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全人口の3分の1がスポーツ観戦から離れる・・・!? ~スポーツ界にとってZ世代はピンチかチャンスか~

若者を指す言葉として誰しもが一度は聞いたことがあるであろう「Z世代」。選挙中にはよく「未来を変えるのは若者」といった発言が聞かれます。それほど世の中にとって重要な世代で”スポーツ観戦離れ”が進行していることはご存じでしょうか。未来を担う世代がスポーツ観戦から離れていくことは、スポーツ界にとってまさに死活問題といえるでしょう。
そこで本記事では、これまでの趣向とガラッと変えて、時代の背景からみえる「Z世代がもつ特性や傾向」を検討し、なぜZ世代がスポーツ観戦から離れるのか、さらにZ世代を繋ぎとめ、取り込むためには何が必要なのかを考察します。



現状:Z世代はライブスポーツを好まない

端的に言えば、Z世代は他世代に比べてライブスポーツを好まない傾向にあります。
米国ではこのような調査結果が報告されています。

・Z世代のうち約50%が「生のプロスポーツイベントに参加したことがない」と答えた
・Z世代のうち約3人に1人が「スポーツイベントの生中継を視聴しない」と答えた
 ※全世代を対象とした場合、同じ回答をした人は約4人に1人

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いやいや、Z世代はネットに強いから生中継で見ているでしょ、思った皆さん、そうともいかないのがZ世代なのです。

上記の調査結果から、他世代と比較して、Z世代は着実にスポーツ観戦から離れているといえます。
一方で、若者が離れてもスポーツファンが減るとは限らないと考えることもできます。
但し、国連統計によると、2019年時点で世界総人口78億人のうち、32%をZ世代が占めており、ミレニアル世代の人口比率31.5%を超えています。今後はさらに増えると予測されるZ世代が離れていくことはスポーツ界にとって危機的状況ではないでしょうか。

さて、簡単に現状を見た上で、ここからは現状に対する仮説に入ります。
ギリギリZ世代である筆者が立てた仮説は2つです。

仮説①:特性のミスマッチ

Z世代とライブスポーツは、互いがマッチングしづらい特性を持っており、それ故にZ世代のスポーツ観戦離れが進行していると考えます。

各世代の分類

早速仮説の内容に入ろうかというところですが、その前に休憩がてら少し寄り道しましょう。
ここまで「Z世代」という言葉を沢山使っていますが、皆さんはZ世代が何年~何年生まれを指すかご存じでしょうか。
他世代を含めて簡単に示したものが下表になります。

各世代の分類(筆者作成:引用元 Infocubic

世界での大きな出来事や歴史等の時代背景とともに、各世代を表すキーワードや、主流メディアが変遷してきたことが分かります。

Z世代とライブスポーツの特性

さて、寄り道でZ世代のことを少し分かったところで、本題の「Z世代とライブスポーツの特性」に入りたいと思います。

Z世代とライブスポーツ、それぞれの特性は下記の図の通りと考えます。
※各特性については下で詳細を記載しています。

Z世代とライブスポーツの特性(筆者作成)


▼Z世代の特性

①短尺
Z世代は時間尺度の短いコンテンツを好む傾向にあります。

最近若者の間ではコンテンツの「同時視聴」や「1.5倍速視聴」が流行っていますが、Z世代はもはや決められた時間に決められた長さのコンテンツを通常速度で再生することを怠惰に感じる傾向にあり、「タイムパフォーマンス」を重視します。

Markezineの記事内では、タイムパフォーマンスとは・・・「時間あたりの機能的/情緒的価値の量」と定義されています。

Tiktokの流行や、Youtubeショートの台頭等はこのようなZ世代が求めるものに適応しているからと考えられます。

②受動
生まれた時から情報にあふれた世界で生きてきたZ世代は、自然な流れで受動的な傾向になっています。

・そもそもコンテンツを選択し、消費することにも「疲れ」を見せ始めている
・星の数ほどあるサービスやコンテンツからいくつかを選ぶことは、相当量のエネルギーを消費している

③共感
Z世代を表すワードとして、「共感」「尊重」「個人」「意味」といったワードがあげられます。

大量の情報を常に受け取りながら生きるZ世代は、自然と多様性を学び、寛容になっていきます。そして同時に、それがなぜなのか、そこにどんな意味があるのかに興味を持ち、価値観として重要視するようになっていると考えられます。
マーク・ビール教授(ラトガース大学)はZ世代を以下のように定義しています。

起業家であり、テクノロジーに精通し、目的意識を持ち、非常に協力的である。それがZ世代なのです。

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スポーツの特性のなかでZ世代とマッチしない特性の例

①長尺
言わずもがなですが、スポーツ観戦には長時間の拘束が伴います。1時間で試合が終了するスポーツの方が少ないかもしれません。
普段数秒~数分、長くて数十分のコンテンツ消費に慣れているZ世代にとって、突然数時間のコンテンツ、さらに早送り不可のコンテンツを消費することはかなりハードルが高いと容易に想像することができます。

②勝敗
スポーツ及び試合は、2者以上が勝敗を巡って対戦する構造となっています。
もちろんその過程や裏側等に見どころはたくさんありますが、その日のスポーツの試合結果が淡々と紹介される夜のニュースのように、最初に「結果」を与えられたところで、それはZ世代が興味を持つでしょうか?先述の通りZ世代は意味や目的、過程を重視するため、これもまたアンマッチな特性と考えられます。

③リアルタイム
好きで応援しているチームの試合を、リアルタイムで年間1試合も見ずに結果だけを確認する人はどれほどいるのでしょうか?
リアルがスポーツの醍醐味であることはスポーツが好きな皆さんにとっては当然のことかと思います。
一方で、Z世代は「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する。つまり、これもハードルが高いのです。

仮説②:デジタルネイティブへの敗北

Z世代のデジタルネイティブ度

さて、皆さんは、Z世代のデジタルリテラシーを正しくイメージできていますか?
Z世代は「8秒」で興味を判断するといわれています。

Z世代の集中力持続時間は通常、わずか8秒です。ミレニアル世代の約 12 秒よりも数秒短いです。

iab UK

つまり、オーディションのアピール時間が8秒しか与えられていないようなものなのです。
8秒以内にZ世代の興味を引けなければ、そのコンテンツはどんどんオーディションから落選していきます。

Z世代のメディア

では、そんなZ世代は日々どんなメディアを用いてどのように情報を見つけているのでしょうか。
Z世代が使うメディアトップ4について、Insider Intelligenceでは「National Tracking Poll #2211008」というレポートから以下の調査結果を報告しています。

Z世代の88%がYouTubeを使用しており、次にInstagram(76%)、TikTok(68%)、Snapchat(67%)が続きます

上記の結果から、Z世代が好む/使う主なメディアは、

Instagram/Tiktok/Snapchat/Youtube

であると考えることができます。
※上記は米国での調査結果であり、日本ではSnapchatがLINEもしくはXにあたると思われます

ピンチはチャンス!

さて、ここまででお分かりの通り、Z世代とライブスポーツの特性をみるとそれらはなかなかマッチングしづらいということ、加えて、Z世代はかなりハイレベルなデジタルリテラシーを持っていることがわかります。
このことから、現状としてZ世代がスポーツ観戦から離れているのは、スポーツというコンテンツがデジタルネイティブ度の高いZ世代による情報取得フローの中でこぼれ落ちている確率が高いから、と考えます。

【考察①】Z世代の重視する価値観にマッチすればよい

「両者がもつ特性からするとマッチングしづらい」と述べましたが、スポーツにとって”共感”は遠い価値観ではありません。
野球に詳しくないのに夏の甲子園の特集で目に涙がにじんだり、フィギュアスケートを見に行ったこともないのにオリンピックでの演技に感動した、そんな体験をしたことがある人は少なくないと思います。

「共感」はZ世代をスポーツ観戦に取り込む一つのヒントであると考えられ、これを実際に活用して実践しているチームや企画も多く存在します。

例えば、Bリーグ最速で登録者数10万人を突破した川崎ブレイブサンダースのYoutubeは「バスケ」にこだわらない動画によってZ世代の関心を集めることに成功しました。
例)体力テスト、マリオカート、ドッキリ等

また、スポーツチーム発信コンテンツとして増えている裏側=INSIDE系のコンテンツについて、その始まりは「Formula 1: 栄光のグランプリ」(英題:Formula 1: Drive to Survive)といわれています。競技だけでなくその裏側や人間関係にフォーカスしたコンテンツは目新しく、35歳以下を中心に7,300万人の新たなファンを獲得したと推定されています。

スポーツを好きな人ほど、「スポーツの魅力を伝えたい!」という気持ちが強いですが、むしろ、一旦競技から離れてZ世代の日常に関心を持ってみることがZ世代をスポーツ観戦に取り込むための近道かもしれません。

【考察②】Z世代の情報処理戦争で生き残る

Z世代は「8秒」で興味を判断すると先述しましたが、彼らは何も考えずに情報をスワイプし続けているわけではありません。
彼らは大量の情報の中で自分の好みの情報をブックマークする能力が長けているのです。
つまり、Z世代をスポーツ観戦に取り込むためには、そのブックマーク候補に残ることが必要といえます。

では残るために何が必要なのか?筆者は下記がポイントと考えます。

「短尺」の中で「共感」を伝えること

下記は、横浜ベイスターズの「短尺」コンテンツの例です。

@baystars_official

あなたの推しイケメン選手は? ベイスターズが誇る魅力溢れる選手たちをご紹介! (尺の都合上で一部の選手のみの掲載となっております!🙇‍♂️) #晒してみた #イケメン #プロ野球選手 #baseball #ガルフェス #baystars #ベイスターズ

♬ オリジナル楽曲 - 【公式】横浜DeNAベイスターズ - 【公式】横浜DeNAベイスターズ

短尺動画といえばTiktokですが、もはや動画の頭には「スポーツ」「野球」といった要素を入れないことがZ世代の興味判断オーディションに生き残ることに繋がっていると考えられます。

最後に

ここまでお読み頂いた皆様に感謝申し上げます。
Z世代と聞くと何か自分とは違う、理解しがたい、といった印象を持たれる方も多いかと思います。
しかし、Z世代のこと、スポーツのこと、それぞれを知り、それぞれの世界で何が起こっているのか、何が好まれているのかをキャッチすることで、Z世代×スポーツの可能性は無限大に広がると考えています。

堂々と言うことではないかもしれませんが、筆者はスポーツを「する」側ではなく、完全に「みる」側の人間です。
そして、帰り道にはコンテンツを選ぶことさえ面倒に感じるため、検索せずに自分の趣味嗜好にあった動画を自動再生してくれるTiktokを見ながら帰る、まさにZ世代です。

ここまでをお読みいただくと、完全にスポーツに興味のない人だと思われているかもしれませんが、筆者は、「スポーツを見るのが好きだから」という理由だけでスポーツビジネスを学ぶために大学受験をしたほどにはスポーツ、そしてライブスポーツが好きです。
だからこそ、Z世代がスポーツ観戦から離れている現状をなんとかしたい、と思っています。
皆さんには、「Z世代はスポーツを拒んでいるわけではない」ことをご理解いただけたら嬉しいです。

Z世代は生まれた時からデジタルに親しみ、「SNSを活用」するのではなく、「常にSNSと共に」生きています。そんなZ世代は、昔のTVのように、ひとりひとりの個人がそれぞれのコミュニティ内で、さらに自身のコミュニティを超えても絶大なメディア力、拡散力、共有力を持っています。
さらに、

人口の多くを占めるZ世代を上手く取り込み、Z世代のメディア力をフル活用できたとしたら・・・?

Z世代のトップコンテンツがスポーツ、スポーツ観戦になったとしたら・・・?

皆さんはどんなスポーツの未来を創造されたでしょうか?皆さんが想像された数だけ可能性があると思うと、スポーツにはまだまだ大きな未来が待っていると思います。Z世代×スポーツの可能性をさらに大きくすべく、今後の動向を引き続き追いかけていきたいと思います。

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