アンチ・ドーピング活動に対する想い
こんにちは!スポーツファーマシストの大西伴幸です。
愛媛県松前(まさき)町の調剤薬局で薬剤師として勤務しています。
突然ですが、僕には夢があります。
それは
’’スポーツ界にスポーツファーマシストが欠かせない存在になる環境を作ること’’
です。
これが実現すると
うっかりドーピングを0にすることができるだけでなく、
アスリートが自分自身をドーピングの危険から守ることができます。
今はそれを実現するために、様々な活動をしています。
ところで、
スポーツファーマシストってなんぞや??
と思った方もいると思います。
2022年2月に盛り上がった、冬季オリンピックでも
ドーピング違反のニュースがあり、
皆様の記憶にも新しいのではないでしょうか。
そのほかにもネット記事で
’’ドーピング違反で記録取り消し’’を見たことがあるかと思います。
ドーピング違反となると、資格停止期間(練習や試合の参加禁止)の基準が
4年間のため、
事実上アスリートにとって選手生命を断たれる恐れがあります。
(善意・悪意で資格停止期間は異なります)
しかし、ドーピング禁止物質は皆様の思っている以上に身近に存在しています。
市販薬をうっかり飲んで違反になってしまうことがあり、
正しい知識をつけることが、今後とても重要になってきます。
スポーツファーマシストは、ざっくり言うと
アスリートをドーピングから守るために作られた、
認定の資格です。
いわゆるアンチ・ドーピングに詳しい薬剤師のことです。
主な仕事は、アスリートやトレーナー、コーチからの相談に応えることや競技団体やスポーツチームに講習会を行うことが多いです。
長くなりましたが、
ここで、スポーツファーマシストの活動を行う上での
ひとつの想いがあります。
「スポーツファーマシストの認知度を高めたい」
スポーツファーマシストは、スポーツ業界だけでなく薬剤師業界でもまだまだ周知が必要です。
ここで、一つ質問です。
咳喘息や気管支喘息でよく使われる
ツロブテロールテープ(商品名 ホクナリン)の
使用はドーピングになるでしょうか。
正解は、ドーピングに該当します。
なぜかというと、咳症状は気管支が狭くなることで発症しますが、その症状を緩和するために
ツロブテロールテープを使うことがあります。
アスリートがそれを使うと気管支が通常より広がるので
他の選手と平等にならないことはお分かりいただけると思います。
この行為がスポーツ精神から逸脱されるとしてドーピングに該当します。
ドーピングって、飲み薬以外にもあるんですよね。
最初に知った時は衝撃でした。
実はこのツロブテロールテープでの事例は、
2019年度では2件も発生しています。
これまでの違反事例は次のリンク先をご参照ください。
国内ドーピング違反事例 JADA HP
ツロブテロールといえば、スポーツファーマシストであれば違反物質とすぐに判断できます。
ではなぜこのような
違反事例が起こってしまったのでしょうか。
2019年3事例目の空手の選手を事例に挙げてみましょう。
このアスリートは、アンチドーピングの講習を受けていました。
元々気管支喘息を患っており、ドクターや薬剤師にはその旨を伝えていたそうです。
自身のメディカルバックには、
ドクターと薬剤師のチェックが入った薬が入っていたのですが、親御さんが症状悪化を懸念して
親御さんのツロブテロールテープをメディカルバックに入れたそうです。
アスリートはメディカルバックに入っている薬は大丈夫との認識があったため使用してしまい、ドーピング違反となりました。
さて、今回の件どうしたら防げたでしょうか。
僕はアスリートの意識レベルをもっと上げる必要があると考えています。
そのためにひとつ簡単に取り組める方法があります。
それは、ドーピング違反物質を検索できる
DINXというアプリです。
このアプリは、商品名や市販薬のバーコードを読み取るだけでその薬が違反物質かどうか検索できる優れものです。
しかも無料で使えます!詳しくはリンク先でご確認ください。
今後のアンチドーピングの教育は、
アスリート自身が検索ツールを使いこなせるように
伝えていく必要があると考えています。
そのためには、スポーツファーマシストだけでなく
薬剤師みんなが知っておく必要性があります。
ただ、スポーツ・薬剤師界隈に浸透させたいけどどうすればいいか。。。。
ずっと考えていました。
まず、スポーツチームにスポーツファーマシストの必要性を感じてもらうことです。
共通の知り合いを通じて
松山大学バスケットボール部の監督さんを紹介して頂きました。
アツい想いでスポーツファーマシストの必要性をお話しましたが
そこで言われたことが、
「必要なことはわかったけど、学生さんはいきなりドーピングのことを
聞いてくれるかな。。」
今まで外部講演会でも話してきましたが、聞き手側のニーズによって話す内容を変えた方がいいと気づきました。
監督さんとコミニュケーションをとっていくうちに
・栄養によるコンディショニング
・捻挫などの知識と予防対策
・怪我から復帰までのコンディショニング
・熱中症の対策 など
について要望が上がってきました。
アンチドーピングについても知って頂きたいことがあったので
掛け合わせで伝えていくことにしました。
医学×薬学、栄養学×薬学、運動学×薬学
この3本柱で実施してくことにしました。
ご縁いただいている、
スポーツドクター、スポーツ栄養士、アスレティックトレーナー、
スポーツファーマシスト計5名でオンラインサポートチームを結成しました。
60分1コマでメインの内容に関連する薬学的内容も5分間と限定して
毎回入れるようにしました。
全5回のうち、3回が終了しましたが、
手応えと課題も見えてきました。
大きな気づきとしては、
スポーツファーマシストは薬だけでなく、
薬剤師でもあるので、公衆衛生面での内容を入れるようにしました。
例えば、体育館の湿度や温度管理、熱中症予防と暑熱順化など。
今までは、薬やサプリのみという固定概念がありましたが、
活動をしていくうちにたどり着きました。
またしっかりアセスメントして記事にしたいと思います。
行動を起こしてまだ3ヶ月少しですが、0を1にできたことは進歩だと考えています。
オンラインサポートチームでサポートしている大学も全国的に少ないと
聞いているので、試行錯誤しながら、
この取り組みをきっかけに
スポーツファーマシストの必要性を発信し続けます!
2022年8月
大西 伴幸
下記写真は第3回のセミナー内容。