本当の多「声」音楽:スウィングル・シンガーズ

ジャズのスキャット奏法を男女混合で行ったスウィングル・シンガーズは、アカペラ(伴奏なし)でバッハの「器楽曲」を歌い、一世を風靡しました。

1960年代から1970年代にフランスで活躍した第一期グループの録音は、2024年に聞いても斬新です。

バッハの平均律クラヴィア曲集などはピアノで演奏されるよりも、こうして人の声で歌われる方が素晴らしいのでは、これこそがバッハが思い描いていた音楽ではないのか、とさえ思えます。

ピアノ演奏をしてみたり、また録音を聴いても、バッハにピンとこない、ポリフォニーがよくわからないといわれる方は、スウィングル・シンガーズでバッハのポリフォニーの面白さに開眼できるかも。

モダンジャズカルテットとの共演も良いですが、やはりアカペラが一番。この動画はバッハのオルガン独奏曲の大傑作「大幻想曲とフーガ・ト短調 BWV542」を八人で歌ったもの。日本のテレビ局の映像。

フーガは複数のメロディがリレーのように違う声部に受け継がれてゆく音楽。大事なのはリレー選手のメロディが他の選手たちと一緒くたにならないで、別々に競い合いをすること。

ピアノで弾くと重なり合うメロディは和音になって、ポリフォニーが不明瞭になるのですが、スウィングルシンガーズの歌手たちは声質が違うために、ハモることがなくて、みんなの声はあくまでバラバラで独立したまま、リレー競争を続けます。

作曲者バッハは、オルガン音楽が声で歌われることなど、思いもしなかったはずですが、それはピアノでバッハが演奏される場合と同じこと。

アカペラのバッハほどに、バッハらしさが活きている演奏は数少なくてバッハの本質をとらえた「理想的なバッハ演奏」だと呼びたくなってしまう。

いつの頃の演奏なのか、正確にはよくわからないのですが、日本のテレビがカラーになった1960年代以降に放送された映像ですよね。いずれにせよ、とても古い映像だけれども、音楽の内容は全く古びていないのは驚嘆に値します。わたしもダバダバとバッハのメロディを歌いたくなってしまう❣

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Logophile
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