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水仙の詩 by William Wordsworth

南半球の10月は春なのですが、今日はとても寒いです。桜並木は華やいで、花見にでも行くべきところ、今朝は非常に冷え込んで、朝方の気温はなんと氷点下でした。

昨日は記録的な大雪さえ体験した地域もありました。

世界中、異常気象ですね。

暖かな春が訪れたと思えば、また冬の再来。

でも温かな春を呼び戻したくて、しばらく前に近所で撮った、春の訪れを告げるダファディル Daffadilの写真を開いて眺めてみました。

19世紀イギリスの詩人ウィリアム・ワーズワース (1770-1850) のよく知られた水仙の詩とともにどうぞ。

ワーズワースは作曲家ベートーヴェンと同じ年の生まれですね。

ワーズワースの詩は「赤毛のアン」の前日譚にあたる Before Green Gables(アニメでは2009年の世界名作劇場「こんにちはアン」) を読んでいて
見つけました。

学校にもろくに行けず、赤ん坊の世話ばかりさせられている友達のいない11歳のアンは、谷に話しかけて、山びことして帰ってくる自分の声にヴィオレッタ Violettaと名付けて友達代わりにしていた頃に、この詩に出会うのです。

Before Green Gables は赤毛のアン出版100年を記念して、
カナダの女流作家バッジ・ウィルソンによって書かれました。
モンゴメリの文体とはだいぶん違いますが、
二次創作としてはなかなかよく書かれています。
アニメと原作は相当に違います。
私はよりドラマチックなアニメ版の方が好きです。

とても広く知られた詩で、英語のウィキペディアによると、英詩の中で世界で最も広く知られた作品の一つだそうです。

いずれにせよ、田園詩人と呼ばれたロマン派のワーズワースにふさわしい詩。1804年に書かれて、その数年後に出版されました。

このサイトで詩の朗読を聴くことができます。

全文紹介して訳してみます。

I wandered lonely as a cloud 寂しく歩き回った

That floats on high o'er vales and hills, 丘と谷の上に漂う雲のように

When all at once I saw a crowd, そのとき、たくさんのものたちに出会った

A host, of golden daffodils; わたしを出迎えたのは黄金の水仙たち

Beside the lake, beneath the trees, 湖のそばの木々の下に

Fluttering and dancing in the breeze. そよ風に吹かれて揺られながら踊っていた

Continuous as the stars that shine 天の川で光輝く星たちのように

And twinkle on the milky way, どこまでも続いていて

They stretched in never-ending line 湾の端まで

Along the margin of a bay: 終わりなく伸びていた水仙たち

Ten thousand saw I at a glance, 一目でも数千本の花が見えた

Tossing their heads in sprightly dance. 陽気に踊りながら、頭を上げたり下げたり

The waves beside them danced; but they 湖畔に打ち寄せる波の側で水仙は踊り、

Out-did the sparkling waves in glee: 輝いている波よりも上機嫌に輝くのだった

A poet could not but be gay, 詩人もまた、愉快になれた

In such a jocund company: こんな楽しい仲間たちと一緒だから

I gazed—and gazed—but little thought 花たちを見つめて、見つめて、少しばかり考えた

What wealth the show to me had brought: なんという心の豊かさを私にもたらしてくれたのだろうと

For oft, when on my couch I lie しばしの間、長椅子で寝転がり

In vacant or in pensive mood, 空虚な心で、または憂いの中で

They flash upon that inward eye 花たちはそんな物思いの中に一瞬だけ姿を現す

Which is the bliss of solitude; そうした幻影は孤独であることの至福

And then my heart with pleasure fills, そして私の心は喜びに満たされて

And dances with the daffodils. 水仙たちと踊る

独りであるとき、春の日の水仙の海を思い出す。

あの日の喜びが心中に蘇る。

詩人ワーズワースは家に帰って独り寝転がり、あの一面の水仙の情景を思い出しながら、この詩を書いていたのでしょう。

妹のドロシーと一緒に湖のほとりを歩いていて、一万本もの水仙に出会い、インスパイアされたといわれています。

こんな人生の素晴らしい時間を自分は持っていたのだと思うと、改めて幸福な思いになれます。

とても良い詩ですね。

あなたの住んでいるところがまだ暑くても、寒くても、いつかどこかで見た水仙を思い出してください。

ワーズワースのように心躍るかもしれませんよ。

美しい春の日の思い出のために。

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