![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73259545/rectangle_large_type_2_67d2386d99cd7e515c430c91e159f2b0.png?width=1200)
【Doctor Tのスポーツ医学】「筋肉痛」の豆知識
こんにちは、Doctor Tです。少しずつ暖かくなってきました。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。
私は晴れた日とても外に出たくなります。デスクワークもできれば公園のベンチに座って行いたいくらいです。ロンドンでは、多くの学生が公園の芝生に座ったり寝ころびながら本を読んだり、パソコンで作業したりしていました。
さて、今回は「筋肉痛」について話したいと思います。今回の記事はClinical Sports Medicineという本を参考にしています。
Brukner P et al. Brukner & Khan's clinical sports medicine. 3rd ed. Vol. 1. Chennai, India: McGraw-Hill Education (India) Private Ltd.; 2018.
日本語の「筋肉痛」
「筋肉痛」と聞くと、ほとんどの人が「運動したあとになる筋肉の痛み」を思い浮かべるのではないでしょうか?「肉離れで筋肉痛があります」と言って来院する患者さんには会ったことがありません。
英語ではDelayed Onset Muscle Soreness (DOMS)
外国の人に「筋肉痛」と言いたい時は、muscle painよりDOMS(ドゥームス)を使いましょう!Muscle painだと運動後ではない痛みも含みます。
こちらのwebsiteによるとsorenessは「炎症や傷、怪我、または疲れからくる痛み」を意味します。painはもっと広い意味での痛みなんですね。スポーツ医学では、日常より"soreness"という言葉を耳にすることが多い気がします。
DOMS(筋肉痛)とは
DOMSとは「慣れない、強度の高い運動をした後(24−48時間が多い)に感じる筋肉の痛み」のことです。メカニズムは明らかになっていません。筋肉の繊維に小さなダメージが加わって炎症が起きていると考えられています。それによって痛み物質や温度変化などの刺激が筋細胞の外側にある神経終末で痛みを感じると言われています。
どんな運動で特に痛くなるのか
もちろん負荷が大きいほど痛みは強くなるでしょう。特にeccentric contraction(筋肉が縮んでいるのに外力によって引き伸ばされる運動:今後の回で説明予定)も痛みが強くなる要因のようです。スキーや下り坂を走るときに膝を常に曲げていて、時々少し伸ばされる方向に引っ張られる感じです。
症状とその時間経過
基本的にself-limitingといって自然に治ります。これはみなさんも経験されていると思うのでご存知ですね。治るまでの時間や痛みの強さは様々です。症状がある時(特に運動後24−48時間)は筋力もパワーも柔軟性も落ちているのでケガにも注意しましょう。また、血液検査でCKという項目の数値が上昇します。アスリートの人はこのタイミングでの採血の時は解釈に注意が必要です。
早く治すには、マッサージやストレッチ、Cryotherapy(冷却療法)などがあります。
どうしたら防ぐことができるか
どうしたらdomsを防ぐことができるか。それは計画的にトレーニングすることです。徐々に負荷を上げたり、トレーニングのバリエーションを広げていくことです。筋肉痛を完全にゼロにはできませんが、最小限にとどめて、筋肉痛中にケガをしないことが大切ですね。ビタミンC、Eやプロテインを飲むと良いという報告もあるようですが、コンセンサスは得られていないようです。
DOMSに関する研究
マッサージのDOMSへの効果についても研究されているようです。私たちは一口に”マッサージがDOMSにいいらしい”といいますが、研究ではもっと細かいことがどうなのかを突き詰めるものです。なので「運動何時間後に何分間○○なマッサージをする」という事象に対して「△△な症状がXX%減った」という試みをコツコツと積み上げています。研究者達のこういった仕事に対して本当に尊敬します。
まとめ
日本語の筋肉痛は英語でDOMS(ドゥームス)と言う
筋肉痛になるメカニズムは明らかになっていない
筋肉痛は2−3日でピークに達し自然に治る
筋肉痛の症状があるうちはケガをしやすいので要注意
早く治す方法はまだ研究途中にある
研究は、解明された新しい事実を実践(臨床)に繋ぎ、活かすことが大切です。研究結果はそのままだと難しすぎるので、できるだけ噛み砕き、専門家でない人でも利用できるようにする必要があります。私は研究者と一般の皆さんの橋渡しの役目をしたいと思っています。