マラソンのエネルギー代謝システムとは何ぞや。。。

前回の「マラソンの基礎とは何ぞや。。。」におきまして、酸素を効率よく運搬する能力はエネルギー代謝システムにとって非常に大切だということを記しました。
そこで今回はレース中のマラソンのエネルギー代謝システムについて一緒に考えていこうと思います。

まず代謝(metabolism)とは??
ギリシャ語で「変化」を意味します。
代謝は ・異化:分子が分解されること
    例)グリコーゲン → グルコース
       タンパク質 → アミノ酸
    ・同化:分子が合成されること
    例)グルコース → グリコーゲン
       アミノ酸 → タンパク質
に分けられます。

次にエネルギー代謝システムとは??
   食事 or 異化
       ↓
アデノシン三リン酸(ATP)
       ↓ 加水分解
力学的エネルギー(筋収縮時に使用)などに変換(75~80%は熱として失われる)
大まかなエネルギー代謝の流れはこのような感じです。

もう少し話を分解していきましょう。
<糖質代謝>
食事
 ↓
グルコース ← (異化)グリコーゲン
 ↓ 分解(解糖:グルコースの分解)
ATPの生成 と
ピルビン酸(酸素が不足すると)→ 乳酸
 ↓(ミトコンドリア内↓)         ↓ 肝臓
    アセチルCoA               グルコース
 ↓ クエン酸回路             ↓
 ↓ 電子伝達系            解糖系へ
ATPの生成             <嫌気的解糖>
<好気的解糖>         
※ミトコンドリア:嫌気的状態(酸素が不足している状態)ではピルビン酸を代謝できない⇒ピルビン酸が乳酸へ変化
つまり・・・
前回の「マラソンの基礎とは何ぞや。。。」で説明した
有酸素能力(酸素を運搬して利用する能力)が向上すると、多くのミトコンドリアに酸素を届けることができるため、ピルビン酸を効率的にATPの生成に繋げることができます。
(乳酸(肝臓に運ばれて)→グルコース→解糖系は効率が悪い)

ランナーの皆様大好き「カーボローディング」
大会前日までに糖を摂取してグルコース(同化)→グリコーゲンにして筋肉・肝臓へ蓄えます。
そして、マラソンレース中に、グリコーゲン(異化)→グルコースにして解糖系・クエン酸回路・電子伝達系によりATPの生成を行います。
また、当日の朝食やスタートまでの補食も血糖(血中グルコース)として、レース中に同様にATPの生成を行います。
足りないエネルギー量はレース中のドリンク、ジェルなどで補います。
(※ランナー界隈では「30キロの壁」という言葉がまことしやかにささやかれておりますのでこれもまた別の記事にて投稿いたします。)

ここまでは糖質代謝について説明しました。
ここからはもう一つのエネルギー源である脂質代謝について
簡単に説明します。
<脂質代謝>
                 食事
                   ↓
   トリグリセリド(中性脂肪)
                  ↓加水分解                             
               脂肪酸
                  ↓(ミトコンドリア内  )  
           アセチルCoA
                 ↓クエン酸回路
                 ↓電子伝達系
              ATP生成

アセチルCoAからの経路は糖質代謝と同じ経路です。
(※脂質は食事から以外にも糖質代謝の<嫌気的解糖>の過程で生成されるアセチルCoAが過剰になると、アセチルCoA→脂肪酸→トリグリセリドに変換され貯蔵されます。)

それでは最後に糖質代謝と脂肪代謝について比較していきます。
マラソン(またはマラソントレーニング)中に使用されるエネルギーは、
糖質代謝からのエネルギーが多く、脂肪代謝はより多くの酸素を
必要とし、エネルギー代謝の時間も長いです。。
             | 糖質代謝    | 脂肪代謝
エネルギー使用量|  多      |  少
時間                          |        短      |         長
必要酸素量            |        少   |       多
脂肪代謝は空腹時(体内に糖質が不足している状態)に促進され、
食事摂取によりインスリンが分泌され抑制されます。
マラソンにおいて糖質代謝はエネルギー効率が良いのですが、
スタート前に体内に蓄えれるグルコース(グリコーゲン)は限界量が決まっています。
そこで脂肪代謝を促進する方法が試されています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ー高脂質・低糖質を緩和した食事法:
   脂肪酸のATP生成促進(緩和していない食事法はグルコースのATP生成が阻害されるとの報告有)
 ―高強度走+持久走:脂質酸化量が増大(脂肪酸のATP生成促進)
 ー中強度以上の持久性トレーニング:
   ミトコンドリアの大きさや数の増加⇒グリコーゲン分解の抑制
 ⇒脂質を優先的にエネルギー源として使用  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とのことです。
マラソン時のエネルギー消費は糖質代謝が多くを占めますが、
脂肪代謝が促進することはマラソンパフォーマンスの向上に繋がると考えています。

前回の記事の有酸素能力の向上がマラソンのエネルギー代謝システムにいかに影響を与えるかお分かりいただけましたでしょうか。
次回はランナーの皆様大好き「30キロの壁」について投稿予定です。

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