「桜花」 写真を組む番外編
そもそも組写真って?
組写真とは、何枚かの写真を組み合わせることです。組むことでドラマを表現するものであって、一枚のなかにドラマを詰め込む単写真とは撮り方も違ってきます。テキストをつけないとストーリーと呼べるほど複雑な状況を説明しづらいですが、写真を組むことで状況の「流れ」は創れます。
作例を御覧ください
私なりの流儀ですけれども、紙媒体になぞらえ、横長の一段分を本の左右見開き2頁に見立てたうえで、マンガの様なコマ割をします。横書きの本をめくる感覚で左上から右下へ順番に御覧ください。
*画像をクリックすると大きくなります。
開花が遅めでした
およそ20年撮り続けてきた世田谷観音さまの特攻桜、今年は開花が遅めで予定していた撮影スケジュールを大幅に変更しなければなりませんでした。かつて桜は入学式の頃に開花しておりましたが、近年は温暖化の影響なのか卒業式の頃に開花しております。ソレが今年は入学式の時期に満開を迎え、むかしに戻ったかのようでした。
特攻桜と組写真について
例年、サクラの開花期に世田谷観音さまの特攻観音堂の前にある、ソメイヨシノの老木の写真を撮り続けて20年以上が過ぎました。よくいわれる「継続は力なり」という言葉を信じていましたが、撮り続ける執念だけでは人の心を動かす写真は撮れません。それを悟りはしたけれど、諦めることも出来ないまま、いまや老いたうえに持病を抱え、そろそろタイムリミットが近づいています。
世田谷観音さまにはソメイヨシノの老木が何本かあります。そのうち特攻観音堂の前にある一本が「特攻桜」と呼ばれています。まず桜が植えられ、その傍に観音堂が建てられたそうで、もとは名も無い普通の桜の木だったのでしょうし、霊魂を宿すような由縁もありません。しかし、その咲きぶり、散り行く姿などは、何事かを語り伝えるように思えてなりません。
その「何事か」を写真に撮って伝えられないかと、もはや20年以上も撮り続けています。
たとえ先天的な才能が乏しくても、後天的に修得できる技術によって補完できることがあります。
写真の才能が足りていないのは平素より痛感しています。いつも何枚かを一組にして、順序を考えつつ前の一枚と次の一枚とに繋がりを持たせ、最後まで見終えたとき、全体として流れが見えてくるように……そういう工夫の仕方を中年すぎてから授業料を払って教わりました。ソレが組写真です。
見る順番を意識して組んだものなので、どうぞ左上から順に御覧下さい。