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〝完璧な準備〟と〝悔いなきプレーに集中〟チャッスー(マツタニ)が五輪代表戦線ど真ん中に滑り込む〜松村谷田組カーリングMD日本選手権2年ぶり3度目の優勝

 カーリングのミックスダブルス(MD、男女ペアによる混合ダブルス)日本初五輪へ大本命の2人が代表候補生き残りラストチャンスをモノにした。五輪日本代表候補最後の3組目に滑り込んだのは2023年世界選手権銀メダルの松村千秋・谷田康真のペア。カーリングのプレーになぞらえるならば、いくつものガードストーンがたちはだかる狭いパス(ルート)をギリギリで通し、しかもハウスのど真ん中、堂々のナンバーワンにぴたりと決めてみせた。

 第18回日本ミックスダブルス(MD)カーリング選手権は12月8日、北海道稚内市で最終日が行われ2次リーグ3位だった松村谷田組(松村千秋、谷田康真)が1回戦で同2位の北澤臼井組(北澤育恵、臼井槙吾)を第7エンドのパワープレーで4得点し8対5の逆転勝ちで1位への挑戦権をつかむと、決勝では第1エンドの1投目から精度の高いショットと完璧なストーン配置で、無敗で予選リーグ1位通過を果たした小穴青木組(小穴桃里、青木豪)にまったく形を作らせず、不利な先攻でも次々と得点、9対2と押さえ込み、2年ぶり3度目の日本一に輝いた。

 優勝ペアは日本の五輪出場枠がかかる来年4月の世界MD選手権(4月26日〜5月3日、カナダ)代表となるほか、来年9月に予定されている五輪日本代表候補※決定戦への出場資格も得た。五輪出場を目指してMDに専念、世界選手権ではメダルを獲得している松村谷田組だったが、この大会まで五輪代表候補決定戦出場資格はなく、五輪への道は今大会の優勝しかなかった。

 谷田は五輪の道が続くか途絶えるかは結果でしかないと捉え、先のことは「正直まったく考えていなかった」という。目の前の試合、目の前のプレーに集中。「海外遠征、国内合宿、辛いトレーニングも、いろいろなことをやってきた。全てを発揮して、この舞台で(僕らのプレーを)見せたい」と想定通りでも想定と違った状況に陥っても、難しくとも最善の方法を選び、最高のプレーをやり切ることにフォーカスしつづけた。

 2次リーグに移った初日(12月6日)、松村谷田組は北澤臼井組、小穴青木組に立て続けに敗れる。連敗後、試合を振り返った松村は言葉を詰まらせる。悔し涙が流れた。それでも「自分を信じて、チームを、そしてスタッフを信じて」最後まで戦い抜いた。決勝トーナメントでは2次リーグで惜敗した相手を撃破。優勝に辿りつくと「いつも悔し泣きばかりだが、きょうはうれしくて泣きそう」とインタビューに答えた。

 「ちあき(チャッキー)」と「やす」を組み合わせた愛称「チャッスー」の松谷ペアは来年4月、カナダでのミックスダブル世界選手権に23年大会の忘れ物(金メダル)をとりにいく。優勝すれば五輪出場ランキング27ポイントを獲得し、前回上野・山口組で獲得した12ポイントと合わせ、ミックスダブルスでの日本の五輪出場を確実なものとすることになるはずだ。

 ※【五輪代表候補】五輪代表は五輪日本選手団に承認されて正式に決まる。代表選手は各国内競技団体が国際競技団体の出場規定に従い設けた選考基準で選手を選考し、日本オリンピック委員会(JOC)に推薦、JOC承認後初めて日本選手団入りとなるため、競技団体での選考・選出段階では選手団認証前の代表〝候補〟という表現としている。

 【五輪代表候補決定戦出場は3チーム】
上野美優・山口剛史(S C軽井沢クラブ):第17回MD日本選手権優勝&2024世界選手権出場
小穴桃里・青木豪:(第17回、第18回いずれかの日本選手権3位以内の)WCFチーム別国際ランキング日本勢最上位
松村千秋・谷田康真:第18回MD日本選手権優勝

谷田康真と松村千秋(第18回大会優勝) 写真:(C)JCA/H.IDE
上野美優と山口剛史(前回大会優勝) 写真:(C)JCA/H.IDE
小穴桃里と青木豪(世界ランク日本勢最上位・前回3位今大会2位) 写真:(C)JCA/H.IDE

【上野・山口】
 今回は準備不足、ミックスダブルス仕様へのシフトチェンジ、アジャストが遅れたと指摘されても仕方ない。とはいえ来年9月の決定戦の時にはどのような状況になっているかわからない。このまま引き下がるとは思えない。日本選手権初優勝からMDとの日本選手権二冠、女子世界選手権、ミックスダブルス世界選手権、PCCC日本代表と怒涛の2024を過ごした上野美優の進化と平昌を区切りに引退も考えていた山口の思いを覆した五輪の魅力とパッション。4人制もMDも注目は続く。

【小穴・青木】
 「相手がすごく良いパフォーマンスを出していた。私たちも良いパフォーマンスで良い試合にできたらよかったが、それができなかった」(小穴桃里)。
 五輪専念でLS北見(現ロコ・ソラーレ)が参戦しなかった2018年日本選手権優勝、同年の世界選手権やワールドカップにも出場など豊富なキャリアを積んできた小穴。富士急1期生、結婚、出産を経てミックスダブルスに軸足をおき、世界ランク日本最上位と躍進を続ける。金メダルを目指し、気持ちをアゲる髪色に染めている。大学院生の青木の専攻は〝スポーツ心理学〟、「決勝の独特の雰囲気にやられた」と力を発揮できなかったことに触れ「勉強をし直そうかなと思う」とメンタル面の課題をあげた。MD五輪チャレンジは2017年の平昌前から、MD専念こそ今年からだが、五輪とMDへの思い入れは負けていない。

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