出張メシと観光客と本物のグルメ
出張先の朝食で訪れた海鮮系の食堂。
北海道らしい高価なウニ丼やイクラ丼を旅行で財布の紐が軽くなっている観光客であろう人々が注文する中、道民である俺は鮭のハラス焼き定食を注文した。
店員に「あー、この人は道民だな」とバレる瞬間だろうか。それとも単に貧乏人だと思われただろうか。
そんな事をボンヤリと考えている内に注文したハラス焼き定食が到着した。
ウニ丼やイクラ丼に比べたら地味だが、脂が乗った確かな味は決してそれらに引けを取らない。
「本当に美味いのはこういうヤツなんだぜ」
俺は、高級食材を頬張る観光客に心の声で訴えたが、北海道と言えばウニやイクラだと思っている観光客には、おそらく負け犬の遠吠えにしか聞こえなかったであろう。
そんな時、俺の耳に信じられない言葉が飛びこんできた。
「焼きそばひとつ」
え?焼きそば?ここは海鮮系の食堂だぞ??
はじめて来た店なのに道民だからと言って通ぶっていた俺は、背後からラグビー日本代表のキャプテンであるリーチ・マイケルのハードタックルを食らったかのような衝撃を受けた。
上には上がいる。
そう、人生は他人を見下して自分が特別な存在だと思い上がった瞬間、大きな落とし穴が用意されているのだ。
何と大胆な!
本物の食通がそこにいる!!
俺は恐る恐る声の方を見た。
焼きそばではなくて焼きサバだった。
〜fin〜