喘息と運動②喘息に効く運動【Doctor Tのスポーツ・エクササイズ医学】
こんにちはDoctor Tです。気温の上下や不安定な天気で体調を崩されている方もいるかと思います。無理はせず、できる範囲で体を動かしましょう!
今回は前回からの続編です。前回は運動すること(体を動かすこと)によって喘息のどんな症状に効果があるのかをお話しました。
今日は、どんな運動が勧められているかを紹介します。前回同様、GINAとde Lamaら(2023)の論文を参考にしています。
「有酸素運動」と「呼吸器訓練」
GINAでは「有酸素運動」と「呼吸器訓練」が勧められています。これは、他の運動には効果がないということではなく、現時点ではまだ根拠が不十分ということです。
原則は「できる範囲で、苦しすぎない」
個々の身体能力の差もありますが、同じ人でも、しばらく運動していない、喘息症状の変化などにより、適度な運動の強さや量は時期によって様々です。適度な運動にはよい効果がありますが、やりすぎはよくありません。「あなたが」できる範囲内で、苦しすぎないが原則です。
有酸素運動
最近注目されているHigh Intensity Interval Training (HIIT)は喘息の方にも推奨されます。強い負荷(速く走るもしくは自転車の負荷を上げる)と休憩を短時間(30秒〜1分位)ずつ繰り返す運動です。安全性も証明されており、短時間で高い負荷がかけられるのがメリットです。
筋トレも一部紹介していますが、喘息に特化した効果というより、全体的により健康を目指すということが狙いです。
呼吸器訓練
最もよく研究されているのがButeykoメソッドやヨガの呼吸法です。①(息を吸う時)鼻と横隔膜を使っている、②呼吸のリズムをゆっくり一定に、③息を吐く時間を長くする、のがポイントです。
呼吸の仕方についてはこちら↓。YouTube「ヨガ呼吸」で検索もいいと思います。
気持ちを落ち着ける効果にも期待
これらの呼吸法は、効果的な呼吸を身につけるだけでなく、精神的に落ち着かせるという効果もあります。緊張したときにゆっくり深呼吸するのはこのためです。
安全に運動するために
まずは薬で安静時の呼吸を安定させる
前回もお伝えしましたが、大切なのでもう一度、「喘息は薬による治療が第一選択」です。安静なときの呼吸が落ち着いていなければ、運動はNGです。
外の環境もチェック
運動場所の温度、湿度、大気汚染など、日常生活でさえ、息苦しさや喉に違和感を感じるような環境ではやめましょう。途中で体調の異変を感じたら運動を中断する。この判断は大切です。
運動で咳が出やすい環境と種目
冬のスポーツや持久系スポーツはややリスクありです。乾燥と温度差は喉の敵。
(医療者向け)EIBは大丈夫なのか
喘息患者さんに運動をすすめる時に心配なのがEIB (運動誘発性気管支狭窄)です(note:運動中に息が苦しくなる原因)。
GINAのガイドラインでは、EIBをできるだけ避けるために①ウォーミングアップをする②運動前にSABA(発作時に吸入するメプチンなど)を使うことが勧められています(エビデンスA)。③低用量のステロイド+フォルモテロールの使用はエビデンスBです。
まとめ
有酸素運動と呼吸訓練で症状や生活の質の改善がみられる
呼吸訓練には精神的な効果も期待できる
運動は安全が最優先
運動前に体調と環境をチェック
EIB減らすには運動前のウォーミングアップとSABAの吸入
運動は安全なことが最優先なため、細かく注意事項を挙げましたが、100%でできないからやめるのではなく、できることから少しずつ積み上げていくとうまくいく気がします。
日々の体調の改善は気づきにくいのですが、数週間から1ヶ月くらい運動を続けると振り返ったときに、改善が実感できることが多いです。まずは始めてみること、それができたら次の目標「続ける」ですね!
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