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【奈良クラブ通信】興奮と絶望が入り混じった鴻ノ池の夜

GAME REVIEW

  JリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド 2回戦。ホーム・ロートフィールド奈良(ロートF)にJ1サンフレッチェ広島を迎えた奈良クラブは、序盤こそボール保持を試みたものの、相手のサイド攻撃の圧力に苦しみ、徐々に引き気味の展開に。それでもこの日久々の先発となったCB伊勢渉やGK岡田慎司の好プレーもあり、中々ゴールを割らせなかったが、前半終了間際に広島の鋭いサイド攻撃の前に先制を許してしまう。後半も立ち上がりに立て続けに失点する苦しい展開の中、後半28分に関口智也が相手GKへのチャージでレッドカードを受け、10人に。その後は広島の猛攻に屈し、終わってみれば0-6のスコアで敗戦。クラブとして初のルヴァン杯はほろ苦いものとなった。

J1のレベルの高さと収穫

 大方の予想に反して、広島は前節J1リーグ札幌戦からほとんどメンバーを入れ替えず。3月のW杯予選に招集された現役日本代表GK大迫敬介やJ1得点ランク2位のFW大橋祐紀らを先発メンバーに並べた。個々のクオリティの高さに加えて、高い位置を取った両ウイングバックをCBが追い越すなど縦にアグレッシブな戦術は、奈良クラブを大いに苦しめた。出場した選手からも「前に入ってくるスピード感やクロスの精度などはJ3とは違った」「判断が早くて的確」と驚きの声があがった一方、前半はチャンスも作りつつ相手の得点を1点に抑えたこともあり、フリアン監督は「いくつかの時間帯ではディフェンス面においてこれからリーグ戦で役に立つような良い時間帯もありました」と一定の評価を与えた。最終ラインで奮闘しフル出場を果たした伊勢渉「6失点したので喜べない」と前置きしつつ、「夏場に向けて、今リーグ戦に出れていないメンバーの底上げが絶対重要になるので、この試合で得たものを活かしていきたい」と、前を向いた。また攻撃の局面で何度もアイディアを見せたMF桑島良汰「試合結果は別として、怪我もあったのでレベルの高い相手に久しぶりにプレーできて個人的には楽しかった。リーグでも流れを変えるようにやっていきたい」。しっかりとここで得たものをリーグ戦へ還元していきたいところだ。

夜のロートフィールド奈良と一戦の持つ意味

 ロートFにJ1クラブを迎えるのが初めてなら、平日夜にロートFで公式戦が行われるのも史上初のこと。この日、闇夜の中に浮かび上がったスタジアムは、非日常感をいつも以上に感じさせ、舞台装置としての役割を十二分に果たしているように感じた。奈良市出身で幼少の頃からロートFでプレーしていた田村亮介も「広島からもたくさんから人が来てくれて、めちゃくちゃいい雰囲気でした」と声を弾ませた。この日集まった2,818人の観衆は、エンターテインメントとしてのフットボールの魅力を存分に感じることが出来たことだろう。これもまた奈良にJリーグクラブが誕生したおかげだと言える。試合後の関係者の表情からは0-6の敗戦ながら、「無事にナイトゲームを終えられたこと」への安堵感や、「現役日本代表が奈良で公式戦を行った」という高揚感が感じ取れた。スコア以上にこの試合が、奈良のサッカー界に与えたものは大きいといえるだろう。

大事なのは続けること

 この一戦を「単なる記念すべき一戦」と思い出にするのは簡単だが、一方でこういったゲームを「日常」にしていく事が重要だと感じる。Jの舞台にいる限り、レベルの高いクラブ、注目度の高い選手、熱心なサポーターを奈良に迎える機会は今後もやってくるだろう。そこで打ちのめされたり、カルチャーショックを受けたりといった経験を重ねながら、ピッチの内外でクラブも、選手も、サポーターも成長していくことが、クラブを大きくしていく唯一の手段なのだと思う。Jリーグ創設当初からのチーム、オリジナル10の1つであるサンフレッチェ広島は31年の年月を積み上げてきた。一方、奈良にJの産声があがったのは昨年の事。大事なのはここで辞めずに続けること。この敗戦を糧と捉えて前に進んでいくクラブであって欲しいと願う。

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画像提供:株式会社 奈良クラブ

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