怪我との向き合い方/現役ラグビー選手が教えます
みなさんはスポーツで怪我をしたことはありますか?
長い間続けていれば多分程度は違えどどこかを痛めたり切ったり折ったりしたことがあると思います。
怪我ってとても苦しいものですよね。
痛いし生活にも不自由が出る、グラウンドでプレーしている仲間がうらやましい、休んでいる間に差をつけられることはないかと焦る、何より試合に出られないのが辛い
とてもマイナスなもののように感じられます。
僕はやっているスポーツはラグビーです。
怪我とは常に向き合っています
練習前どこかが痛いのなんて当たり前です。
若干言いすぎな部分もありますが「骨折以外は怪我じゃない」という言葉がラグビー界では出回っているほどです
それくらい怪我をするのが当たり前なスポーツなので僕もありとあらゆる怪我を経験しています
骨折・脱臼・捻挫・靱帯断裂・神経損傷etc
もう怪我のフルコースですね(笑)
そうなると怪我はマイナスなんて言ってられません
今回はそんな怪我のプロである僕が自分なりに見つけた怪我との向き合い方について書きたいと思います
*リハビリやトレーニングではなく怪我との向き合い方です!!
まずは軽く僕がどんな怪我をしてきたのか書きたいと思います
高校時代は計15ヶ月怪我人だった
僕は高校時代計15ヶ月間怪我人でした
高校ラグビーに打ち込むのは二年と9か月間くらいです
そのうちの約半分を怪我に費やしていました。
まさかこんなに怪我をするとは
肉離れや首の怪我、かなり強い打撲様々な理由で戦線離脱をしてきました
ただこれらは長くて二ヶ月ほどの離脱期間で済みました
そんな中で一番大きなけがを経験します
二年の菅平合宿で危険なプレーを相手から受けます
後で詳しく述べますががとにかく大怪我でした
菅平から直行で地元へ帰還
怪我の内容は
二箇所の骨折・靱帯断裂・脱臼・神経麻痺
もう大惨事です
医者には全治早くても一年もしかしたらラグビーできなくなるかもと言われ「あーあ、」ってなったのをよく覚えています
ラグビー復帰を目指すより後遺症が残り日常生活に支障が出ることがないように最善を尽くす方向で進んでいきました
ただ、あまり絶望感は感じずこれから何を始めようかなとか言ったことを考えていました。痛すぎて「こりゃラグビー一生できないわ」と悟っていたのでしょう
そこから二か月の入院と三度の手術そして理学療法士さんや柔道整復師さんのご尽力のおかげで僕はこうして競技に復帰し今も大学ラグビーに進み日々練習に励んでいます。
改めて奇跡だなあと書いても思います
二年の夏から復帰までかかった期間は11か月この間に僕は様々なことを学びました。
その中で一番大切にしてほしいことはこれです↓↓
怪我をしても他の子とそこまでの差はつかない
今回言いたいことはこれにつきます
怪我をしたらまず一番最初に思うことではないのでしょうか。
「怪我をしたからレギュラーを外される」
「仲間は練習してるのに俺は休んでいるから差をつけられる。早く復帰しないと」
確かに、怪我をしたことによって試合にも練習にも出られなくなるしチャンスを失ったのかもしれません。
ただ、これは表面上だけでのことです
実際にはほとんど差はついていません
怪我をしたときに陥りがちな思考①
怪我をした時の陥りがちな思考として
隣の芝生を青く見てしまう
これが顕著にあると思います
怪我をしている⇩
練習できない。でもみんな練習してる⇩
みんなどんどんうまくなるんだろうな⇩
差をつけられると心配⇩
早く復帰しないとと焦る
よくありますよね。こんな感じのスパイラルに陥ってしまうことが
これまさしく隣の芝生を青く見ているということなんです
だってよく考えてみてください
別にそんなにみんな上手くならない
スポーツって大したことじゃ上達しません。自分でもよくわかっていると思います。
部活で二ヶ月・三か月毎日練習したとします
「俺はこれがうまくなった」「ここが圧倒的に伸びた」
胸を張って言えるものはありますか?
僕からすると一年でも微妙です
みんなが描きがちな成長曲線
上の棒線が普通に練習してきた子たちで下の点線が怪我で離脱した子です
こんな感じの成長曲線を描いていたりしませんか?
「練習してる子はどんどん上手になるし怪我で離脱してる僕は頑張ったとしてもこのくらいが限界だろう」
どんどん差がついてしまっている
「早く復帰しないと」
いえ、そんなことありません
実際の成長曲線
これが実際の成長曲線です
赤線が怪我で離脱した選手で
青線が毎日練習している選手です
「汚い手書きの線を描きやがって」と思うかもしれませんが
実際こんなもんじゃありませんか?
練習というのは体調やメンタルなどを加味したりみんなのモチベーションや質など様々なものが絡み合います
その人自身の練習の質にはばらつきがあり
直線的に成長することなんてまずありえません。
プレーしてると時にはマイナスに成長してしまうことすらありますよね。自分のフォームに悩んだり崩れたり。理由も分からないけどうまくいかなくなったり
スランプのようなものに陥ってしまうこともあります
ただ、怪我をするとそういった波も減るように感じます
そもそも怪我をしたらやれることと言ったら筋トレ・リハビリ・座学くらいです
怪我をした時にできることはローリスク・ローリターンなものばかりだから成長の波も安定するんだと僕は思っています
怪我をした時に陥りがちな思考②
もう一つ怪我をした時に陥ってしまう思考が
「周りと差をつけよう」「ここでグンと成長しよう!」と無理に考えてしまうことです
一見素晴らしいことのように見えると思います
ただ、先ほども言った通り怪我した時にできることってローリスク・ローリターンなものばかり
波が安定している代わりにグンとここで伸びることは少ないです
ここで生まれてしまうのは周りとのギャップです
練習してないから成長してるかわからない。肉体改造しようと思って頑張ってるけどなかなか伸びない
当たり前です
怪我をしたんだからできることは限られる。ということは伸び幅も限られる。
とにかく焦らない!!
とにかく焦らない。自分もそんなに成長しないかもしれないけど周りの練習している子たちもそんなに大きく成長はしない
差がついたとしてもすぐに埋められる程度の差です
怪我をした時こそ周りを見ずに自分にフォーカス!!
僕が思うのは怪我をした時こそ周りを見ずに自分にとにかくフォーカスする。
周りを見てるとどうしても練習しているところや試合に出ているところが目に入り焦りを生むことになります。
そんな時こそ自分に目を向けましょう
自分にできることを精一杯考えてそこだけに集中する
それだけでいいです
周りを見るのは復帰してから
そのくらいの気持ちで頑張りましょう
もう一つ必要なこと【心の休養】
怪我をした時もう一つ大事にしてほしいのが【心の休養】を取るということです
僕が今まで怪我をしてきた中そして怪我をした人を沢山見てきた中で復帰後すぐに調子を取り戻す、前よりも確実に上達している人には共通点がありました。
「それはメンタル的にフレッシュになっていた人です」
怪我をするまではその競技に集中し突っ走っていました。少なからず心というものは疲弊しているもんです
怪我というのはそういった疲弊を取り除くいい期間です
怪我をしたことによって実はその競技が好きだったんだなと気づく人も多いでしょう
そういった気持ちを大切にして下さい
その気持ちが復帰直後のボーナスタイムとして現れることになります
今回僕が伝えたかったのは
・とにかく焦らないこと
・自分にフォーカスすること
・【心の休養】をとることです
「怪我に苦しめられる」という言葉が僕は好きではありません
怪我というのは確かに苦しいものですが絶対に自分の中の糧になります
「怪我に苦しめられる」ではなく「怪我を活用する」
それくらいの気持ちで怪我と向き合ってほしいです
ここから先では怪我の中でも特に難しくなってくる長期離脱のより具体的なマインドセットの仕方やよく起こってしまいがちな首脳陣と病院、トレーナーと選手の三角関係の対処の仕方。
そしてここでは相手のこともありあまり触れられなかった僕の大怪我の実体験を踏まえて様々なことを書いています
興味がありましたら是非のぞいてみてください
長期離脱のをいかに乗り越えられるか
「長期離脱」
本当にしんどいと思います
僕自身全治一年の怪我を高校時代経験しましたし
長期離脱=引退
となるケースも多くあります
そのような大怪我だと一生残る障害も出てくることでしょう
僕も可動域が制限されたり慢性的に痛むなど結構不自由しています
とにかくここで大事になってくるのは
競技のことをいったん忘れる
これが少なからず必要だと思っています
ですが中々できることではありません
入院・通院・リハビリ・手術
日常では味わえない時間が続くことでしょう
長期離脱することによる気づき
競技に打ち込んでいないと結構暇な時間があることに気づきます
入院生活になるともうほとんどの時間が暇になります
映画を見る
読書
語学の勉強
なんでもいいです
とにかく今までできなかったことにチャレンジする時間を作りましょう
よく漫画でありがちな入院しているなかでダンベルを持ち込んで筋トレをしたり早く退院させてくれとせがんだり
そこまで極端なことはしなくても唯々暇だからぼーっとしているのでは勿体なしいし自分のやってる競技のことをずっと考えているのも結構もったいないような気がします
自分の今までできなかったことをするって結構楽しいですよ
僕は入院生活中に将棋に出会い今では有段者になってしまいました
特に大学でもまだ本格的にやりたい
社会人になっても続ける
という方は特に新しいことにチャレンジしてほしいです
新しいことにチャレンジするのには時間がいります。大学・社会人でも打ち込んだりしていると結構時間って無いものです
折角時間もできたんだし少しこの生活も楽しんでみよう
と考えることができたら最高だと思います
そんな中でリハビリや自分の中でできることをきちんと積み上げていき新しいことにもチャレンジしていく
そうしてその競技をやりたい!という気持ちを少しずつ充電していき復帰直後のボーナスタイム(今までの競技レベルを急激に取り戻す時間)につなげていけたら最高だと思います
指導者と病院・トレーナーそして選手の中で生まれる三角関係の対処の仕方
これ、本当に厄介ですよね、、、
監督からは早く復帰できないのかとプレッシャーをかけられ
トレーナーや病院の方には止められる
まだ痛い、できないって言われてるけど監督やコーチのプレッシャーが凄い。本当にどうしよう
もう、どうにもできない
復帰しよう
こんな話をよく散見します
そうです。選手という立場からしたらこれはどうにもできません。
監督という絶対的な立場は言ってはいけませんが科学を凌駕しています。監督がカラスは白と言ったらそれは白なんです
ただ、対処の仕方はちゃんとあります
それは、トレーナーなどチームメディカルの方に戦ってもらう
僕たちに戦える武器はありません
唯一戦えるのは知識という大きな武器を持った「メディカル系」の方です
この人たちをしっかりと味方につけ僕たちの代わりに戦ってもらいます
選手と指導者の板挟み。本当にトレーナーの方は大変だと思います
とにかく、そこで必要になってくるのが真っ向コミュニケーションで自分の思っていることをはっきりと伝えること。そして、普段からきちんと信頼関係を構築しておくこと
これが重要です
自分の症状を自分なりにきちんと把握し言語化する。そして自分はどうしたいのかハッキリと示す。
そして、普段のトレーナーに対する態度や振る舞い
これらすべてが大事になってきます
人間としての信頼関係を構築し自分のことをしっかりと把握してどうしたいのかをハッキリと言う
こうすることによって少なくともチームトレーナーの方は指導者と精一杯コミュニケーションを取ってくれるはずです
ただ、これでも無理に復帰させるケースは後を絶ちません。
とにかく、自分の中で最善を尽くしましょう
体験談【高2の時に経験した大怪我】
ここでは、少し僕が経験した怪我について赤裸々に語りたいと思います
高2の夏合宿
自分の中でも順調に進みとても調子が良かったことを記憶しています。そんな中で行われた練習試合(花園優勝経験もある強豪校)を行いました
その試合中、僕はキックオフが飛んできてジャンプして取ろうとしました
そしてとんだその瞬間
タックルが飛んできます
いわゆるアーリータックル(空中やボールを持たない状況で行うタックル)を食らいます
相手は危険なプレーをしたため練習試合ですが一発レッドカードで退場です
空中で食らったため受け身のとりようがありません
そのまま一回転して地面に激突
幸か不幸か腕が先についたため全体重が腕にかかりました
もしも頭から落ちていたことを想像すると…
「なにすんねん!」
と思いながら横を見ると自分の腕が変わり果てた状態になっていました
分かりやすく例えると「知恵の輪」状態です
とにかく直ぐに帯同してくれていたトレーナー(柔道整復師)が整復してくれてまっすぐに伸びていました
これがまさに神業で完治したのはこの迅速な整復のおかげだと先生はおっしゃってくれました
そして、菅平の病院では処置しようがなく地元へ即帰還
腕の名医と言われる人の病院へ行きます
診断結果は
前腕の橈骨・尺骨ともに骨折
肘の両側の靱帯損傷及び断裂
橈骨神経麻痺
肘の脱臼
という散々な結果でした
「どのくらいで復帰できますか?」
と聞いたら
「これでラグビーまたするの?!」
と驚かれてしまいました
それくらい大きなけがだったんですよね
とにかく即手術。一回の手術では治しきれないので三回に分けて行いました。計二か月間の入院生活になりました
その感想はというと
とにかく楽しかったです!!
意外とも思うかもしれません
今までは部活がすべてのような生活だったのが一気に解放されました。入院生活はとにかく基本自由な時間ばかり。
本を読んでも映画を見てもいくらでも時間が余っていきます
とにかく将棋にハマってしまい初段までいっちゃいました(笑)
そんな中で自然とある思いも頭によぎります
「やっぱラグビー好きだなあ」
休んでみるとやっぱり自分はラグビーが好きなんだと気づきます。
自然と入院期間で自分がラグビーが好きだということが再確認されました
そんなこんなで退院しやっと部活にも顔を出せるようにもなりました。ただ、顔を出してもできることはほぼありませんでした。
ただ、入院生活を経てあることに気づきます
自分のことを冷静に客観視できるようになっている
というより客観視せざる負えませんでした
自分がどういう状況にあるのか、どうなっているのかというのを判断することが必要でした。
その結果入院を楽しむという結論に至りました
そんなこんなで帰ってきてからも自分のするべきことが自然と分かるようになっていました。
そしてリハビリを重ね自分のできるトレーニングも最大限にやり、色々な人のご尽力のおかげで当初の予想より早く約11か月でグラウンドに立つことができました。
本当に感謝です
そしてグラウンドに立って実感します
みんなとそんなに差はついていない
とうとう復帰の時
復帰の際は正直言って怖かったです
約一年間ラグビーをしないわけですしやっぱりみんなと差はついているのかなと不安になります
ですが、やってみると全くそんな心配はいりませんでした
全然みんなにもついていけるし全く劣ってることなんかなくむしろ毎日の練習がとても楽しかったです。
周りを気にせず自分にフォーカスし焦らずしっかりと日々の積み上げさえしてれば絶対に差なんかつかない
そこで焦る必要は全くないとはっきりと感じました
これが僕の怪我で得た経験です
まとめ
怪我は辛いもの
それは事実です
ただ、それに苦しめれれるかどうかは自分次第な気がします
いかに怪我と向き合っていけるかはスポーツをやっていくうえでとても重要なことです
自分なりの怪我との向き合い方を作ってみてください
最後まで読んでいただきありがとうございました