子供のスポーツを俯瞰する【DoctorTのスポーツエクササイズ医学 -心理学編-】
こんにちはDoctorTです。半袖の陽気になってきました。暑くなる前に爽やかな空気を満喫しておくのもいいですね。
さて、私がチームドクターとして所属するバスケチームのシーズンが終了しました。私は公式戦開始直前のシーズン途中からチームへ参加しました。ほぼ1シーズンを通して感じたのは、選手の心理、モチベーションや感情の大切さとその影響力の大きさです。
シーズンオフ中に、スポーツ心理学を学ぼうと、FCバルセロナが提供している4ヶ月のオンラインセミナーを受講しています。セミナーは、Certificate in Sport psychology for Athletes Developmentというタイトルです。
内容はエリートアスリートを目指す子供に限ったものではなく、一般の子供や大人のアスリートにもあてはまるものでした。キラキラした話ではなく、地に足がついた現実的な話だったので、幾つかご紹介します。
現実を受け入れ、対処法を探す
私達はともすれば、厳しい現実から目を背けがちです。スポーツ心理学では、そういった現実から目を背けず、辛い思いを出来る限り減らして困難を乗り越えるサポートをします。例えば、避けられない厳しい現実の一つが「引退」です。
スポーツ選手は他の職種より引退が早い
スポーツ選手は会社員などに比べ引退の時期が非常に早いのが特徴です。そのため、その後の人生は、現役アスリートととしての時間よりずっと長くなります。
会社員の定年退職(おそらく60−70歳代)より30年も早い30-40代で、アスリートは引退し、それ以降は我々と同じような労働の市場で生きていかなければなりません。
引退はすべての終わりではなく、誰もが経験する過程
一度競技スポーツの世界に入ると引退は避けられません。しかし、この講座では引退はネガティブなだけではないこと、またネガティブな経験にしないために準備ができることも伝えています。「ひとつのステージが終わって、次の新しいステージに進む」という感覚です。
エリートアスリートの競技人生
競技種目や性別によってずれはあるものの概ね以下のような流れだそうです。
まずキャリアのスタートが早く、ピークが20代後半、30代に入ると力が落ちてきてしまうというのは、社会人としての成長と比べるとかなり速いペースですよね。
辛い引退とは
「予期せぬ」引退は非常につらい経験です。そのため、ある程度の時期になったら、自発的にその先のことを考えたほうがうまく切り抜けられると講義では言っています。ただ、ケガや病気など避けられない場合もあります。
期せずして引退になった場合でも、新しい世界で生き抜くための道具があれば、ないときに比べてその引退が乗り越えやすくなる可能性があります。この道具と言うのが、次の職業に必要な知識やスキルです。
子供の頃からやっておくべきこと
最初から引退について知っておく
スポーツの世界に入る段階から、スポーツ選手を終了するときのことを教えておく必要性が強調されています。引退時のメンタルのダメージを減らすことが目的です。
引退後を生き抜く武器を身につける
この講座ではその方法としてdual careerというものを紹介しています。学生時代から、スポーツだけでなく、将来役立つ勉学も並行してやるということです。
FCバルセロナのスポーツ講座では学生選手たちのこの両立がいかに大変なことかはもちろん承知して、具体的なデータも示しています。
それでもdual careerで若い選手たちの引退の精神的衝撃を和らげ、次のキャリアでもアスリートであったことを活かすというのはとても大切なことであると考えています。個人任せではほぼ不可能なので、チームや学校などレベルでの仕組み作りを提案しています。
まとめ
引退は、スポーツ選手であれば誰にでもやってくる過程である
引退は、終わりではなく次のステージの始まりである
適切に準備をすればネガティブなインパクトを減らすことができる
引退の時期が来たら自発的に計画・決意する
子供の時からスポーツだけでなく勉学も両立する
FCバルセロナレベルのアスリートを目指す子どもたちとは違うと思われるかもしれませんが、スポーツ活動に没頭しすぎる日本の子どもたちにも程度の差こそあれ、当てはまる部分がありそうです。
少なくとも周りの大人は、子どもたちがエリートアスリートになれる可能性はそれ程高くないこと、なったとしても引退後の人生は長く、そのための準備を子供の時からやってあげることは子どもの将来のために大切なんだなと感じました。
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