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ミラノ・コルティナ出場決めたスマイルジャパン17得点3戦全勝〜アイスホッケー女子五輪最終予選G組

【タイトル画像】26年冬季オリンピック出場権をつかんだ世界最終予選日本代表
写真:JIHF photo by 永山礼二


2026冬季五輪日本勢1番乗り・スマイルジャパン5度目の五輪へ

 アイスホッケー女子日本代表、スマイルジャパンはオリンピック世界最終予選G組(2月6日〜9日、北海道苫小牧市)を3戦全勝で制し2026年にイタリアのミラノ・コルティナダンぺツォで行われる冬季五輪の出場権を獲得した。ミラノ・コルティナ五輪の日本勢出場権獲得第1号。アイスホッケーで日本女子がオリンピックに出場するのは2014年のソチから4大会連続、開催国枠で出場した1998年の長野を合わせて通算5回目となる。

北京後メンバーとの融合〜爆発的得点力と鉄壁の守護神後継者たち

 日本は今回の世界最終予選G組3試合で17得点。ソチに当時高校生で出場した浮田留衣、浮田と同じ1996年生まれで平昌、北京の2大会代表の前田涼風、新エースとして北京で代表入りし海外リーグでプレーに磨きをかける志賀紅音らに加え、22歳の輪島夢叶が5ゴール、開幕戦先制ゴール含む2得点で日本に勢をもたらした20歳の伊藤真琴ら北京に出場していなかったメンバーも躍動した。

 3試合180分間に許した枠内シュートは34で失点は2。自力初出場のときから定評のあったスマイルジャンパンのディフェンスは相手に攻撃の形をつくらせなかった。初戦フランス、2試合目ポーランドといずれも60分間で決着をつけ、2試合目で五輪出場権を決めたこともあり2試合1失点(セーブ率96.55%)の増原海夕に代え中国戦のゴールキーパーに川口莉子を起用できたことも五輪プレー経験ゼロの新ゴーリー陣にとっても有意義だったのではないか。

 課題を挙げるとすればスペシャルセット(パワープレーでの無得点とペナルティキリングでの失点)くらい。

世界はもっと強い!スマイルジャパンが挑む高く分厚い壁

 ただしスマイルジャパンが五輪で挑む相手は今回より遥かに強い(ロシアの出場可否等により不確定要素もあるとはいえ世界ランキングで概ね日本を上回る)。
 世界ランク1位はカナダ、2位アメリカ、3位フィンランド、4位チェコ、5位スイス。
 五輪1次リーグで日本はどの組でプレーできるのか。前回以上、メダルを目指すとなると世界ランク4位以上のチームを倒さなければならないだろう。今回のように圧倒する展開に持ち込めるとは限らない。ベンチ入り選手数の制限など五輪独特のルールにも対応しなければならない。まずは4月9日から20日までチェコで行われる女子の世界選手権が試金石となる。

世界最終予選G組の日本3試合のスコア

 2月6日(木)
 ○日本 7ー1 フランス●
 02:03 G伊藤真琴A志賀紅A志賀葵
 07:30 G輪島夢叶A小池
 22:24 G小山玲弥
 28:26 G伊藤真琴A志賀紅A志賀葵
 42:49 G野呂莉里
 52:53 G関夏菜美A人里A浮田
 2月8日(土)
 ○日本 6−0 ポーランド●
 05:54 G前田涼風A三浦
 11:23 G志賀紅音A伊藤
 14:12 G輪島夢叶A前田A三浦
 15:32 G浮田留衣A志賀紅A志賀葵
 15:43 G輪島夢叶A三浦
 18:26 G浮田留衣
 ※この日の第1試合で初戦延長戦勝ちの中国にフランスが勝利、60分勝ちを重ねた日本は中国との対戦を待たずにG組トップ、五輪出場権が決まった。
 2月9日(日)
 ○日本 4ー1 中国●
 03:26 G輪島夢叶A前田A三浦
 05:58 G浮田留衣A伊藤
 39:18 G志賀紅音A志賀葵A伊藤
 56:22 G細山田茜A志賀紅

G組順位表

【G組 順位・勝敗・勝点】
1位 日  本 3勝0敗 9 五輪出場権獲得
2位 フランス 2勝1敗 6
3位 中  国 1勝2敗 2
4位 ポーランド0勝3敗 1

スマイルジャパンのラインナップ・スタッツ

【第1セット】
 3 D 志賀 葵 SHIGA Aoi (25) TOYOTAシグナス 0G4A4P +6 SOG10
 6 D 佐藤 虹羽 SATO Kohane (18) Daishin 000 +7 SOG6
11 F 志賀 紅音  SHIGA Akane (23) Luleå HF(SWE) 2G4A6P +10 SOG10
15 F 浮田 留衣 UKITA Rui (28) Daishin 3G1A4P +9 SOG20
19 F 伊藤 真琴 ITO Makoto (20) TOYOTAシグナス 2G3A5P +9 SOG12
 【第2セット】
 2 D 小池 詩織 KOIKE Shiori +C (31) 道路建設ペリグリン 0G1A1P +6 SOG7
 8 D 細山田 茜 HOSOYAMADA Akane +A (32) 道路建設ペリグリン 1G0A1P +7 SOG6
18 F 前田 涼風 MAEDA Suzuka (28) 道路建設ペリグリン 1G2A3P +5 SOG11
24 F 三浦 芽依 MIURA Mei (26) TOYOTAシグナス 0G4A4P +5 SOG6
61 F 輪島 夢叶 WAJIMA Yumeka (22) 道路建設ペリグリン 5G0A5P +5 SOG14
【第3セット】
 4 D 人里 亜矢可 HITOSATO Ayaka +A (30) Linköping HC(SWE) 0G1A1P +3 SOG10
 7 D 関 夏菜美 SEKI Kanami (24) SEIBUプリンセスラビッツ 1G0A1P +3 SOG8
27 F 小山 玲弥 KOYAMA Remi (24) SEIBUプリンセスラビッツ 1G0A1P +1 SOG7
40 F 野呂 里桜 NORO Rio (20) Daishin 000 +3  SOG5
41 F 野呂 莉里 NORO Riri (20) Daishin 1G0A1P +2 SOG6
【第4セット】
 5 D 山下 栞 YAMASHITA Shiori (22) SEIBUプリンセスラビッツ
10 F 山下 光 YAMASHITA Hikaru (24) SEIBUプリンセスラビッツ SOG3
16 F 永野元 佳乃 ENOMOTO Yoshino (26) SEIBUプリンセスラビッツ
17 F 黒須 若菜 KUROSU Wakana (24) 道路建設ペリグリン SOG2
26 F 多田 藍 TADA Ai (18) Daishin SOG1
【ゴールキーパー】
20 GK 増原 海夕 MASUHARA Miyuu (BP) (23) 道路建設ペリグリン 96.55%(28/29)
31 GK 川口 莉子 KAWAGUCHI Riko (20) Daishin 80.00% (4/5)
【NOT DRESSED】
30 GK 黒丸 春香 KUROMARU Haruka (17) CrystalBlades
【コンディション不良直前不参加】
21 長岡 真鈴 NAGAOKA Marin (22) SEIBUプリンセスラビッツ

アイスホッケー女子日本代表の足跡

 開催国枠で出場した1998年の長野。未勝利。
 ソルトレーク、トリノ、バンクーバーと最後の最後で出場権を逃しつづけたが、2013年に新たな歴史の扉をこじ開ける。
 スロバキアで行われた五輪最終予選。4年前の悔しさを知るメンバーが中心となり自力出場を目指した。初戦は0−3の劣勢での始まりだったが若きキャプテン大澤ちほのロングシュートがノルウェーゴールに吸い込まれるなどして一気に流れが変わり逆転勝利。3連勝して自力で2014年冬季五輪の出場権をつかむ。ぺこりと頭を下げるお辞儀パフォーマンスとスマイルジャパンという愛称が生まれたがソチでは何もできなかったという悔しさばかりが残った。
 次こそはと誓ったはずだったが浮沈を繰り返し笑顔を失いかけたこともあった。平昌へ向けては世界ランクでの予選免除とはならず五輪前年の2017年2月、ホーム、日本の北海道苫小牧で最終予選を戦い勝ち抜いてみせた。スタンドにはスマイルジャパンを夢見る少女たちの姿もあった。久保英恵の神がかりな活躍は前年、プロ野球広島カープの優勝で流行語となった〝神ってる〟そのものだった。そして、市民たちは五輪期間中、その苫小牧のスタジアムからも画面越しに声援を送り、五輪初勝利も見つめた。
 それからスマイルジャパンは世界の険しい頂きに着実に近づいていく。世界選手権のディビジョン、世界ランクを上げ最終予選なしに五輪出場権を獲得した。五輪出場決定の知らせは世界中がコロナの不安に包まれる中で届いた。2022年の北京はコロナ禍中の異例の五輪だった。日本は初めて1次リーグを突破して準々決勝に進出する。スタジアムに行くことも、みなで集まって声援を送ることもできなかったが、スマイルジャパンの快挙はふるさとにも確かに届けられた。
 スマイルジャパンの主力選手の多くが代表活動に区切りをつけた。
 ニューバージョンのスマイルジャンパンはどんな景色を見せてくれるのだろうか。

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