天気と沈黙と幻覚

長い会議が終わり、俺は客の一人を建物の出口へと案内した。

出口に向かう途中、丁度俺の位置から見える窓から外を見ると、会議が始まる前は降っていなかった雨が降っていた。

「雨が降ってきましたね。」と俺。

「雨ですか!嫌ですねぇ。折角暖かくなってきたのに!」

「本当ですね。」

その後も客は、着ているものが濡れるだとか、ぶつぶつと文句を言っていた。

そう、天気はいつも共通の話題として親しくない者同士を繋ぐツールであり、お陰で俺と客は気まずい沈黙から解放されることが出来たのだ。

そんなやり取りをしている内に出口に着き、俺は「お疲れ様でした!ありがとうございました!」と言って客を外に送り出した。

雨など一滴も降っていなかった。

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