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男子ロコ・ソラーレ、ミラノコルティナ五輪消滅〜秋決戦の代表候補はS C軽井沢クラブとコンサドーレに

 北海道北見市常呂町を拠点とするカーリングのロコ・ソラーレの男子チーム、ロコ・ドラーゴは2月9日、カーリングの日本選手権の決勝に臨んだが接戦の末、SC軽沢クラブに敗れ、出場を目指していた2026年2月にイタリアで開催されるミラノ・コルティナダンぺツォ五輪への道が途絶えた。

 ※ロコ・ドラーゴの日本選手権における大会時のチーム名は「LOCOSOLARE(ロコ・ソラーレ)」

王者コンサドーレを準決勝で撃破

 男子ロコ・ソラーレ(以下ロコ)は決勝前日の2月8日、前年優勝で日本代表として2024年の世界選手権出場、同年のPCCCで銀メダルを獲得したコンサドーレ相手に準決勝を競り勝ち五輪代表候補生き残りに望みを繋いだ。

負ければ五輪の道が絶たれる決勝

 ともに負ければ五輪代表の可能性が消えるS C軽井沢クラブ(以下SC)との決勝は前半はロコのペースだった。22歳のスキップ前田拓海(たくみ)がゲームを支配し、サードの中原亜星はスーパーショットを次々に繰り出した。

第7エンド2得点で並んだSC軽井沢クが第9エンドにスチール

 後半に入るとSCが追い上げる。7エンド(E)に同点、同点のまま迎えた9Eは先攻SCのセカンド山本遵のヒットロールがセンターガードの裏、ナンバーワンに完璧に収まるとセンターを巡る狭いエリアでのワン、ツーの奪い合いとなった。

ロコ前田、最終エンドのプランは後攻で複数点をとる

 9Eの最後の石を持っていたロコだったが前田(た)はあえてどの石にも触れず相手に点数を与えた。1点を追う形でも最終エンド後攻で2点取って勝ち、悪くても1点取れば同点のエキストラエンド(延長)というプランだった。
  終盤の粘り強さを増しているSCにとっては相手複数点の形を阻止さえすればもつれても後攻での延長、延長にいくまでもなくケリをつけることさえできるが果たして先攻でそれができるのか。

一度はガッツポーズを見せた中原

 命運を分ける最終エンドは強いワン、ツーをとりにいくセンターでの攻防となる。ハウス中心にもっとも近いナンバーワンは前田拓紀(ひろき)のヒットロールでロコが獲得したもののSCはツースリーを固め複数点は難しい形をつくる。
 複数点が欲しいロコには苦しい状況だったが中原が中心から4番目にあった自分たちのストーンをソフトウエイトで中心へと押し込んだ。幾度もスーパーショットを繰り出してきた中原、前田(た)のラインコールと前田(ひ)と上川憂竜のスイープで繊細で絶妙はショットが決まったかに見えた。
 上川はブラシをつき上げ、中原も一度は拳を強く握りしめた。しかし、会場に大きく映し出されたハウスの画面を確かめるとその拳を解いた。
 両チーム2投ずつを残して中心にもっとも近いのはロコの黄色。2番目は中原が押し込んだ黄色か、一緒に少し動いたS Cの赤なのか微妙な状態で最終局面を迎えることになった。

決め切るのがスキップ

 ロコのスキップ前田(た)が最終エンドで投じた2投は悔しさが残るものとなってしまった。
 ナンバーツーは相手赤と判断し、ワン・ツーを確かなものにすべく投じた1投目は早く曲がり始め狙ったところに行かなかったばかりか、自分たちのナンバーワンを弾き出されかねない危険に晒してしまった。
 今季途中からスキップの重責をサードの山口剛史に託し、狙ったショットを決める〝精密マシーン〟に徹することとなった栁澤李空のラストショットはハウス前に並ぶストーンを順に飛ばしてロコのナンバーワンを非情にも打ち出した。
 フォーフット(ハウス内の小さい赤い円)の中には黄色1つ赤3つ。ロコの選手たちは点になるのは赤、最後のストーンで最低でもナンバーワンを作らなければ試合が終わると覚悟を決めた。
 逆転か、延長か、敗退か、前田(た)の投じたラストストーンはハウス内の相手ストーンは減らしたが、ナンバーワンに止まることも、微妙だった黄色と赤の2つの石を動かすこともできなかった。
 2つの石はどちらが近いかメジャー計測となったが前田(た)が覚悟していた通りの結果だった。 

前田拓海の誓い

 「あそこで決め切るのが日本代表のスキップ、こらえきれなかった。日本代表、オリンピックへの道が途絶えたのは仲間にも多くのファンにも申し訳ない。勝ち切りたかったというのが率直な思い」。

 前田拓海は日本代表足りえなかったと自らを責め「3年後、4年後、決められるスキップになる。今回のような苦い思いをしないように強くなっていきたい」と誓った。

負けから強くなってきた常呂っ子

 ロコ・ソラーレの代表で今回コーチとしてもアリーナでその姿を見守った本橋麻里は「この場に立てていること、いい試合ができたこと、そして悔しさも、自分たちで得たもの。このあとに絶対に意味がある。羨ましいほど成長している。自分たちの成長も信じて」とコメントした。

 そして「勝ちもあれば負けるときもある。(ソラーレもステラもドラーゴも)負けの後にどう立ち上がっていくかをやっていきたい」と多くの負けの中から成長してきた常呂っ子(ロコ)がもっともっと強くなっていくことに願いを込めた。

世界に挑む日本男子カーリング界注目の存在であり続ける

 男子ロコ・ソラーレ(ドラーゴ)のミラノ・コルティナ五輪への挑戦は幕切れとなったが、死闘を終えた山口剛史は苦しい戦いだったと振り返り、今後とも名勝負を演じ続ける、切磋琢磨する相手となるだろと明言する。

 「前田君の作戦もすごく良かったし、ショットの決め方というか(コンサドーレに競り勝った)きのうの準決勝から乗っているなという感じもあった。これからまたずっと戦う相手だと思う。(栁澤)李空とマエタク(前田拓海)の勝負というのはこれから何年も続くのではないかと思っている」。

 栁澤も今後も続くであろう好敵手との対戦を「楽しみ」と同意した。

日本カーリング選手権男子決勝スコア・戦況

日本カーリング選手権大会 横浜2025
【男子決勝 2月9日 横浜BUNTAI】
SC軽井沢ク★10101 02011 | 7
ロコソラーレ 02020 10000 | 5

2次リーグの成績からSC軽井沢クラブがストーンカラー赤と有利な後攻を選んでスタート。ロコ・ソラーレは相手後攻時を1点で抑え、自分たちの後攻時に先に複数得点を重ねた。サードの中原亜星のショットも冴え、後半に入っても偶数エンドで有利な後攻を取り続けた。スロースターターのSC軽井沢クラブはリードされても「悪くない」と声を掛け合い第7エンド山口剛史の狭いパスを通したドローも効き後半に入って先に複数得点し粘り強く少しずつ流れを引き寄せる。先攻でのセンターの奪い合い、追い詰められた状況での栁澤の精度の高いショットが2年ぶりの日本選手権優勝と世界選手権代表、そして今秋のオリンピック代表候補決定戦出場権を手繰り寄せた。

男子ロコ・ソラーレ2025日本選手権のメンバー

【ロコ・ソラーレのメンバー】
前田 拓海 (まえだ たくみ) フォース/スキップ
中原 亜星 (なかはら あせい) サード
前田 拓紀 (まえだ たくみ)  セカンド/バイス
上川 憂竜 (かみかわ うりゅう) リード
中原 太亜 (なかはら とあ) フィフス
コーチ 小野寺 亮二 本橋 麻里

※JCA日本カーリング協会および傘下の主催大会では大会でのチーム名は法人名協会名など登録団体名となる。

男子ロコ・ソラーレ概略

【男子ロコ・ソラーレMEMO】
常呂ジュニアとして出場した2021年2月の日本選手権で準優勝。
2023年に女子のロコ・ソラーレと同じ運営母体に入った。
チーム名は「ロコ・ドラーゴ」。「常呂っ子」と地方からの挑戦の思いを込めた「ローカル」を組み合わせた冠称〝ロコ〟に常呂ジュニア時代からのチーム名「ドラゴン」をイタリア語風にアレンジした〝ドラーゴ〟として組みわせた。
2024年の日本選手権はリーグ最終戦まで無敗の快進撃、無敗対決となった2次リーグ最終戦のコンサドーレ戦で惜敗し、決勝トーナメントは準決勝にまわり、2次リーグでは勝利したSC軽井沢クラブとの対戦となった準決勝で逆転を喫し3位だった。

男子ロコ・ソラーレ25日本選手権対戦スコア

【2025年大会対戦結果】
1次リーグ Cブロック2位
2月3日(月)18:00
○6-5 vs 北海道大学
2月4日(火)13:30
●4-6 vs SC軽井沢クラブ
2月5日(水) 9:00 & 18:00
●6-7 vs チームTANI
○4-3 vs TM軽井沢
2次リーグ 3位
2月6日(木)13:30
●5-6 vs コンサドーレ
2月7日(金)9:00&18:00
○7-3 vs 長野CA
○10-6 vs KiT CURLING CLUB(キットカーリングクラブ)
2月8日(土) 13:30 準決勝
○5-4 vs コンサドーレ
2月9日(日) 10:00 決勝
●5-7 vs SC軽井沢クラブ

2025年秋の男子代表決定戦は2チーム

 日本選手権が終了し、ミラノ・コルティナ五輪代表に推薦する要件を満たすチームが複数となったため、2025年9月までに1チームに絞る決定戦を実施することになった。

 男子は2024年の日本選手権優勝、世界ランキング日本勢最上位などのコンサドーレと今回(2025年)の日本選手権優勝のSC軽井沢クラブの2チームが対戦する。

SC軽井沢クラブの栁澤李空と山口剛史 写真:(C)JCA/H.IDE

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