エンニオ・モリコーネの「愛のテーマ」:ヴァイオリン演奏

昨日紹介した現代最先端の古楽的なモダンヴァイオリン演奏で知られるルネー・カピュソン。

バッハの演奏では歌わない抑制した響きでバロック音楽らしさを表現。ピアノを奏でるダヴィッド・フレイにオブリガート(補助旋律)をつけているかのように、ぴったりとピアノに寄り添う演奏を披露してくれましたが、カピュソンのストラッドほどに美しい音色のヴァイオリンも数少ないもので、カピュソンの美音を知る自分としては、フレイの「伴奏役」カピュソンは立派なのだけれども、どこか物足りなくも感じました。カピュソンのバッハ録音は世紀の名演なのだけれども。

バッハを聴きながらも、カピュソンのロマンティックな美音も聴いていたいなというぜいたくな悩みです。バロックヴァイオリンはロマンティックに歌えないガット弦という音の伸びない楽器だったので、カピュソンは時代考証的に忠実にそのようなスタイルで演奏しているのです。

カピュソンには映画音楽の名旋律を歌う上げた見事なアルバムがあるのですが、カピュソンらしさを紹介するという意味で、数年前に亡くなられた映画音楽の巨匠モリコーネ (Ennio Morricone 1928-2020) の「ニュー・シネマ・パラダイス Nuovo Cinema Paradiso」の「愛のテーマ」をどうぞ。

先日、現代音楽のヴァイオリン・ピアノのデュオリサイタルに行ってきたのですが、メシアンやラヴェル、リルバーンなどの20世紀音楽を見事に演奏した後、アンコールで奏でられたのがこの小品でした。

「ニュー・シネマ・パラダイス」はわたしの大好きな映画。特に3時間の映画を2時間に縮めた「劇場版」を20代の頃に観て泣きました。語られ過ぎないことが本当の芸術、満たされなかった想いが積み重なって人生になるのだなと。

後に鑑賞したディレクターズカットでは、「劇場版」では解き明かされなかった「謎の全て」がわかってしまうのですが、「劇場版」では人生にはあの頃こうしていればよかったとか、あの人ともう一度出会いたいとか、語られない部分に想像力を刺激されて、あまりの余韻の深さに、映画は編集の芸術なのだということを私は学んだのでした。

哀切な「愛のテーマ」はそんな「ニュー・シネマ・パラダイス」短縮版の語られ過ぎない魅力が封じ込まれたような、答えのない問いのような音楽。

わたしが演奏会場で聞いた音楽とは違う編曲なのですが、カピュソンの美しいカンタービレのストラッドは、われわれをほんの数分間の物想いへと誘うのです。

ルネー・カピュソンのあまりの美しい音色に惚れ惚れとしてしまいます💛。

ほんの小さなサポートでも、とても嬉しいです。わたしにとって遠い異国からの励ましほどに嬉しいものはないのですから。