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球団保有による街づくり|THE BASEスポビズレポート#01

3月19日にスポーツビジネスアカデミー|SBAが主幹するオンラインサロン THE BASEのコミュニティースペースLibrary THE BASEにて「球団保有による街づくり」をテーマにミニワークショップが開催された。
スポーツビジネスアカデミー|SBA 荒木重雄代表理事と杉原海太理事がオンラインサロンメンバーと共に球団保有による街づくりに関して、2時間に渡り議論を交わした。

◆概要
DeNAグループと横浜市の包括連携協定をふまえ、球団やクラブを活用して親会社やネーミングライツホルダーがどのように街づくりに関与出来るかを議論。スポーツの成長産業化のヒントに成りうるか?
●スポーツビジネスのこれまでの発展とこれから~スポーツビジネス3.0~
●DeNA,横浜DeNAベイスターズ,横浜スタジアムと横浜市の包括連携協定(I☆YOKOHAMA協定)の事例を構造的に分析
●公共財としての球団・クラブ、スタジアムを活用し、自治体と連携することによって企業がどのように街づくりを行うか
●ネーミングライツを活用した街づくりへの関与
●球団のブランド力を活かした地域経済の活性化

スポーツビジネス3.0

スポーツコンテンツがビジネスツールとして商業利用され始めたのは、1984年のロサンゼルスオリンピックからだ。"商業五輪"として成功を納めたことで、チケッティング、放映権、スポンサーシップ、ライセンスの4大事業がスポーツビジネスの教科書として定着した。これは主にメディアを中心とした戦略で、今でも日本のスポーツ業界はこの「ロス五輪モデル」を一つの教科書として活用している。これをスポーツビジネスの1.0だとするならば、2.0はファンを起点とした「箱(スタジアム)ビジネス」。米国メジャーリーグでは各球団がボールパーク構想を掲げ、1998年から2017年までの約20年間で17個のスタジアムが新設された。チケット、ファンクラブ、コンセッション等を連携させることでファンサービスを向上させる、いわゆるCRMを導入することで収益を増加させた。日本においても、多くの球団・クラブがCRMを導入し、スタジアムも指定管理制度の活用や買収によって球団とスタジアムの一体経営が進められてきた。そしてこれからのスポーツビジネス3.0時代に求められるのは、1.0、2.0で築いてきた土台を活かし「スポーツを活用する」視点だ。

◆スポーツビジネスのこれまでの発展とこれから
スポーツビジネス1.0
「ロス五輪モデル」
チケッティング、放映権、スポンサーシップ、ライセンスの4大事業が一つの教科書的存在に
スポーツビジネス2.0
「箱(スタジアム)ビジネス」
メディア視点からファン視点へ。スタジアムを中心としたファンビジネス
スポーツビジネス3.0
「スポーツは活用される時代へ」
スポーツ×〇〇、他の産業との掛け合わせ

スポーツビジネスは掛け算の産業、都市経済との掛け算が成長産業化の鍵となるか?

2016年に政府が発表した日本再興戦略の中でスポーツの成長産業化がアジェンダとして掲げられ、2015年時点で5.5兆円だった市場規模を2025年までに15兆円にすることが目標として掲げれた。これに関しては、SBAでも度々議論を重ねてきたが、今回は「街づくり」という切り口でどのようなアクションが起こせるかを考えたい。そもそもスポーツ業界は他産業との掛け合わせで成り立っている事業構造がある。チケッティングやグッズ・ライセンス、放映権、スポンサーシップなど球団やクラブの収益構造を分解すれば明白だろう。では、さらなる成長のためにどの産業との掛け合わせが考えられるか。その一つにスポーツ×都市経済にチャンスがあるのではないだろうか。課題が山積する地方都市において、球団やクラブの親会社・ネーミングライツホルダーがスポーツというコンテンツを活用して街づくりに関与することで、自治体、球団・クラブ、地域、そして企業が潤う仕組みを作れればスポーツの成長産業化の一つの鍵となるかもしれない。

自治体が保有する施設を借りることが前提だったこれまでのスポーツビジネス

従来の日本のスポーツビジネス、特に球団・クラブ経営においては近年でこそソフトバンクホークスの「ヤフオクドーム」や横浜DeNAベイスターズの「横浜スタジアム」など球団とスタジアムの一体経営が行われる事例が増えてきたものの、基本的には自治体の施設を賃貸するモデルが主流だった。従来はこれが経営面においてDisadvantageと捉えられていたが、今回のDeNAグループと横浜市の包括連携協定は自治体との関係性をAdvantageと捉え球団やスタジアムという公共財を活用することで親会社が街づくりに関与した画期的な事例だと言える。

スタジアム・アリーナの運営モデル
●賃貸モデル(行政・民間施設の利用)
●関連会社モデル(親会社等関連会社の民間施設の利用)
●事業権獲得モデル(指定管理等)
●自営モデル

I☆YOKOHAMA協定の新規性

今回のDeNA,横浜DeNAベイスターズ,横浜スタジアムと横浜市の包括連携協定で画期的だった点は、先ほども述べたように親会社であるDeNAが球団・スタジアムという公共財を活用することにより街づくりに関与している点だ。本来であれば球団、スタジアム、そして自治体の三者が協力関係を築くことにより地域活性を行うというパートナーシップが王道だと考えられるが、親会社がスポーツというコンテンツを通し街づくりを行う事例は世界を見ても非常に稀であると言える。(そもそも親会社が球団を保有している事例が欧米にはほとんど存在しない)
その点で、今回の事例は日本のスポーツビジネスにおける事業環境の中で新たなモデルとなりうるかもしれない。

(公開情報より筆者作成)

ネーミングライツの活用

プロスポーツの興行に使用されるスタジアムやアリーナに「ネーミングライツ」として企業の名前が付けられるケースが増えてきた。
(下記画像はZOZOマリンスタジアムの事例)
今回注目したいのは、そのネーミングライツの活用方法だ。ZOZOマリンスタジアムの例では年間3億1千万の10年契約、総額31億円と日本のスタジアム・アリーナとしては比較的長期の契約となっている。このうちの50%が自治体である千葉市に支払われる予定である。企業は当然プロ興行のコンテンツを媒体とする広告としてネーミングライツを買うわけだが、先ほど述べたように自治体の施設を賃貸で借りている構造的な事情からネーミングライツの契約金の一部は自治体に支払われている。しかしながら、ほとんどのケースで自治体を活用した施策が行われていないのが現状だ。DeNAのように親会社として自治体と連携するケースだけでなく、ネーミングライツホルダーが球団・クラブといった公共財を介して街づくりに関与するのも良いのではないだろうか。

画像参照:日経新聞電子版より

球団のブランド力を活かした地域経済の活性化

冒頭で触れたように、地方には課題が山積しているが、その一つに地域経済の衰退があるだろう。人口の流失など様々深刻な問題がある中で、中小企業の事業継承もまた大きな問題である。地方では事業を継承する経営者人材の不足が深刻化している。そこで、球団・クラブと地方銀行、VCなどが共同でファンドを設立し、経営者人材と資金そして球団のブランドを地方の中小企業に提供することで、本質的な地方経済の発展が望めるのではないか。既存の事業に球団のブランドを提供することで、事業者はこれまでリーチできていなかった球団のファンを顧客とすることが出来る。球団としてもファンのロイヤリティーを高め付加価値を提供することで、球団事業への相乗効果も見込めるだろう。もちろん様々な障壁も考えられるが、スポーツの本質的価値である「ブランド力」を活用することで球団としても新たな収益の柱になり、公共財としての存在価値を高めながら本質的な地方創生の施策としてスポーツを活用出来るのではないだろうか。

SBAのオンラインサロン「THE BASE」では世の中のスポーツビジネスの事例などを様々な切り口から深掘りし、オンラインとリアルの両軸でサロンメンバーと日々議論しています。これからスポーツ界で働くことを視野に入れている方、スポーツを活用して何かアクションを起こしたい方は是非覗いてみてください!!
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