ヤギ肉を食べる
日本でヤギ由来の食品が一般的ではない理由は、山羊肉やゴートミルクやゴートチーズを食べることが日本文化になりえていないからです。
沖縄など日本の一部では食されていますが、やはり日本全体の文化とは言い難い。
世界中であれだけ食べられている羊肉にしても、まだまだ日本文化の一部とはいえないですね。
北海道などにモンゴル遊牧民の調理法を導入したジンギスカン鍋にしても、やはりモンゴル由来の韓国焼肉の亜流にしか見えない。日本的な羊肉の食べ方は無理なのかなあと、ラム肉を日がな当たり前の食事にしている、酪農大国ニュージーランドに住むわたしは思います。
山羊肉はNZでは普通の食材。スーパーで普通に売られています。普通に市場に流通していて値段も手頃。
NZ Fresh Goat Loin NZ$8.06。キロ500円くらい?
スジ肉の部分が多いので可食部位が少なそうに思えますが、インドや東南アジアの人たちがするように、圧力鍋で煮込んでしまえばどの部位もトロトロになり、ゴートカレーなど最上級のラムカレーに比べても何の遜色もないのです。とにかく美味。
こちらがわたしが作ったゴートカレーのランチ。おいしかったです😋。
アフリカや中東では伝統的にタジン鍋で煮込む。するとスジも全部柔らかくなる。
グリルすると骨周辺のスジ肉の部分は固いのですが、真ん中の筋肉はやはり最高級のラム肉の味に似ている。匂いは強いかもしれないけれども、ラム肉同様にスパイスとハーブを適切に使えば、肉の個性は最高の食体験の源となるのです。エギゾチックな香りの饗宴。
ここは好みだけど、日本人はスパイスとハーブ、なかなか使いこなせないんですね。要は慣れなのですが。
とにかく乙な味!見た目はラム肉と変わらない。
ゴートミルクから作られているフェタチーズなど、こちらではやはりごく普通の食材。ゴートミルクには牛乳を飲むとお腹を壊す原因となる乳糖(ラクターゼ Lactase) が牛乳に含まれる量よりも少量で、牛乳を飲んで下痢するような人でも普通にそのまま飲めることが多い。
ヨーグルトにすればさらに乳糖が減るらしいです。栄養価も高く、ゴートミルクを牛乳よりも優れた食品であると信じる中国人富裕層が子供のために買い漁る始末。
ゴートチーズのブルーチーズとかフェタとか、とにかく赤ワインとの相性最高。メルローとかフルボディのワインがいいですねえ。山羊は食材として極めて優れているということです。
でもスパイスたっぷりの山羊肉は米から作られた日本酒とマリアージュするとは思えません。ゴートチーズは個性的で、なかなか日本の食材とも合わないのが現実ですね。
乳酸少ない山羊乳は絶対に日本人向きなのだけど、山羊の問題は畜産しにくいこと。
羊と違って群れる習性を持たないので、狭い土地ではたくさんの山羊を一度には飼えない。山岳地帯など、どこででも雑草を食べて生きて行けるので、一匹だけミルクのために農場で飼われていたりします。数千年前に犬の次に人間に飼われ始めたと言われるほどに人間との付き合いは長いのに、羊肉や牛肉ほどに食されないのはそのため。
しかしながら、土地がたっぷり余ってるならば、美味しい山羊肉の味を知る人たちは食用山羊を飼育します。NZのヤギは肉質が良いことで知られています。雌はもちろんミルクを人間に恵んでくれるし。ヤギにもいろいろ品種があり、NZの農場では肉質のいいタイプの山羊を商業的に飼育しています。
商業的ヤギ肉ですが、いまのところ、ラム肉の1%にしかならぬ出荷量だそうです。NZにおいてでさえ、まだまだ一般的とは言えないかもしれません。
「となりのトトロ」に登場する山羊。飼われているのはただの一頭で、ミルクと山羊の悪食な性質を利用した除草処理役のために飼われているものと思われます。
なんでも食べます。メイちゃんがお母さんに届けるトウモロコシさえも。
沖縄のゴートスープを食べたことはないですが、レシピを見て思い浮かべることができる味に、わたしはあまり食欲をそそられないですね。わたしなら圧力鍋でも使って肉をトロトロになるまで煮込見ますが、あまり日本風な食べ方ではないかも知れません。
やはり数千年も山羊肉を喰らい続けてきた中央アジアの人たちのスパイスたっぷりの山羊料理の方が美味しそう。まあ好みですが。泡盛と沖縄山羊料理が合うようならば是非とも試してみたいですね。
あと、山羊の毛も大変素晴らしく、カシミヤのセーターとか最高ですね。NZではお土産屋さんに山ほど売ってますよ。ふさふさの山羊。
まとめると、どんなに山羊が優れた食材だとしても、海産物と山菜に米食を理想とする日本食とは相性はよくない。だから日本ではあまり食されないのでしょうか。
しかしながら食生活にも多様性が大切。
山羊肉はラム肉以上に食べる人を選ぶかもしれないけれども、山羊は人間の家畜として何千年も飼われてきた動物。コウモリやセンザンコウを食べるのとはわけが違うのです。
豚と牛と鶏以外の肉を食べることのできることも、これからの時代、日本人にも必要かもしれないですね。
ほんの小さなサポートでも、とても嬉しいです。わたしにとって遠い異国からの励ましほどに嬉しいものはないのですから。