P5シリーズのモチーフと各作品のつながりについて(ネタバレあり)

P5シリーズのモチーフとなった神話・宗教とそれぞれのつながりをまとめます。

性質上ラスボスの名前などに触れる必要があるためネタバレ要素あり。

P5無印、P5R、P5Sの3作品についてまとめてます。執筆段階2020/2/25

ネタバレ要素を見たくない人はここで引き返してください。

















最初に

読みやすくするためにかいつまんだ表現をしています。

神話や宗教の描写を正確に行う・理解するガチ解説を目的としていません。あくまでP5のモチーフとして神話・宗教の説明を大まかにまとめています。


P5無印のモチーフはグノーシス主義

グノーシス主義は紀元1世紀頃に生まれ、紀元3世紀〜4世紀で地中海周辺で信仰されていた宗教・思想。

グノーシス主義そのものは様々なバリエーションがあり、また途絶えたりしたため、正確な描写が少なくやや謎が多い。(キリスト教とも同化したり異端化したり複雑な辿り方をしています)

ラスボスの名前はヤルダバアトなのですが、これはグノーシス主義に出てくる偽の神の名前です。

グノーシス主義はユニークな設定を持っています。

・この世は偽の神によって作られた間違った宇宙であり、それが故にこの宇宙の住民である我々は悲惨で苦しんでいるのだという思想。これは反宇宙論と呼ばれてます。

・偽の神は悪であり、悪の神であるからそれが作ったこの宇宙も悪である。それとは別に高次の善なる神がおり、その神のいる宇宙は善なる宇宙である。悪と善がある二元論です。合わせて反宇宙二元論という思想になっています。

人間は悪の宇宙に縛り付けられている肉体と、真の善の宇宙にある霊によって構成されている

・霊というものがあるから、人間の内部には「神的火花」「本来的自己」がある。悪の宇宙にある肉体という偽りの縛りから解き放ち、正しい認知によって本来あるべき存在へと回帰することが救済

善の宇宙から悪の宇宙に縛り付けられている人間たちの認知は間違っているんだよと啓示してくる救済者が訪れる

などの設定があります。

これらはP5無印のストーリーのモチーフにもなっており、偽神ヤルダバアトによって貶められた主人公と人間たちはヤルダバアトの作ろうとする偽の宇宙(悪の宇宙)に縛り付けられるところだったが、イゴールはじめとする善の高次的存在の啓示を受けることによって霊的能力である「ペルソナ」(グノーシスに置ける神的花火・本来的自己に当たる)に目覚め、偽神ヤルダバアトを撃破し、本来あるべき宇宙に回帰できた、救済されたというグノーシス主義をなぞった構成になっています。

またグノーシス主義では「正しい認知」というのが重要なキーワードとなっているので、「P5内の認知訶学」の設定に活かされています。


「ペルソナ」の元ネタは辿ればグノーシス主義に紐付く可能性

ペルソナという言葉自体は心理学者のユングが提唱した人間の外的側面の呼び名が元です。

ですが、ユングは著名なグノーシス研究者でもあった。

結果論ではありますが、ユングの提唱した「ペルソナ」を概念として流用したゲームのそれは、人間の心に内在する超常的なものということでグノーシス主義の霊に近しい発想になっています。


P5Rの三学期分のモチーフはクトゥルー神話

P5Rのラスボス丸喜先生のペルソナはアザトース

アザトースはクトゥルー神話の魔王と呼ばれている原初の神。

P5Rはグノーシス主義だったP5から脱線して、クトゥルー神話と紐づいた構成になっています。

P5Rもストーリーのモチーフがクトゥルー神話の設定が使われています。

・アザトースは思考によって世界を創造する。アザトースの思考が物質化されたことによって世界が構築される。

・思考から構成された世界はアザトースの見ている夢であるとされ、アザトースが眠りからさめたとき、その世界は一瞬にして消滅する。

丸喜先生が書き換えようとしていた挫折のない世界と能力はクトゥルー神話のアザトースの設定そのものをモチーフとしていたわけです。

グノーシス主義をモチーフとした争いの外で別のところからやってきたクトゥルー神話が思考を現実化するという能力を使って別の世界を作ろうとしたという話になります。もちろん主人公たちによって阻止されたわけですけども。


P5Sのモチーフはまたグノーシス主義

P5SはP5無印の続きで、P5Rとはストーリー的な繋がりが一切ありません。現段階ではP5シリーズはストーリーの繋がり方が分かれていてパラレルワールド化しています。

本題であるモチーフに話を戻します。

新キャラクターのAIであるソフィア。

P5Sのラスボスである、AIが変化した偽神デミウルゴス。

どちらもグノーシス主義に出てくる存在です。

デミウルゴスはヤルダバアトの別名でもあり、グノーシス主義内では同一の存在なのですが、P5シリーズの中ではどちらも偽神というポジションで一致しています。

・グノーシス主義では、ソフィアは善なる高次の神の末端だったのが過失により堕落し、そこからソフィアの分身であるアカモートが出てヤルダバアトおよびデミウルゴスを生み出し、ヤルダバアト&デミウルゴスによって悪の宇宙が生まれるという流れ。

・劇中ではプロトタイプのAIであるソフィアを元に改良されたAIのEMMAがあり、それが大衆の願いと結びつき偽神デミウルゴスに変化したという流れ。グノーシス主義のソフィアの分身アカモートが劇中ではEMMAの扱いですね。(一ノ瀬久音がソフィアまたはアカモートかもしれないけど)

P5Sのストーリーはデミウルゴスが生まれるきっかけとなったソフィアにスポットを当てて、グノーシス主義を再びなぞった構成になっています。


P5シリーズのモチーフの流れを図にまとめると

画像1


・P5シリーズがモチーフをどうしていくかははっきり言及されていない。

・ただしP5無印→P5Sとグノーシス主義モチーフが続いてるので後続作品もグノーシス主義に何らかの繋がりがある可能性はある。

・その可能性となるモチーフについても図内にまとめた(一番ボリュームが多くモチーフとして比較的やりやすいのはゾロアスター教じゃないかな)

・もちろん違う神話・宗教がモチーフになっていく可能性もある(クトゥルー神話がまた出る可能性も)

・過去のP4シリーズではモチーフはバラバラ 日本神話イザナミ→ギリシャ神話ミノタウルス(P3陣合流の影響かも)→日本神話ヒノカグツチ

・過去のP3シリーズのモチーフはギリシャ神話ニュクス


P5&P5Sのグノーシス主義モチーフとP5Rのクトゥルー神話モチーフで共通するメッセージ

モチーフとなった神話・宗教は違うが共通しているのは「偽りの世界に騙されることなく目覚めろ、人間を救済しろ」というメッセージ。


P5シリーズで個人的に思うこと

・ペルソナの元となった心理学者ユングに所縁のあるグノーシス主義をモチーフにしているのでP5で原点回帰、色々繋げてきているという印象

・グノーシス主義をモチーフにしてP5シリーズを続けるのは元ネタのボリューム的にちょっときついから、またクトゥルー神話モチーフでP5R2とかしてくるんじゃないか?


P5シリーズ続編が出たらまた追記していきます(執筆段階2020/2/25)

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