フリチェク坊やのポロネーズ(ショパン七歳の作品)

Noteでほとんどショパンのことは書いたことがないのですが、前回2021年のショパンコンクールでは、ワルシャワ時間に起きて本選のコンチェルトをほとんどライヴで聴いたりしたりもしました。反田さんや小林さんよりも、協奏曲賞をもらった三位マルティン・ガルシアガルシアの味わい深い表現に惚れ込んだりもしました。

わたしはワルツやノクターンや練習曲「別れの曲」など、ショパンの作品をよく弾きますが、陰鬱なマズルカは大嫌い。あんなに気の滅入る音楽はこの世にありません。バラードも全然好みじゃない。

ショパンという作曲家を好きか嫌いかと問われると「嫌い」と答えますが、ショパンのほぼ全部の作品を知ったうえで、自分の好みじゃないというわけです。昭和の評論家の吉田秀和も同じようなことを書いていましたね。

自分にはショパンはピアノの練習に最適な音楽を提供してくれる人という感じ。

バッハ・ベートーヴェン・ブルックナー・ブラームスが大好きなのでどうしようもない。ショパンと偉大な4Bは全く異質の音楽なのです。

でもオールショパンのコンサートにも何度も足を運びました。ピアノの「お勉強」になるからで、嫌味な聴き方かもしれませんが、それが私にとってのショパンなのです。

ショパンの本場ポーランドからはるばるニュージーランドにまでやってきた、ある高名なピアニストがいたのですが、ショパンのポロネーズだけでほとんど全部コンサートを埋めるという暴挙(?)を行い、軍隊・英雄・幻想やら遺作の作品71まで全部弾いて、最後のアンコールまでポロネーズ、それがショパンが7歳(ジヴヌィ先生によれば八歳)の頃に書いたショパン最初のト短調のポロネーズなのでした。楽譜は先生によって筆写されたもの。

当時この曲のことを知らず、ショパンらしさがまだ完全に表れていない古典的な作風にわたしは一度聴いただけで大好きになりました。

ピアノ演奏技術が中級レヴェルの当時のわたしの腕前でも弾けてしまうのが楽しくて、一時期この曲に夢中になりました。

三人の姉妹、ルドヴィカお姉ちゃんに可愛い二人の妹イザベラ・エミリアに囲まれていた頃の8歳のフリチェク(フリデリクちゃん)の作品、古典的でメンデルスゾーンっぽいショパンといった感じです。

まだ知らないといわれる方は是非ご一聴を。

演奏はハリーナ・チェルニー=ステファンスカ (1922-2001)。

ポーランド出身でコルトーの弟子、第四回ショパンコンクール (1949) の優勝者。この人のショパンはわたしの好みです。ショパン大好きな人は嫌いかも(笑)。

古典派音楽の解釈に定評がある人なので、ショパンらしいショパンではないのかもしれませんが。内田光子(ショパンコンクール二位)のショパンみたいに。

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