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ユニフォーム権利を切り分けての価値提供について【実践!スポーツビジネス道場#22】

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ポッドキャスト番組「実践!スポーツビジネス道場」の文字起こし記事です。
「実践!スポーツビジネス道場」は一般社団法人スポーツビジネスアカデミ(SBA)の公式オンラインサロン「THE BASE」が毎週木曜日に配信しているポッドキャスト番組です。
スポーツビジネス界で奮闘する若手ビジネスパーソン、酒井翼さん(東京都社会人リーグ2部所属のサッカークラブ「TOKYO.CITY.FC」でスポンサー営業を担当)が日ごろの業務での葛藤や悩み、アイディアをスポーツビジネス界の第一線で活躍し、SBA代表理事を務める荒木重雄さんに壁打ちし、成長していく様子をお届けしています。

酒井)皆さんこんにちは。前回サプライヤーに関する考え方について少しお伺いさせていただきましたが、荒木さんがご存知の事例があるとの事なのでそちらを伺えればと思います。

荒木)前回話した例ね、結構深い話なのでもちろん答えなんて当事者同士しかわからないので推測も含めてこんな感じなんじゃないかなという形で話できればと思うのね。
この事例って単純にマジェスティックとかナイキとかMLBだけの話じゃなくてスポンサーシップの一つの考え方のベースのヒントになるような話なので共有したいなと思っているんですね。
何かって言うとスポンサーシップって言うまでもなくクラブサイドの目的とそこにお金を支払ってその対価を得るスポンサーのやりたいことがあるよね。それって本来の目的って違うじゃない?クラブ側からするとそのアセットを販売して収益化して事務局で使うとか。いろんな目的に使うからお金もいただきたいし、そこに支払う側はクラブが持っているアセットやプロパティを使うことによって自らのブランディングやプロモーションや販促などユーザーに対してロイヤリティを高めていくという目的があるのでその言うまでもないよね。
今回話す内容はそこの部分を明確に、明快に、如実に表したような事例で。MLBからすると今までって他のスポーツもみんなそうだけど、サプライヤー契約のカタチって選手が着用するユニフォームやギアって大事な大事なプロパティの権利の一つ。普通の発想だとユニフォームをどのメーカーにすることによってどれだけのスポンサーフィー、どれだけのサポートを受けられるかというところが一番デカい所。メーカーからするとプロのスポーツのトップスポーツに関わらず、チームのユニフォームにブランドを冠してブランディングを活用してそこで、ブランドの強化や売り上げを挙げていくという意図があって整理するのが基本的なサプライヤー契約。
今回の契約はもちょっと踏み込んだ話で。どういうことかというと今回の結果から行くと物はマジェスティックが作ってます、ただマジェスティックの物に対してナイキのブランドがついてますということ。日本で言うとミズノのユニフォームにデサントのマークロゴがついて選手が試合しているということになるので一見信じられないような話。これを表面から見るとMLB的に言うと権利を分けたなあと。実際に作るものと広告の価値を分けて中の権利はマジェスティックに、外の看板の権利はナイキに販売したなあという見方できるじゃない?考え方的にはアリだよね。でも、どうも、そうじゃないんではと。通常サプライヤーの権利っていうのはお金をいただいてユニスポンサーを付け、その中にサプライヤーの権利として販売する権利があるので、そのブランドを関したユニフォームをそのチームのファンに買ってもらうと。そこの売り上げも入るからサプライヤーからすると2つの柱があって、1つはそのユニフォーム自体が売れること。もう一つはブランディングとして使っていくと。
リーグ側・チーム側はどうなっているかというと、ユニフォーム販売すればロイヤリティが上がっていきますと。直接的には彼らのブランドが高まることに、関節的にはあるかもしれないけど直接的にリーグにメリットがあるわけではない。間接的にはブランドが上がることによって商品が売れるとかはあるかもしれないけど。
もう一つの切り口っていうのが、最近注目されている「ホットマーケット」。

酒井)ホットマーケット?

荒木)新しいマーケットが合って。これはスポーツならではなんだけど、長いリーグをやっていると、予期せぬイベントも含めたファンが熱狂する場面がありますと。ある選手の記録のかかった試合とか。あるいうは引退試合とか急な引退発表とか、決戦の日とか、優勝決定の瞬間とかリーグチャンピオンになった瞬間とか、移籍直後の最初の試合とか、いろんな山ができるときがあるでしょ?こういうのってファンからすると最高に高揚する瞬間。
そこってスポーツの年間のリーグ戦を見ても一番高揚するところなんだよね。一年長いから一喜一憂するものの、やっぱりスペシャルってある。この試合ってところ。この試合という時に言い方変えると一番財布が緩む。勝ったときの売り上げは高いし、負けたときの売り上げは低い。これは経験値的に…。こういう一番アツい試合の時に、どれだけ財布を緩ますことができるか。こういう大きな山の事を「ホットマーケット」っていう。
このホットマーケットにどれだけ商品を投じられるかっていうのがリーグ、チーム的にデカい話。一番大きい話だと優勝の時。優勝が決まった瞬間に優勝グッズをどれだけ短期間で作れるか、あるいはその選手が引退するって急にきまった時、翌日にそのための商品をどれだけ作れるか、在庫リスクを負えるかというところ。こういう手間のかかる、製造ライン的にも何十万、何百万ロットを作るんじゃなくて、数百とかの場合によっては数十とか数千とかのそういう需要ってホットマーケットの大きさって変わってくるけど柔軟に対応できる生産ラインを持っていないと対応できないじゃない?それができないと営業機会ロスになる。そういうのをやると結果的にはリーグ・チームにはお金が入るチャンスが本当はある。スポーツのグッズって普通の買い物と違って、ファンロイヤリティを高めるツールでもある。記念に持っておきたいみたいな、それってファンとのエンゲージを高めたりロイヤリティを高めたりするツールでもある。そういう商品があることによってより強いエンゲージメントを持たせることができるという事があるとそれって大事だよねとなる。
そうするとナイキがもしサプライヤーやったとしたら、極端な話、これは想像の域だけど、ナイキはホットマーケットにそんなに興味が無い。なぜならナイキはとにかくブランドを作って、ブランドを活かした形でブランドを世の中に浸透させて、MLBといえばナイキって言うような。ユニフォームを作るとかグラブだなんだという時に、タイガーウッズがやったナイキブランド戦略じゃないけど、そういうブランド戦略をやって大きなマスで取っていくっていうマスマーケットで戦うというのが彼らの本業だから、こまごまとしたチームの優勝グッズに命を懸けている会社ではない。

酒井)サプライヤー側からするとホットマーケットは大きな市場ではないという事ですね。

荒木)そういうこと。ホットマーケットが本丸の市場じゃないから、そこまでは出来ないし、そこは興味ないということはあるかもしれない。
一方でマジェスティックはファナティクスに買収されて、ファナティクスのビジネスモデルってホットマーケットに世界一強い会社なんですよね。生産ラインも含めて。だから昔のマジェスティックはそうじゃなかったかもしれないけど、ファナティクスに買収された事によって、そういうマーケットが主流になったという事は、MLBからしたら両方のやりたい事を満足させる方策は無いかって考える。そもそもナイキがそこに興味ないんだとしたら、ナイキにはナイキが一番興味のあるユニフォームスポンサーでロゴを掲出しましょうよと。ホットマーケットに一番得意な消費者ビジネスに興味があって売り上げを上げたいマジェスティックはじゃあその中身を作ってホットマーケットに対応してくださいというディールが通用するのであれば、みんなそれなりに嬉しいよね。
だから単純に権利の問題だけではなく、スポンサー自身が得意なところとかやりたいところをうまく掛け合わせる事によって、三方良しじゃないけど、今まで一対一の関係だったところが必ずしもそうではない新しい形で市場が大きくなりお金の流れも増えていくみたいな。
これ日本でも起きてる。大きなブランドの会社で、こまごまとした100、200とかをすぐそのブランドで作れるような体制ってそもそも無い。1か月かかりますって話になる。そうなると熱冷めちゃうので、かといって、ウチでできないから他でやっていいですよとこれもまた言いづらい。なぜならばせっかく権利を持っているのにその権利を他の会社に渡すわけにはいかないよねっていう。言うならば飼い殺し状態にある。
これは昔のインターネットとTVの戦争と同じ。テレビはインターネットが出てきて敵だった、最初はね。でもインターネットの専門店じゃないのでテレビを殺してまでインターネットに振り切れないし、やろうと思えばできるけど、テレビスタンダードで考えるとコストも高いし、なかなかインターネット配信できない時代があった。ただせっかくテレビで高いお金を払って権利をもらっているから、インターネットの権利を買って放送しないという選択をする飼い殺しにする時代があった。
これはオールライツという放映権の中にIPも入れて、IP配信はしないという選択肢をする事によって、IPの事業者が入ってこれないようにする。球団側からすると丸っと大きなお金をもらうから仕方ないと諦めていた。これだと誰かが不幸になる。たまたま家にいなくてテレビが見れなかった人は本当は技術的には見れるのに、大人の事情で見れなかった、みたいな。それってファンを増やす行動になっているかというと必ずしもなっていないと思う。
ここでいうとテレビ局、インターネット配信会社、ファン、球団、リーグこういう人たちが一番ハッピーなシナリオっていうのはどういう事かって考えるきっかけにこのケースはなるのかなと。結果的にそういう流れでお互いの強みを活かしながら時代は作られてきたわけだけど、今は当たり前のようにTV局も配信業者も真っ向からケンカしてるわけじゃなくてうまく組みながらやっているわけだけど。リーグとかチームのやりたいことと、スポンサーさんのやりたいことをうまく調整しながら結果的にはファンがどうやったら喜ぶか、結局ファンが育たなければスポンサーもリーグもチームもダメなわけだよね。全体の市場が大きくならないワケなので。ちっちゃい所の取り合いじゃなくてどうやったらπを増やすかという視点でやっているとそういう発想になっていくんだろうな、と。
今回はユニフォームスポンサーの事例だけど、当たり前に思っていた事がそうじゃない組み合わせによって新しい価値を創造できるような、そんな発想になる事じゃないかなと思って。前回話そうと思ったけど話せなかった内容です!話すと長かったのでね!

酒井)ありがとうございます。その権利をどう分けながらお互いの、ただ二社間だけじゃなくて、第三者も含めて価値を最大化させるかというところだと思うので僕らの規模でもスポンサーシップのところでもそうだし、それ以外でも生かせそうな気がします。

荒木)そうだね、半分想像が入ってますからね。こういうことじゃないかっていう、推測も入っているから。ただ推測にしたとしてもそういう考え方が一つ成立するんじゃないかなと思いますね。

酒井)はい、ありがとうございます。


≪第22話 終わり≫

■登場人物
➤荒木 重雄 Shigeo ARAKI

一般社団法人スポーツビジネスアカデミー(SBA)代表理事。
株式会社SPOLABo、株式会社スポカレ代表取締役。2005年に千葉ロッテ球団の執行役員・事業本部長、パシフィックリーグマーケティングの取締役執行役員を歴任。日本サッカー協会(JFA)の広報委員をはじめ、官公庁のスポーツ関連プロジェクトなどにも多数参画。
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➤酒井 翼 Tsubasa SAKAI
J1から数えて8部に相当する、東京都社会人リーグ2部に所属するサッカークラブ「TOKYO CITY F.C.」にてスポンサー営業などを担当。
スポーツクラブで働きながら、1000万円プレイヤーになることを目指し、日々奮闘中。
TOKYO CITY F.C. 公式サイトはコチラ

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日米英に拠点を置き、スポーツビジネス界の第一線で活躍する理事4人が世界の最新スポーツビジネストピックスを発信する「理事会」や、スポーツビジネスの各専門分野に長けたゲストをお招きし、担当理事とのトークディスカッションをお届けする「サロン」など、スポビズパーソン注目のコンテンツを定期的に発信しています。昨今のコロナ禍を経て、オンラインでのコンテンツを強化し、直近のサロンはほぼアーカイブにて配信中!(いつでも何度でもご視聴可能!)
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