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〈前編〉sprayerメンバーが選んだ2024年ベストリリース
ローンチ1周年を迎え、今もなお進化を続ける音楽ディストリビューションサービス「sprayer(スプレーヤー)」。2024年の「sprayer」は、ネットカルチャーで輝く音楽にフィーチャーした新プレイリスト『Outernet』の公開や、来年開催される『はじかみ音楽祭』への出演オーディションの開催など、さまざまなアーティストに向けて幅広いサポートを行ってまいりました。
本記事では、そんなsprayerの運営スタッフたちが心を掴まれた2024年のベストリリース(アルバム・EPまたは楽曲)3選を紹介。さらに、2024年にsprayerでリリースされた注目作品も1つずつピックアップしてご紹介します。
前編後編の2本立てでお届け。年末年始のお休み中、新たな音楽と出会うきっかけになれば幸いです。
後編はこちら
プレイリスト
よーた
プロモーター(「ICHIGOICHIE」企画)(「Outernet」編成)
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年間ベスト
Porter Robinson "Cheerleader"
Tade Dust "Business (feat. BLASÉ)"
PAS TASTA "My Mutant Ride ft. 柴田聡子 & TAKU INOUE"
Porter Robinson "Cheerleader"
U.S.出身のDJ、音楽プロデューサー。2021年にリリースされた『Nurture』ではナチュラルな音楽性で話題を生んだが、今作『SMILE! :D』は打って変わりポップ性の強いギターサウンドでとてもかわいい!です。その中でも特に中毒でループした"Cheerleader"をセレクト。
Tade Dust "Business (feat. BLASÉ)"
千葉県出身のラッパーTade Dustと韓国出身のラッパーBLASÉとのコラボタイトル。CODEC、D3adStockプロデュースのUkライクなベースライントラックに淡々と乗せていくボーカルがめちゃくちゃカッコいいです。
PAS TASTA "My Mutant Ride ft. 柴田聡子 & TAKU INOUE"
6名で活動するトラックメイカー集団、PAS TASTAとソングライター柴田聡子、TAKU INOUEによるコラボタイトル。本タイトルも収録されているアルバム「GRAND POP」がヤバい。楽曲もさることながら、1つ1つに描かれているパーツが最終的に一つの車になる演出といい、ワクワクが起こりっぱなしでした。特に個人的に好きな1曲をチョイス。
sprayer Pick Up : (not)Acht "LUNA (SPED UP)"
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素性が全く分からないトラックメイカー(not)Achtによる2ndシングルタイトルのスピードアップver。ハイパーポップといった今風のサウンドを軸に、めちゃくちゃポップで盛り上がれる楽曲で実際にDJで流したい!な一曲です。引き続き活動が気になります!
Rara
公式SNS中の人、アーティストパートナー(「naresome」編成)
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年間ベスト
ku-ten 『ku-ten chords』
Simmer Pine 『Recipe』
田中喉笛交響楽団 『sample sale』
ku-ten『ku-ten chords』
現役大学生編曲家"ku-ten"による、豪華ゲストボーカル陣を迎えた楽曲制作プロジェクト "ku-ten chords PROJECT"のEP。高校時代のバンド「C子あまね」もかなり聴いていたので、「C子あまねのドラムが新曲!?」とXで見た日から、5週連続シングルリリースを毎週ワクワクしてはリピートしていました。私得な豪華ゲストボーカル陣の相乗効果もあり、何度聴いてもたまらない作り込まれたポップソングス。とんでもないポップセンスに脱帽した1枚です。
Simmer Pine『Recipe』
「ノスタルジックでロマンチックなサウンド」をテーマに活動する4人組インディーポップバンド・Simmer Pineによる初のEP。タイのバンドの影響を感じる音に、私はすっかり陶酔。一方で"日本っぽさ"を感じる部分もあり、その絶妙なバランスがこのバンドの個性なのではと思ったり。これまでのシングルが良かったのはもちろんですが、この『Recipe』というEPでSimmer Pineというバンドの輪郭がよりはっきりしたように思います。
田中喉笛交響楽団『sample sale』
the bercedes menzの田中喉笛による“(現状)一人オーケストラ”田中喉笛交響楽団の1st Full Album。ミクスチャーロックから演歌まで、田中喉笛に振り回される1枚。特に衝撃的だったのはsidenerds・ねぎしのはんとの「diaspora!!!」。ねぎしのはんの可愛すぎる声と、それとは対照的な音圧に殴られるような一曲。聴いた後に残る気持ちの良い疲労感がクセになります。一転、kurayamisaka・内藤さちとの「遠すぎた春」はついついスキップしたくなる曲調で、含まれる音の一つ一つが全て愛おしく感じるような、初めて聴いた時からたまらなく好きな曲。2024年トップソング100に入るほど聴きました。
sprayer Pick Up :水平線 『NEW HORIZON』
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京都のバンド水平線がリリースした1st Full Album。音源を初めて聴いた時、「この名盤がsprayerからリリースされるなんて...!!」と興奮したのをよく覚えています。水平線の音は、懐かしくて、あたたかくて、でもしっかりと芯を感じる音。4月27日に「旅するロックンロールツアー」に足を運んだんですが、そこにあったのは期待以上の熱量を帯びたロックンロール!コーラスワークも素晴らしくてがっつり心を奪われました。その時買ったサイン入りCDは宝物です。
こやてぃ
エンジニア(「Outernet」編成)
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年間ベスト
ヨルシカ "アポリア"
和ぬか "ギフにテッド"
花譜, おとめ "ゲシュタルト-崩壊Remix-"
ヨルシカ "アポリア"
2024年もヨルシカに魅せられた一年でした。その中でも、10月リリースの"アポリア"をベストとしたいです!この作品について特筆したいことは多々ある一方で、この作品に対して感じている根源的な感動を自分の中でまだ上手く言語化できていません。咀嚼し続けて、いつか腑に落ちる言葉を見つけられたら良いなと思います。もしかしたら、来年の今頃もまだモグモグしているかもしれませんが..笑
和ぬか "ギフにテッド"
今年出会った中で最も歌詞が心に残っている曲です。ポップな曲調の中で紡がれる歌詞には、直接的な励ましや応援の表現がないにも関わらず、不思議と頑張ろうという気持ちにさせてくれる温かさがあります。「無能なりによ もがき続ける厄介者でいて」のフレーズが特にお気に入り!
花譜, おとめ "ゲシュタルト-崩壊Remix-"
最初に聴いたときに「そう来たか..!!」と思わずにやけてしまったRemix。様々なジャンルのサウンドが次々と繰り出されるオリジナルver.とは対照的な、限られた音数で奏でられるChiptuneサウンドに心も身体も踊りだします。Remixをベストには選出しましたが、ダンスがキュートなオリジナルver.のMVもチェックして欲しいです!
sprayer Pick Up :みゃのん "Paradise on Stage!!!"
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バーチャルアイドル・みゃのんの1st Single。歌声、歌詞、サウンドのどれをとってもキュート&キャッチーで、初めて聴いた瞬間から好き!ってなりました。本楽曲が初お披露目されたLIVE「みゃのん生誕祭2024」は、彼女のYouTubeチャンネルにてアーカイブ視聴できるので、気になったリスナーは要チェック!SNSでコール表も配布されてます。
つぎしま
アーティストパートナー、sprayer note 編集長
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年間ベスト
梟 "「ROAD TO THE FUTURE」"
Novel Core "HERO"
April in 85 "SOMETHING NEW"
梟 "「ROAD TO THE FUTURE」"
マジで一回MVを見てほしい。僕はMVを見て飛んだ。笑
今年アメリカツアーを敢行し、アメリカのスケール感を丸ごと持ち帰ってきて手がつけられないほどの勢いが出てきた梟。勢いがそのまま曲調にも、MVにも現れている。「自信が大事」とはいうものの、ここまで自信が形となって現れるバンドもまあ珍しい。
Novel Core "HERO"
縁あって観に行ったNovel CoreのZepp Haneda公演、めちゃめちゃ素晴らしくて、勢いがあって、それでいて貫禄があった。フロアも、スタンドも、関係者も、誰も置いて行くことないエンターテイメントだった。悔しくて、好きになりました。
April in 85 "SOMETHING NEW"
元々別の作品にする予定が、締め切り過ぎてリリースされた本作品をどうしても載せたくなったので書き換えた!編集長特権!笑
コンセプトは80年代ながら、爽やかで新鮮さのある表題曲はApril in 85の新たな顔を覗かせたし、まだ音源化されていない"BOYFRIEND"と合わせて、2024年のApril in 85を語る上では抜きにできない楽曲。
sprayer Pick Up :the Enma. "美食家"
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今年リリースされた曲で、sprayer内外関係なく一番回数聞いた曲をピックアップにしました。「欲望のままに生きる猿たちがまた僕らを笑った」のワードの強さと、世界観のグロさと綺麗さがつぎしまの好みにどハマりしました。何にも似つかずthe Enma.らしさが出ている曲です、僕がアーティストだったらこんな曲を書きたい。
サイトウマサヒロ
ライター
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年間ベスト
水平線 “Throwback”
The Halcyon “水仙”
JADHU “Space Boy”
水平線 “Throwback”
いずれも、sprayer noteにて私が取材させていただいたアーティストの楽曲を選出させていただきました。こちらは京都発の「旅するロックンロール」バンド・水平線の1stフルアルバム『NEW HORIZON』のラストチューン。Oasisをコピーし尽くしたという田嶋太一(Vo,Gt)が作詞作曲。伸びやかなメロディとドライブするギターサウンドはそれ自体が「Tonight I'm a rock 'n' roll star」と叫ぶかのように痛快に響くが、しかし同時に彼らは自らの声と言葉が届く距離に限りがあることを知っていて、だからこそ「それでも」と旅を続けるのだと思う。
The Halcyon “水仙”
電子音楽家・大山田大山脈としても活動する安島夕貴(Vo,Synth)を中心に結成された5人組による初シングルから。陶酔と緊張という相反する手触りが共存し、その狭間をひんやりとした風が通り抜ける。語り手と聴き手の距離感は、普遍性が時に受け入れられ時に拒絶されることで流動する。我々は「私達」であったかと思えば「お前」にもなり、そして「あなた」でもある。
JADHU “Space Boy”
東京を拠点に活動するプログレッシブ・ファンクバンドによるSFテイストなディスコファンクチュ-ン。クールでタイトなグルーヴを展開しながら、その歌声に色気が、演奏にパッションが滲み出る。聞いた話では、宇宙空間にはほのかに甘酸っぱいラズベリーの香りが漂ってるらしい。それならなおさら、JADHUの音楽は宇宙の旅にピッタリだ。
sprayer Pick Up :Rip van cats 『ザ・ベストファイブ』
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「ネオレトロポップス」をコンセプトに活動する4人組によるEP。たとえば違う大陸に生まれた想像上の自分がやけに自由闊達に見えるように。あるいはもう会うことのできない片想いの相手が記憶の中で美化されていく一方であるように。憧れの純度は隔たれた距離の長さによって担保されるもので、だから、平成に生まれた彼らがプレイする昭和歌謡が放つ輝きは、かつてキャバレーを彩ったミラーボールよりも眩しいのかもしれない。
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