

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本作では目的の場所はどこか、どこに行くか、どのパズルから始めるか、どれだけ時間をかけるか、それらが全て自由。もっと極端に言えば、パズルを解かずに歩いて散策や発見するだけでもいい。

そんな環境は、言い換えれば「頑張らなくてもいい」ことだった。

もちろん、多くのパズルをクリアするためには試行錯誤する、要は頑張らないといけないが、それはできるようになってからでいい。頑張ることのできない人にとって、無理なく少しずつ自分のペースで進める、「頑張らなくてもいい」ことが合っていた

人がいないから感じ取れる「優しさ」

もう一つの理由、それは「人の姿」だ。

当時の私は、TVやゲームなどの娯楽を楽しむ心境でなかった。正確には、その中で会話やドラマなど「人の姿を見たくない」という心理になっていた。
悪意のある人間に攻撃されたのだから、そうなるのも当然ではある。

でも、このゲームで登場する人物はプレイヤー自身だけで、他の人や動物さえもいない。一見寂しい環境ではあるが、その時の私にとっては最も適したものだった。
むしろ会話はなくても、各所に置かれたヒントや仕掛けなど、あらゆるものに制作側の「優しさ」が見える

言葉をかけられずに優しさを感じ取る、それが最も大きな癒やしとなってくれた。

古典的なスタイルを引き継いだ、まさに「パズル」

そもそも「パズル」と呼ばれるもの、ジグソーパズルやクロスワードなど古典的なものは、時間などの大きな制限はない(独自のルールを設けるケースはあるが)。ちょっとした時間で手軽に、でもじっくりと時間を忘れて楽しむことができる、それがパズルの魅力と言える。

そんな古典的なパズルを、パソコンなどのコンピューターで再現したものは数多く出ている。
例えば、90年代に発売された『パズルトピア』というPCゲーム。

私のブログ記事:パズルトピアに見える「パズル」の魅力: Blog - 19XX

また、ドラマ仕立てになった『レイトン教授』シリーズなども同じスタイルと言える。

その中で『The Witness』は、そんな「パズル」のスタイルを引き継ぎながら「場所」という要素を取り入れることで、ヒントや解法などあらゆるものが同時に組み込まれる。
それは同時に「自由」でもあり、人を見せずに「人の姿」を感じ取る、それが癒やしになってくれた。

傷ついた人の癒やしになる、という基準でゲームを求める人は少ないだろう。でも私に、そのようなゲームはあるか?と聞かれたら、迷わずこの『The Witness』をお勧めする。

追記:Steamレビュー

この記事を若干修正して、Steamレビューに投稿しました。

Steamレビュー:The Witness

Steamレビューは、多くの人が「感想」だけを書くことが多いけど、このようなものもレビューとしてありだと思うので。

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