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ラグビーの選手評価指標


最適な選手評価とは

スポーツ選手の評価は、チーム編成や選手のモチベーションに直結するため、非常に重要です。では、どのような評価方法が最も適しているのでしょうか?すべてのポジションや役割を一様に定量的に評価することは可能なのでしょうか?

フェアな選手評価は、評価する側と評価される側の双方にとって重要です。チーム編成においては、低評価の選手を放出し、高評価の選手を獲得することでチーム力を強化できます。適切な選手評価があれば、無駄な人件費を削減し、必要な能力を持つ選手と適切な金額で契約することができます。さらに、他チームが適切な評価システムを持っていない場合、優れた選手を低コストで獲得できる可能性があります。

選手にとっても、評価は年俸に直結するため重要です。不公平な評価システムは、選手に不満を与え、チームにとってマイナスになるプレーを引き起こすことがあります。フェアな評価システムは、適切に選手を動機づけ、チームの一体感を醸成します。

ではフェアな選手評価とはどのようなものでしょうか?


RAPM(チーム貢献度)

RAPMは、選手がチームにどれだけの得失点差をもたらしたかを評価する指標です。具体的には、選手が出場している時間帯と出場していない時間帯のチームの得失点差を比較することで算出されます。これは得点と失点という結果のみからで算出される評価方法であり、個々のプレーというよりもチーム全体のパフォーマンスに基づいて評価を行います。

RAPMの算出方法

ある選手の例を用いて説明します。ある試合で、彼が後半30分まで出場していた時点でチームは40対5でリードしていました。彼が交代すると、残りの10分でチームは0得点7失点を記録しました。この場合、この選手が出場していた方がチームの得点が多く、失点が少なかったことから、この選手はチームに対してプラスの影響を与えていたと評価できます。

同様に、全試合において出場選手の組み合わせとチームの得失点を収集します(下図)。各選手の得失点貢献度の総和がチームの得失点と一致するように、統計学の手法を用いてすべての選手の得失点貢献度を一括で算出します。これにより、各選手のチームに対する影響を客観的に評価することが可能となります。

出場選手とそのときのチーム得失点から選手の得失点貢献度を求める
さらに詳細説明は弊社記事

RAPMの弱点

RAPMはチーム全体のパフォーマンスに依存するため、勝率の少ないチームに所属する選手は低い評価を受けやすいという弱点があります。これはチームの得失点総量が少ないため、選手の貢献度が過小評価されることがあるからです。
この弱点を補うための評価指標がxPです。


xP (プレー貢献度)

xPは、プレーひとつひとつの得点期待値を評価する指標です。キャリー、パス、キック、セットピースなどのプレーごとに得点期待値を算出し、その総和で選手の貢献度を評価します。これにより、チーム全体のパフォーマンスとは独立して、個々のプレーの質を評価することができます。

xPの算出方法

xPは、リーグワン、Super Rugby、Bunnings NPCなどの試合データを使用し、各プレーの位置や成功率を考慮して、そのプレーがどの程度の得点(または失点)期待値を生み出すかを統計的手法により算出します。
このデータを基にして、各選手が行ったプレー1つ1つのxPを積み上げてトータルのxPを算出します。高いxPを生み出した選手は、実際に得点に結びつかなかった場合でも、優れたプレーをしていたと判断することが可能です。

xPのイメージ(値はランダムです)

xPの弱点

xPは、選手の役割やポジションによって得点期待値の高いプレーをしやすい選手とそうでない選手が生じる可能性があります。また、選手が評価基準を意識しすぎると、xPの高いプレーばかりを狙うことも懸念されます(xPのハック)。

一方、RAPMは選手が出場していることでチームが得る得点や抑える失点を評価するため、公平な評価方法と言えます。


実際の評価値(リーグワン Div1 2023-24シーズン)

RAPMのTOP10


xPのTOP10

結論

RAPMはチームの勝利に対する貢献度を測り、xPは個々のプレーの質を評価します。
RAPMは、選手が出場していることでチームが得る得点や抑える失点を評価するため、客観的であり、スポーツ最大の目的であるチームの勝利と直結しています。
一方、チームスポーツである以上、どれだけ選手個人のプレーが良くても結果につながらないこともあります。xPはプレーの貢献度を評価できます。

これらの指標を相互補完しながら活用することで、選手のパフォーマンスをより総合的に評価し、良い選手を見逃さずに効率的な選手獲得が可能となります。さらに、クラブチームがこれらの評価指標を適切に使用することで、選手の育成やチームの戦略策定においても大きな効果を発揮することが期待されます。

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