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『ISS Simulator』で、宇宙空間を体感する

Steamで配信中の『ISS Simulator』は、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)協力による、国際宇宙ステーション(ISS)を体感するシミュレーターで、無料で利用可能となっている。
これは、宇宙でデジタル技術を活用する企業「株式会社スペースデータ」による活動の一環という。

つまり、ここにあるのは実際に宇宙で活動を続けている実物を再現したもので、TVなどでしか見たことがない「本物を体験」できる。
私にとっては、それだけでワクワクするものだった。


船内の浮遊感、船外の孤独感

起動すると、暗闇からISSの船内が浮かび上がり、その中央に小さなポッド(球体)が浮遊している、これをコントローラーかマウス&キーボードで操作するとゆっくりと動き出す。画面はTPS・FPSどちらの視点も可能。

この球体は小さく軽いので、船内でわずかに流れる気流に流され、場所によっては壁に張り付いて動けなくなることもあるが、操作によって気流の視覚化と風量の調整が可能。

その途中には、自分と同じポッドがいたり、宇宙服が置いている部屋、窓から見える地球の姿など、狭い空間に様々なものが凝縮された未知の世界を味わう。

また、本作には船内と船外の2モードあり、ボタン一つで切り替えることができる。船外では宇宙飛行士がISSの周りを自由に移動する。
巨大なISSのと共に自分一人がぽつんと存在する宇宙と、その背景に見える地球の姿。そこに大きな孤独感という、先ほどの船内とは全く異なるものを感じ取る。

音は全くなし、ゆっくり移動するだけ、ただ浮遊を続けるだけなのに延々と見ていられる。

デジタルが実現する「夢の体験」

宇宙空間を実際に体験した人は、世界でも数えるほどしかいない、だから私達は、映画やテレビなどで見る映像や、書物などで得る知識でしか味わうことができない。
私も、それに関する書籍を何冊か読んだことはある。

中でも『宇宙から帰ってきた日本人』、タイトル通り、出版時で宇宙への渡航経験がある日本人12人からのインタビューをまとめた本で、私は過去にnoteで書いたことがある。

その一説を引用すると、

ISSに着くと、今度はキューポラという窓から青く光り輝く地球を再び見た。 その美しさ自体はすでにソユーズ(ロシアの宇宙ステーション)の小さな窓からも見ていたし、よく観察すると地球の色合いなどはハイビジョンテレビや4Kテレビの映像でも、ほぼ再現できているとも言える気がした。
一方で現状の映像技術では決して再現できないと感じたのが、肉眼で宇宙から地球を見たときの圧倒的な存在感だった。

『宇宙から帰ってきた日本人』古川聡氏の体験談より

と、船外活動を経験した何人かの方が、そこで見た地球の姿に「圧倒的な存在感があった」と語っていたのが印象的だった。

ここで語られている通り、このモニターから見る地球の映像としては再現されていても、実際に味わうものとはほど遠いのだろう。
でも、シミュレーターという形で、宇宙の中に大きな地球を感じ取る、その存在感に、未体験だったはずの「空間」の一片を味わっている気分にはなれる。
このような体験はゲームでも味わえるのだが、本作は全くの無音でルールや目的もない、むしろそんな場面だからこそリアルさを感じるのかもしれない。

また、本書ではこのような一説もある。

芸術家の方々を宇宙に送ってみたいですよね。プロのカメラマンが行った ら何を感じるのか。それこそ村上春樹さんが宇宙に行ったら、何を思うのでしょう。その 最初の一文に興味があります。
(中略)正直に言って僕にはそれを表現するためのスキルがないんです。そこがもどかしいところで、だからこそ、表現を専門にしている人に宇宙へ行ってもらいたいという気持ちがあります。

『宇宙から帰ってきた日本人』大西卓哉氏の体験談より

そのような時代が来ることに期待したいが、本作はそんな宇宙の一部を体感できる、デジタルが実現する夢の一つであるように思う。

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つかさん
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