PCCCが開幕〜カーリング・チームジャパン2026冬季五輪への試金石
カーリングのパンコンチネンタル選手権(PCCC)が10月27日、カナダのラクームで開幕し、日本代表は男子がチャイニーズタイペイ戦を9対1、女子はニュージーランドに7対4で勝ち、男女とも初戦勝利の白星発進、男子は同日に行われたオーストラリア戦も7対4で制し2連勝スタートとなった。
ミッション〝世界選手権出場権奪取〟PCCCここに注目
26日(日本時間)にオンラインで行われた会見で男女の日本代表は「世界選手権の出場権をしっかり獲得、チーム力を発揮できるように準備してきたので優勝を目指す」(阿部晋也)、「チームとして最大限やれることをやって1つ1つ目の前の課題をクリアして世界選手権出場の権利を獲得したい」(上野美優)と〝日本の世界選手権出場権獲得〟を大命題として意気込みを語っている。
PCCCに臨んでいる日本代表は昨季、日本選手権で優勝した男子のコンサドーレ、女子は同大会を制したS C軽井沢クラブに小野寺佳歩(フォルティウス)がリザーブとして加わった。
スポーツ・ウォッチャーは男子の佐藤剣仁(はやと)と女子の小野寺佳歩に注目。今春まで札幌国際大学でスキップをつとめていた〝カナダ出身〟の佐藤は今季コンサドーレに加入、代表としても本格的にデビューする。女子代表はS C軽井沢クラブが4人体制になったこともあり、小野寺に〝助っ人〟として白羽の矢が立った。
〝本場〟カナダ出身の佐藤ハヤトにとっては〝ホーム〟での代表デビュー
佐藤はカーリングの盛んなカナダ・ブリティッシュコロンビア州の出身、進学で来日、加入した札幌国際大学氷上部では2020年の日本ジュニア優勝を始めジュニアやワールドユニバーシティゲームズ路線で日本を牽引。シニア路線に挑戦した2022年の日本選手権では準優勝を果たしている。主にサード・スキップとしてカナダで育まれた技と頭脳でフォース青木豪の豪快なテーク、繊細なドローといったラストロックを導き出した。コロナ禍で存在を知らしめる機会は少なかったが、青木不在時にフォースとしても奮闘する姿も含めてカーリングファンの心をとらえてきた。
コンサドーレ加入後は学業との関係などで不在となることのあったメンバーに代わって「空いているスポットにまずは入れてみようという感じで」リードからスタート。チームもポジションもガラリと変わった中でも質の高いセットアップを見せるなど新生コンサドーレを更に高いレベルに飛躍させる予感をもたらしている。10年ぶりくらいにやるというスイープは〝大変です〟と笑いながらも「オフシーズンに死に物狂いでトレーニングした。まだ足りない部分があるがこれから頑張っていきたい」と慣れないフロントエンドにも「新しい刺激をもらっている」と意欲的だ。
日本代表のスキップでコンサドーレの阿部晋也は佐藤について「本格的な代表戦は初めてかもしれないが心配していない。十分やってくれると思っている」と太鼓判を押す。PCCCに向け1週ほど前にポジション変更。ファイブロックやノーティックなどのルール導入でますます重要度が増すセカンドという新たなポジションで代表デビューした。
PCCCを前に佐藤は「純粋に楽しみにしている。このチームで頑張ってきたことを単純にぶつけていきたい。トップ選手から学ぶことも多いと思う。そこも吸収しながら、日本選手権や(日本選手権優勝を経て)来年の世界選手権出場に向けて学んでいきたい」と表情を引き締め、五輪をも見据えたチャンピオンシップロードに挑む。
▼男子日本代表集合写真(C)JCA
▼PCCC男子日本代表(ポジション/所属チーム)
清水徹郎(フォース/コンサドーレ)
阿部晋也(サード・スキップ/コンサドーレ)
大内遥斗(セカンド/コンサドーレ)
佐藤剣仁(リード/コンサドーレ)
敦賀爽太(リザーブ/コンサドーレ)
※画像の並び順、左から
※ポジションはJCA代表リストによる。試合ごとに変わる可能性あり。また大会のチーム紹介にはオルタネート敦賀、リード大内、セカンド佐藤で紹介されている。
▼女子日本代表集合写真(C)JCA
▼PCCC女子日本代表(ポジション/所属チーム)
上野 美優(フォース・スキップ/S C軽井沢クラブ)
金井 亜翠香(サード/S C軽井沢クラブ)
西室 淳子(セカンド/S C軽井沢クラブ)
上野 結衣(リード/S C軽井沢クラブ)
小野寺 佳歩(リザーブ/フォルティウス)
※ポジションはJCA代表資料による。出場選手は試合ごとに変わる可能性がある。
PCCCでは金井がリード、サード上野結衣、スキップ上野美優と上野姉妹のバックエンド体制に変更して臨んでいる(写真の並び通り)。
サード(Third)、フォース(Forth)、その次は?それは第5の選手
控え選手、補欠選手をなんと呼ぶか、4人制のカーリングでフィフスFifth(5番目,5th)と表現することがあるが、競技会などでは補欠、また補欠を意味する英語表現のリザーブreserve、あるいはオルタネートalternate(代替員)とも。ナイトプラクティス(夜間練習)でのシートや石のチェック、試合中の他のシートを含めた情報収集など氷上の選手のサポートはもちろん、選手に不測の事態が起きたときにカバーできるユーティリティプレーヤーとしてのスキルなど幅広く、しかも深い、様々な要素が求められる。もう一人のコーチだったり、精神的な支えだったり、チームによっても役割は変わってくる。その上で今回、日本代表には小野寺佳歩がメンバーに加わった。
小野寺佳歩の歩んできた道
小野寺佳歩のキャリアを辿ると頼れるフィフス像が浮かび上がる。
代表をかけた戦いのデビューは2009年11月。当時高校3年だった小野寺はバンクーバー五輪代表決定戦に常呂高校のフィフスとして臨み、試合のアイスにも乗った。
因みに…S C軽井沢クラブのセカンドでもある西室淳子は当時チーム長野に所属していて、この時、対戦している。
高校卒業後は愛知県の中京大学に進学、一時カーリングと離れていたが2011年の北海道銀行フォルティウス誕生時にはオリジナルメンバーで陸上競技との二刀流となる(陸上は七種競技だったので二刀流ではなく八刀流とも)。パワフルスイープとハイウエイトのショットで北海道銀行のセカンドとして成長。2013年秋の日本代表決定戦、同年の五輪世界最終予選を勝ち抜きソチ五輪代表となった。
因みに…ソチ五輪では大会期間中に復帰は遂げるが不運にもインフルエンザに罹患しフィフスの力を借りることになった。
メンバーやスポンサーが変遷するなかで小野寺自身も進化、成長を続け2022年の北京五輪に向けては2021年の日本選手権優勝、同年の北京五輪最終予選代表決定戦など日本カーリング史に残る激闘を演じた。
因みに…北海道銀行としての最後の優勝はPCCCに再編成される前のパシフィックアジア・カーリング選手権(PACC)だった。
現在、フォルティウスのサードとして確固たる地位を築いている小野寺だが2024年は〝投げて掃いて〟さらに4人制とは異質な戦術戦略が求められるミックスダブルスでも日本一へあと一歩に迫りカーリングスキルの高さを再認識させた。今、日本女子カーリング界で最も多様で豊富な経験と能力を持ち合わせている選手を小野寺以外で探すのは難しい。
S C軽井沢クラブも新しい世界挑戦の形を求めて戦いを始めている中で、小野寺の試合への投入はないかもしれないが5thに小野寺が構えることの安心感、代表を終え自チームに戻ってからの競い合いも含め、チームジャパン全体の力を引き上げる効果は大いに期待できる。
■冬季五輪への流れ・カーリング抑えておきたいイベント
◎2024年10月27日〜
PCCC2024:北米含むアジア・オセアニア・アメリカ大陸、環太平洋強豪チームが激突→世界選手権の出場権がかかる。
◎2025年2月2日〜
日本選手権→2025年2月以降の日本代表及び2026五輪代表候補チームが男女各3、または2、場合によっては1つに絞られる。男子のコンサドーレ、女子のS C軽井沢クラブが日本選手権を連覇した場合、五輪代表候補はその1チームに確定する。
※五輪代表は日本が出場枠を獲得した上、日本オリンピック委員会(JOC)に選手団として承認されて確定するが、(五輪の出場資格獲得大会を含むオリンピックにチャレンジする)事実上の日本代表は最短この時点で決まる。
◎2025年3月&4月
世界選手権→オリンピック出場枠10のうち8つの国・地域(NOC)が決まる。8の内訳は開催地として五輪出場が確定しているイタリアと世界選手権の順位を点数化したランキング上位。世界選手権の順位点は2024年と25年の2大会分の合計、スコットランドの点はイギリスとみなす。順位別ポイントは1から13位まで順に15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。2024年世界選手権終了時の日本のポイントは男女とも3点。
◎2025年秋
オリンピック日本代表候補決定戦:男子のコンサドーレ、女子のS C軽井沢クラブが25年2月の日本選手権で連覇しなかった場合、日本選手権の24年優勝チーム、25年優勝チーム、それに世界ランキング国内最上位で日本選手権3位内に入ったチームで(予選を含む)五輪に向かう1チームを決定する。
◎2025年秋
OQE予選:25年の世界選手権を終え日本の五輪出場資格ランキングが14位より下だった場合は残されたオリンピック出場2枠を決める大会への出場資格を得るため〝予選の予選〟に出場することになる。※24年の世界選手権で3得点しているのでこちらに回ることはまずない。
◎2025年12月
OQE(五輪予選大会):オリンピック出場枠残された2を決める〝世界最終予選〟。25年の世界選手権終了時で五輪出場資格を得られなかった場合、2026冬季五輪出場権獲得最後のチャンスとなる。
◎2026年2月 イタリアのミラノ・コルティナダンペッツォ五輪
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