熱中症はなぜ起きる②暑さに体を慣れさせておく【Doctor Tのスポーツ・エクササイズ医学】
こんにちはDoctor Tです。私のストレス発散方法は運動なのですが、暑さのために外を走りにくくなったのとコロナの再爆発でジムに気楽に行けなくなり、もやもやしています。家でのヨガや、涼しい時間帯を見つけてできるだけ体を動かすようにしています。早く思いっきり汗がかきたいと思う今日この頃です。
さて、前回に続き今回も熱中症についてです。前回はなぜ体に熱がたまるのか、そしてそれをできるだけ減らすにはどうしたらいいか、その場でできることを紹介しました(note:熱中症はなぜ起きる①熱を逃す)。今回は予めの予防策についてです。以下の資料を参考にしています。
ほとんどの熱中症は予防もしくは症状を最小限に抑えることができる
いくつかのキーとなる予防策があります。
暑い環境に徐々に慣れさせておく(暑熱順化,heat acclimatization)
十分な水分摂取(脱水予防)
ゆるい服やユニフォームを着る
薄い色の服を着る
極端な高温高湿度の環境での運動を避ける
悪い環境での運動は勧めませんが、どうしてもこの環境でやらなければならないときは、①水分摂取のための休憩を入れる ②計画的に休憩を設定し体を回復させながら ③プレイヤーの様子を注意深く観察しながら です。
様子がおかしいプレイヤーをみたら、即離脱させ熱を放散させることは前回説明したとおりです。
予防策の中でも効果が大きいとされる「暑熱順化」
英語でacclimatizationとは環境に順応・適応するという意味で、heat acclimatizationは暑さに慣れることです。日本語では暑熱順化というようです。あまり馴染みが無いように思いますが、この言葉を使っていきます。
暑さへの順応は「自律神経」が担う
暑い環境下で、私達の体は熱を逃がそうとします。汗をたくさんかくようにしたり、心拍数も上げます。この調整は自律神経が行っています。
暑い時の運動では、送り出される血液量が減るため運動が辛くなる。
暑い中で運動すると心拍数が上がるのですが、1回の心拍で送り出される血液の量(心拍出量)は減っています。汗をかくため、コア体温と皮膚近くの体温とのギャップを小さくするために、血液がより皮膚に近いところ(末梢部)に送りこまれ、相対的に中心部に戻ってくる血液量が減るのがその理由と考えられています。
血液のアウトプット(1分間に心臓から送り出される血液量 ml/分)=1回の心拍出量 (ml/1心拍)×心拍(数/分)です。心拍出量の減少率>心拍数の上昇率のため1分間に送り出される血液の量は減っているのです。
神経の調整能力で暑熱順化している
新しいバッティングフォームを繰り返し練習すると徐々にそれができるようになるのと似ています。よく使う(生きていくのに必要な)神経回路は発達していくわけです。繰り返しの暴露によって徐々に変化していく、「調整、学習」というとわかりやすいでしょうか。
暑さに対しても、繰り返し暑い環境に暴露されると、そんな環境下でもやり過ごせる体にしないと、辛くて持ちません。それを克服すべく、徐々にそういった暑い環境でも対応できる体になるように神経が調整のさじ加減を変えてくれるのです。
暑熱順化による発汗量や心拍数の変化
暑熱順化には2週間ほどを要する
暑熱順化の75-80%は最初の4−7日に達成されているかもしれませんが、有酸素運動を最大限に発揮するには2週間見たほうがよいとのことなので、無理をせず、目標の日程の2週間以上前から準備を始めるのがいいと思います。
汗が増えるので水分摂取を!
体温を下げるために汗をかくようになるため、それを補うための水分摂取は忘れないようにしましょう。脱水になると、せっかく下げようとしている体温がまた上がってしまいます。水分はしっかり補いましょう!
まとめ
熱中症のほとんどは適切な準備で予防もしくは合併症を避けることができる。
暑熱順化は最も効果的な予防策のひとつ。
自律神経が暑い環境に耐えられるよう体の機能を徐々に調整する。
発汗量を増やしたり、心拍数が上がりすぎないようにする。
暑熱順化には2週間位かかる。
汗をかいた分の水分はしっかり補充を。
「暑さに慣れる」というのは私も子供の頃からよく耳にするフレーズでした。今回はそのメカニズムをご紹介しました。実際何が変化しているの?それにはどれくらいかかるの?という理解が深まったら、より的確に準備ができるかと思い、今回の内容にしましたが難しかったかもしれません。
神経が学んでくれているということとそれには2週間かかるということを知ってもらえば予防策としては良いかなと思います。
次回も暑熱順化です。how toについて書きます。まだまだ暑い日が続きます。無理をしないでお過ごしください!
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