全米が熱狂するカレッジバスケットボールの祭典「マーチ・マッドネス」
来週の3月19日(火)に開幕を控えたMarch Madness(マーチ・マッドネス)。
マーチ・マッドネスとは、全米大学体育協会(NCAA)が主催するバスケットボールの大学ナンバーワンを決めるトーナメント大会のことです。
カレッジスポーツと聞くと最初にアメリカンフットボールを思い浮かべる方が多いと思いますが、バスケットボールも負けていません!アメリカにおけるバスケットボールの競技人口はアメリカンフットボールに次いで2位の3,000万人。カレッジバスケットボールはNBAに並ぶ人気を誇っており、州によってはNBAに勝る人気を誇るチームも存在します。
今回はそんなカレッジバスケットボール最大のトーナメントである『マーチ・マッドネス』を紹介します!
マーチ・マッドネスに出場できるチームとは?
マーチ・マッドネスは全米トーナメントのことを指しており、トーナメントに出場するための予選や選考発表会が存在します。その予選を「カンファレンストーナメント」といい、358校あるディビジョン1に所属する大学の生き残りを賭けた戦いがこの予選から始まるのです。この形式は男女ともに同様な形で設計されており、レギュラーシーズンを全敗で終えてしまったチームもカンファレンストーナメントを勝ち抜くと、マーチ・マッドネスに出場することができます。逆にここまで良い成績を残しているチームでも、カンファレンストーナメントで負けてしまうとマーチ・マッドネスに出場できなくなります。
また、冒頭、トーナメントに出場するための予選や選考発表会があると言いましたが、実はマーチ・マッドネスに出場する方法は2つ存在します。1つが、先ほどのカンファレンストーナメントを勝ち抜いて、各カンファレンスで1位になること(32チーム)。もう1つがセレクションコミッティという選考委員会によって、レギュラーシーズンの成績を基準に選ばれること(36チーム)。この選考結果を発表する会を「セレクションサンデー」といいます。以上2つの方法でマーチ・マッドネスに出場する合計68チームが選ばれるのです。
*日本における、選抜高等学校野球大会の出場チームの選考方法と似ていると言われています。
全米を魅了するマーチ・マッドネスの魅力
マーチ・マッドネスを知る上で、覚えるべき用語を紹介します。マーチ・マッドネスでは他の大会では使われない独自の言葉があります。
ファースト4(First Four):開幕の4試合
スイート16(Sweet Sixteen):ベスト16チーム
エリート8(Elite Eight):ベスト8チーム
ファイナル4(Final Four):ベスト4チーム
マーチ・マッドネスには、グループステージなどがなく、1回戦から68チームが各地でぶつかり合う一発勝負のトーナメントです。
トーナメントは64校で始まりますが、マーチ・マッドネスには68校が選出されるため、まずファーストフォーというプレーオフ進出枠をかけた4試合が実施されます。この4試合はランク下位のチームによって実施され、この結果によって最後の招待枠が決定し、4つの地域(South、East、West、Midwest)に分かれた「リージョナル(地域)・ラウンド」がスタートします。各地域ごとに16チームが参加し、各地域の優勝チームが「ファイナル4」として知られる準決勝に進出、最終的に優勝チームが決定します。このトーナメント期間中は、ほとんどの試合が連戦で開催され3週間にわたって続くため、カレッジバスケットボールファンとしては最高に盛り上がる期間(マーチ・マッドネス=狂気の3月)となっています。
さらに、注目すべきはトーナメントのシードです。シードとは、チームの力量や成績に基づいて決定されるランキングのことで、カンファレンストーナメントの成績とは別に、トーナメントに出場する前にNCAAによって決定されます。シードは各地区において1位から16位までつけられ、シードが高いチームほどトーナメントで有利な位置につくことができます。
しかし、シードが高いチームが下位シードのチームに敗れることももちろんあります。トーナメントは予測不可能なのです。これを現地ではアップセットやジャイアントキリング(番狂わせ)といい、マーチ・マッドネスがファンを魅了し続ける理由の一つとなっています。
昨年マーチ・マッドネスで起きた番狂わせで、シード1(全体4位)のパデュー大学が1番低いシード16(全体68位 *最下位)のフェアリーディキンソン大学に敗れた際の映像です。
また、マーチ・マッドネスの試合は各大学の本拠地で行うのではなく、平等にするためニュートラルな会場で実施されます。また、ファイナル4はNFLで使用されているスタジアムで開催されるのですが、ほぼ全試合が満席となります。会場を各大学の色で染め、各チームのファンたちが熱狂的な応援を行う姿も、マーチ・マッドネスの魅力の一つです。応援合戦は熱気に包まれ、会場は熱狂の渦に巻き込まれます。
さらに今年は日本代表として昨夏のワールドカップでも活躍した富永啓生選手がネブラスカ大学コーンハスカーズの選手として出場することが確実視されています。今シーズン大活躍をしており、ホーム最終戦では個人で30得点を挙げました。今夏のNBA入りとパリ五輪メンバー入りの評価にもつながるため、大学生活最後の大会となるマーチ・マッドネスでの活躍が期待されます!
2024年の開催スケジュール(日付はアメリカ時間)
セレクションサンデー:3月17日(日)
ファースト4:3月19日(火)〜20日(水)
ファーストラウンド:3月21日(木)〜22日(金)
セカンドラウンド:3月23日(土)〜24日(日)
スイート16:3月28日(木)〜29日(金)
エリート8:3月30日(土)〜31日(日)
ファイナル4:4月6日(土)、8日(月)
※今年のファイナル4はアリゾナ州フェニックスのState Farm Stadiumで開催されることが決まっており、その後2030年まで開催都市およびスタジアムが決定しています。
もうひとつの楽しみ方
ここまでマーチ・マッドネスの出場方法や魅力についてご紹介してきましたが、実はもう1つマーチ・マッドネスを楽しむ方法があります。それはBracket Prediction(トーナメント結果予想)です。
このゲームは世界三大投資家として知られているウォーレン・バフェットが、マーチ・マッドネスの全67試合の結果を正しく予想できた市民に賞金10億ドルを与える、という形で2014年に始まりました。それ以降もウォーレン・バフェットがCEOを務める米投資会社バークシャー・ハサウェイの従業員に対しては、スイート16までの試合結果を言い当てた場合、賞金として年間100万ドル(当時レートで約1億700万円)の終身年金を約束しています。また、自身の出身地であるネブラスカ州のクレイトン大学またはネブラスカ大学が優勝した場合は、賞金の額を倍増させて年間200万ドルにすることや、たとえベスト16まで到達しなくても、勝敗の予想を最も長く連続で的中させ続けた従業員に10万ドルの賞金を出すことを公表しており、2017年にはウェストバージニア州の工場に勤める従業員が、31試合目までの勝敗を言い当てて10万ドルを獲得しました。
このように試合結果にも注目が集まる仕組みができ、現在ではNCAAの公式やUSATODAYでも開催されています。USATODAYでは、トーナメントの結果を全て正解した人に賞金100万ドルが送られるそうです。思わずやる気になりますが、難易度はかなり高く、全て正解する確率は147.6兆分の1だそうです。そのため、毎年数百万人のファンが参加していますが、未だに全ての試合結果を正解した人は現れていません。
予想は無料ででき、セレクションサンデー後から開始となりますので、興味のある方はぜひ挑戦してみてください!
また、近年日本でも話題が上がっているスポーツベッティング。もちろんマーチ・マッドネスにもお金がかけられており、American Gaming Associationが今年、2024年のマーチ・マッドネスにおいて27億2千万ドル(約3,650億円)が合法的なスポーツベッティングに賭けられるだろうと予測されています。
まだ大会が始まっていないので予想ではありますが、今までの大会での数字などを計算した上でここまでの金額が賭けられるだろうと予想されています。
莫大な経済効果
マーチ・マッドネスは、スポンサーシップや広告収入、チケット販売などを通じて莫大な経済効果を生み出しています。
特にTV放映権やストリーミング配信の契約は、大学やNCAAに多大な収益をもたらしています。マーチ・マッドネスの放映権はCBSとTNTが所持しており、2010年に14年間契約で総額108億ドル(当時レートで1兆152億円)で合意に達しました。なお、2016年には2032年まで契約が延長となり、20年以上の放映権をCBSとTBSは獲得しています。LIVE配信はMarch Madness Liveで放送されており、アメリカ国内であれば無料で視聴することができます。2023年の視聴者数は、男子のファイナルが1,469万人、女子バスケのファイナルが990万人となり、非常に盛り上がりました。
総広告費が11億円以上!?
2020年はコロナ禍のため大会がキャンセルとなり、2021年は観客動員数を25%程度の規模に縮小して実施されました。2022年からは3年ぶりに従来通りの開催となり、2023年大会では30秒CMが230万ドル(3億1千万円)の値で販売され、放送権を持つCBSとターナー・メディアは3週間分の広告枠を早々に完売したそうです。マーチ・マッドネスは、総広告費11.5億ドル(1,550億円)の一大イベントに成長しているのです。
今年の企業キャンペーンの一例として、ハンバーガーチェーン店のウェンディーズがマーチ・マッドネス2024開催中にアプリを通して該当のハンバーガーを購入すると、1ドルで購入ができるというキャンペーンを実施しています。
また、マーチ・マッドネスは大学のブランディングやリーグ戦ホーム開催の来場者数の増加にも貢献しています。トーナメントで優勝した大学や良い成績を残した大学はスポンサーなどからの支援を引き寄せ、さらにトーナメント中に注目される選手たちは、NILの契約によって個人的な収益を得られます。
さらに、マーチ・マッドネスは地域経済にも大きな影響を与えています。開催地周辺のホテルやレストラン、観光施設などは大会期間中に大きな収益を得ることができています。また、観光客やバスケットボールファンが地域を訪れることで、地域の活性化や雇用の創出にも寄与しています。
総じて、マーチ・マッドネスの経済効果やブランディングの影響力は大きく、多くの関係者にとって利益をもたらすイベントとなっています。
終わりに
今回はカレッジスポーツでも、マーチ・マッドネスについて紹介させていただきました。マーチ・マッドネスはバスケットボールファンにとって見逃せないイベントの1つです。来年からNBAで活躍する選手もプレーするため、とてもエキサイティングなトーナメントとなること間違いありません!日本でのLIVE視聴は難しいですが、YouTubeでの見逃し配信が行われる予定ですので、興味のある方はぜひ観てみてください!