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どうして英語ってこんなに難しいの?: (16) Eという文字、L-O-V-E。

現代英語の全てのアルファベット26文字を解説しようという意図はありませんが、英語文字を語ることで英語を学ぶ上での数々の問題点が浮かび上がってくるのは事実です。

アルファベットを個別に一字ずつ理解することはいいことですよ。辞書を調べるのではなく「読むこと」は楽しいことでもあります。

アルファベットの中で、最も使用頻度が少ないのは、QとXとZなのだそうです。

逆に英文の中で最も頻繁に使用される文字はEなのだそうです。

母音のA, E, I, O, Uのどれかであろうということは推測できるのですが、Eはサイレントレターとして、書き言葉には絶対になくてはならない文字だからでしょうね。過去形や過去分詞形の繋ぎのEは絶対に必要。

Enjoy - Enjoyed
Enlarge - Enlarged
Encourage - Encouraged
Enter - Entered
Endure - Endured
Enlist - Enlisted
Enable - Enabled

-edはTの音やDの音になります。無音の繋ぎのEが必要不可欠

喋っているとき以上に、書かれた文面においては、Eは重要なのです。Eがないと、英語らしい強弱のリズムの弱拍の部分がうまく表現できないからです。

Eの存在ゆえに、英語は英語らしくなる。

いわゆるアクセントのない母音のシュワという音の多くは、Eにおいて筆記されます(もちろんAやIである場合もあります)。

これが国際発音記号IPAにおけるシュワ。
小文字eの反転した文字であることはやはりEとの関連からなのでしょう。

EggのE

就学前の子供がアルファベットを覚えるために使うカードには、彼らにとって、最も身近な「卵」 Egg か「ゾウさん」 Elephant が書かれていることが多いです。

どちらの単語もEをカタカナの「エ」のように発音します。

アイウエオのエの音でほぼ問題なく通じますが、口は日本語のそれよりもすぼめて、厳密には英語のエの音は日本語のそれよりも鋭く速い音を発しないといけない。

英語発音には音を飛ばしているという感覚をいつも意識しています。唾まで飛ばすくらいで歯切れの良い英語になります。

EarやEagleは、言葉を喋りはじめたばかりの子供には難しい発音ですね。
綴りがEaは長母音「イー」が普通なのに、Earはそうではない!

英語は「息の言語」と言われるように、いつだって強い呼気で発声されるのですから。

EggのEが「エ」なのは、Eの上にアクセントがあるから。もし仮にggの上にアクセントがあれば(英語的にはありえませんが)、無理やりカタカナで書くと、イみたいな音に響くはずです。

Eはローマ字式のエではない

アルファベットの五つ目のEは、確かに文字としては /íː/ 。

ですので、英単語の中のEは、一般的に日本語の「イ」のような音になることの方が圧倒的に多いのです。でも短い音の「イ」。

Equal
Election
Eliminate
Eavesdrop
Economy (エコノミーではなくイコノミー)
Efficient
Embody
Enclose

などなど、すべてカタカナで書くところの「イ」の音で、Eを読みます。

でもイギリス英語の場合、EncloseやEnableやEnlargeのEは「エ」の音ですね。Enという接頭辞にCloseやAbleやLargeなどと結びついてできた動詞は、英国式では「エ」の音なのです。

Economyのように、Eで始まる単語を「和製英語としてカタカナ化するとき」には、もう圧倒的に「エ」の音で表現しますが、もしかしたら英国風の影響を受けてそうなったのかもしれません。

和製英語のカタカナの「エ」

Endeavorという単語は、南太平洋公開で有名なジェームスクック艦長の船の名前としても知られていますが、カタカナで「エンデバー号」。

Space Shuttle Enveavorも「スペースシャトル・エンデバー」。

でも、この言葉の発音は

/ɪnˈde.və(r)(米国英語), ɪˈndevɜ:(英国英語)/

https://ejje.weblio.jp/content/Endeavour

「インヴァー」ですよね。英語も米語も変わりなく。最後の弱音で延びる音が異なりますが。

音節としては、三音節。

En + deav + or 

という具合に真ん中の音節にアクセントが落ちて、最初のEnは弱拍で、Eは曖昧になり、Inとして発音されるのです。Egg /eg/ と同じではないのです。

Entertainmentは、カタカナの「エンターテインメント」そのままに、Eは「エ」。アクセントが冒頭のEにあるからです。

でもEnterの二つ目のEは弱い「アー」でMentのEは弱い母音シュワか弱いアクセントのないア。

Elementはカタカナ音のエレメントのように、Eは「エ」。Elementaryは冒頭のEのアクセントは後半に移行しても、おとは「エ」のまま。なんともややこしい。

Embassy, Elephant, Empire, Emperor, Empress, Enter, Entrance 
Heir(サイレントのHがついていても同じ)

と「エ」音で始まるEもたくさんありますね。

でもアクセントがあれば「エ」になるかというと、いつだってそういうわけではない。

英語、英国のEnglishやEnglandは、「イ」の音ですよね。

江戸時代にはエゲレスと表現されて「エ」の音だったのに、この場合は正しく改められました。江戸後期の混乱期に国交を結んでいたオランダの言葉ではEngelsch(エングルス)だったので、エゲレスと訛り、英国(イギリス)となったらしいのです。

母音はなんともややこしいのですが、まあ基本は、アクセントがなければ、Eは「イ」の音、でも、Short Iという弱いイ。写真を撮るときの「はい、チーズ」と口を広げる「イ」ではないですよ!

Say, cheese ! 
この口を広げる「イー」はLong IでEという文字を発声する口の形。
EatとかEastとかLetter Eなどは、Long I. 
つまり、長母音のEaの場合ですね。
でもMeはミー、なんと不規則なんでしょうね、英語って。
https://eikaiwa.weblio.jp/column/phrases/how-to-say-in-english/say-cheese 

口をすぼめたまま、口の形を通常ポジションから変えないで、息を喉の奥から吹き出すだけの弱いIです。日本人カタカナ英語はShort Iを使えるようになるだけで瞬時に通じやすい英語になりますよ。

口をすぼめて「イ」!

Short I、これできるようになってくださいね。

長母音の「イー」

Eが長母音の「イー」と発音される場合には圧倒的にEAとAを伴うことが多いです。

Eat, Eagle, East, Yeast, Easy, Eager, 

など。

でもEARとなると「ア」と「エ」の中間音である/əː/となります。

Earth, Earn, Early, Earl, Earnest,

Eだけのままで、「イー」と発音する言葉はないかなと考えてみましたが、文字のEそのもの以外では(Eは最近は、eBookやE-MailやeLearningなど、一音でElectronicの省略語として頻繁に見かけます)一つだけ思いつきました。

Aphrodite

ギリシア神話の愛と美の女神アフロディーテ。

英語では無理やりカタカナで書くと、「アフラダイティー」のように発音されるのです。最後のEはサイレントではないのは、アフロディーテが異国の神様で外来語だからですね。

「ヴィーナス誕生」 The birth of Venusも、The birth of Aphrodite として普通に通じます。
Venusはアフロディーテのローマ式な言い方なのです。

CV=Curriculum Vitae(履歴書)はAphroditeによく似ています。この「ヴァイティー」も同類でしょう。VitaeのAはサイレントでしょう。やはりラテン語由来の外来語。

<追記>Eを「イー」と読む言葉は、EveやSecretも含まれるようです。わたしは短く読みますが。シークレットとカタカナになるSerectはやはり「イー」ですね。今では差別用語として使われない、Negroも「イー」。でも短く読む方が多い印象を受けます。

あと難しい言葉で、EthosのEも「イー」。エトスという方方でも使われますが、英語では「イー」
<追記おわり>

Aeと綴られるとAはサイレント。Aesthetically (美学的に、審美的に)などはアメリカ語では、Esthetically となり、そもそもAが消滅しています。 

Aphroditeの派生語のaphrodisiacなどという言葉を最近よく見かけます。「性欲を促す、催淫の」という意味。ギリシアの愛の女神は、聖書の神とは違う、性欲エロスの女神なのです。

サキュバス(サッキュバス)succubus という性欲を奪い取るという、ヨーロッパの民間伝承の下等悪魔が日本のファンタジー小説などで人気なようですが、これはいい意味で使われる言葉ではないですね。

サイレントになるE: Anne with an E

英語の書かれた言葉のEが無音になることは日常茶飯事なのですが、だからこそ、スペリングコンテストなどでは、Eはコンテストに出る人たちの最大の敵かもしれませんね。

Paste, Taste, Waste, Gate, Take, Make

などは下のように綴ってもいいはずです。発音されないEなどいらないのでは。

Past, Tast, Wast, Gat, Tak, Mak

でもこうすると、PasteはPastという別の言葉と一緒になり、こんがらがってしまいます。

Eがなくては英語は全く成り立たないのです。

実は、サイレントEが英単語の最後に現れると、その前の母音は長母音として発音されるというルールがあります。

語尾に発音されないEを伴うと、Aは「ア」ではなく、「エイ」と発音されます。

Eで終わらなくても成り立つ言葉がありますが、あるとないとでは、視覚的に全く印象が異なります。

有名な例では「赤毛のアン」ですね。

何度も映画化されていますが、最近では、「Anne with an E」というドラマがネットフリックスで作られたほどに大人気な、孤児だったカナダのプリンスエドワート島の赤毛の女の子アン。

映画版のアンは美少女ばかりですが、このネットフリックス版のアンは、美形ではない、コンプレックスだらけの原作そのものなイメージの上に作られていますね。秀作です。美化しては物語に説得力が欠けてしまいます。

この子の本名は

Ann Shirley

なのですが、アンは自分の名前にEを付けることにひたすら拘ります。

発音的に全く影響を与えない語尾のEなのですが、三字のAnnよりも四字のAnneだと格調高く響くのだとか。

グリーンゲーブルスに到着早々、本名を告げずに「コーディリア」と呼ばれたいと語るアン。
そうでなければ、Eのついたアンと呼んでくれと懇願するのです。
With 'an' Eであり、With E ではないということに注目。
Eという文字は可算名詞なのです。

接頭辞のRe

接頭辞のReのEはアクセントがないので無声化して、Reは「リ」の音になります。

Return, Reunion, Reverse, Repeat, Rehabilitate, Reconstruct, Retire, Resource, Research, Resort, Recruit, Reform, Replace, Report, Regain, Reimburse

など、繰り返しを意味するReにはアクセントはつかないので、発音は曖昧になります。

でも動詞のResearchは名詞化するとアクセントが冒頭に移って、リサーチだったのがサーチとなる。

動詞 / rɪˈsɜrtʃ / 
名詞 /ˈri sɜrtʃ /

ああややこしい。

Reと綴られていても、成り立ちの違う言葉の音節として、Repで分けられる場合の発音は「レ」。

Representationは、Rep+res+ent+ation なので、レプリゼンテーション。Replicaも同じ。

Eのことを書いて行くとキリが無いのですが、まさに英文の中では潤滑油のようになくてはならない文字。

Hereは「イ」でも、TheyやThereのEは「エ」。

ああややこしい。基本語にもこういう例外がたくさん。基本語ほど、ゲルマン起源やアングロサクソン起源なものが多いからですね。

長い単語の発音は、アクセントの有無からだいたい推測できますが、英語学習の王道は、一字一字辞書を引くこと。しっかりと辞書を引いて発音を確認して下さいね。

LOVEのサイレントE

最後にサイレントEのある大事な言葉、Loveについて。

Loveは古い英語ではLufuで、その後、綴りが変化して、現在のような綴りになった古代ゲルマン由来の言葉。ドイツ語ではLiebeがLoveにあたる言葉。

ラテン系ならば、「愛する、好む」を意味するギリシャ語のPhileが含まれるはず。

Philosophy, Philanthropy, Philharmonic, Bibliophile, Anglophile, Philately, Pedophili

などが Phileから派生した英単語。

英語で「愛」とはLoveだとばかり信じていると、Phileが理解できないかも。いや、なぜLoveという言葉がPhilと関連しない言葉なのかを考えるのは面白いかもしれません。

ゲルマン系とラテン系とアングロサクソン(ヴァイキング)系の言語の融合体が、英語という言語なのです。

ナット・キング・コールの「L・O・V・E」

英語でLoveという綴りを見ると思い出す歌があります。

ナット・キング・コールの名曲です。

歌詞を眺めているだけでほんとにEだらけ。小文字は半月の形みたいで、どこか可愛らしい。

Eという文字、Loveという言葉の最後の文字だと思えば、なんだか愛着も湧いてくるのではありませんか。

歌詞の四行目はEという文字を歌います。

Eという文字には、言い表せないほどの愛が詰まっているという意味ですね。

無声サイレントで発音されない、付け足しのような文字なのに。言葉にならないで無音のまま、という表現がぴったりかも。

最後のcan は休みなく、音楽は流れて次の行のLoveへと直接つながります。和歌の掛け言葉のような絶妙な流れですね。

この分の構造は

E is even more than anyone (that you can adore) can + love

Eという文字には、あなたが慕うどんな人があなたを愛せるよりも大きな愛が込められている!

「Eのつくアン」にどこか通じるような意味深いE。

L is for the way you look at me(Lという文字は君が僕を見つめるために)
O is for the only one I see(Oという文字は僕が見ているただ一人の君のために)
V is very very extra-ordinary(Vはもう言い表せないほど)
E is even more than anyone that you adore can (Eという文字には、君が思いを寄せる誰も決してできないほどに…君を愛する思いが詰まってる)

Love- its all that I could give to you(それは=愛、僕が君に与えられる全て)
Love is more than just a game for two(愛とは、二人だけの単なる遊び以上のもの)
Two in love can make it(愛する二人が作り出すもの)
Take my heart and please don't break it(僕の心を受け入れて、お願いだから壊さないで)
Love was made for me and you(愛は僕と君、二人のためのものだから)

筆者拙訳

親日家だったナットはなんと、日本語でこの歌を歌い、録音されています。聴き比べることで、英語と日本語のリズムの何が違うのか理解できるかも。

作詞家さんのご苦労が偲ばれる名訳ですね。わたしの意訳の方が原詩の意味をより理解できるのですが、歌えないですから。歌は歌うためにあるのですから。

Eという文字にまつわるお話でした。


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