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スプラシリーズの統括と改革の道筋

スプラシリーズの道のり

スプラ1

革新的でカジュアルなシューターゲームだった。
新しいゲームだったため、競技性はそこまで成熟しておらず、プレイヤーは手探りで楽しんでいる状態だった。
その過程で、「ルールごとにウデマエを分けてほしい」「最高ウデマエに到達した後のやりこみ要素が欲しい」といった声が出るようになった。
もともと勝ち負けがはっきりした対人戦が中心であり、見た目はカジュアルながらも中身は競技性の高いデザインだった。
しかし、多くのプレイヤーがカジュアル層からスタートしていたため、この時点ではゲームデザインの課題はあまり問題視されなかった。

スプラ2

Wii Uの不調を受け、Nintendo Switchが急遽登場。
それに伴い、急ピッチで開発された続編。
スプラ1の正統進化として、競技性をさらに高める方向へ進んだ。
もともとスプラ1は対人戦が中心で、勝ち負けが明確だったため、スプラ2はその要素を素直に強化した作品となった。
ルール別のウデマエが導入され、さらにXマッチが追加されることで、レート戦やランキングが実装された。
シリーズの中でも特に競技性を重視した作品であり、同時に「レートが高ければ注目される」という土壌を育んだ。

スプラ3

スプラ2の競技性のあり方を見て、運営は「カジュアル層へのバランスが取れていない」と判断し、その是正を図った作品。
カジュアル層向けに簡単に上がれるランクマッチ、狭いステージ、称号、勲章、ロッカー、子供にも納得感のあるレート増減の仕組みなどいくつかのテコ入れが行われたが、その多くはカジュアル層の定着や継続して遊ぶことには繋がらない的外れな浅い措置であり、競技性にも悪影響をもたらすものがあった。
その結果、ステージやマッチング仕様やレート増減などの兼ね合いにより中途半端なバランスのゲームとなり、スプラシリーズのゲームデザインに根本的な課題があることが露呈した。
しかし、運営は効果的な解決策を打ち出せず、根本的な問題を克服することもできなかった。
結局、問題を解決しないままスプラ3はアップデート期間の終了を迎えることとなった。
また、「レートが高ければ注目される」という土壌が悪い方向へ作用し、注目を集めるために問題行動を繰り返す配信者が増えたことで、コミュニティの課題も浮き彫りとなった。

その先はどうなるか?

ここまでがスプラシリーズの一連の流れとなる。現時点でスプラシリーズは完全に衰退しているわけではないものの、次の一歩が求められる状態にある。現実的には、もう一度だけチャンスがある状況に近いと言えるだろう。そのため、もともと競技性に強く依存していたゲームデザインを見直し、どのようにカジュアル層にも楽しめる、バランスの取れたゲームへと生まれ変わるのかが今後の課題となっている。

単純に考えれば、例えば『スマブラSP』や『ストリートファイター6』のように、オフラインでも楽しめる膨大な成長・収集要素を備えたストーリーモードを中心に据え、競技性を薄める方向で再設計するのが最も素直な改革だ。カジュアル層向けに、長期間楽しめるコンテンツとしてこれを用意する形が考えられる。こうした要素は対人ゲームでも効果的で、カジュアル層と競技性を重視する層との住み分けにも寄与しやすい。もちろん、スプラシリーズの変革には他にも多くの可能性が残されており、もっと大きな変革が求められることも考えられる。たとえば、さまざまなゲームモードが搭載される可能性もある。

また、総括すると、スプラシリーズの一連の流れは、ゲームデザインにおける根本的な改革がうまくいかず、結果的に多くの課題が残されたことを示している。この結末は非常に重く、どこかで運営体制を大幅に変更する必要があるだろう。具体的には、開発や運営チーム内での人事異動や、新たな視点を取り入れるための体制変更が行われる可能性が高いと予測される。

さらに、残る課題は二つある。まず一つ目は、「レートが高ければ許容される」という風潮が、配信者の行動に与える影響だ。もし開発研究期間が5年など長期にわたるようなことがあれば、この風潮に依存している配信者たちは生き残れず、最終的には淘汰されると考えられる。適応力があり、他のゲームに移れた配信者のみが生き残り、次のスプラシリーズで再登場する可能性があるだろう。

次に、公式大会のあり方に関する課題だ。野上Pが何度も言及しているように、「現代でも子供たちが自主的に集まって交流できるゲーセンのような場を作りたい」という思いがある。これは個人的な思い入れとしても重要だが、もしこれが任天堂の総意であれば、公式大会の意義について再考する必要があるだろう。カジュアル層にも楽しめるゲームデザインに変化した場合、公式大会がその役割をどのように果たすかは今後の大きな課題となる。現時点ではその解答が見えづらく、どういった方向性を目指すべきかは任天堂内で議論を重ねる必要がある。

こういった課題は残るものの、目指すべき方向性自体はシンプルである。それは、任天堂の戦略に合った全年齢対象のゲームとして、カジュアル性と競技性のバランスが取れたゲームデザインを実現することだ。これまでスプラシリーズは、そのゲームデザインが競技性に偏りすぎているという課題を正しく認識し、克服できていなかった。しかし、これからはその課題をしっかりと受け止め、根本からカジュアル性をどのように主軸に取り入れるかを見直す時が来ているだろう。もちろん、その結果として、競技性を愛していた既存のプレイヤーが一部離れてしまう懸念もある。しかし、総合的に見れば、全体のバランスは是正され、任天堂やプレイヤーにとって望ましい形になると考えるべきだ。それがいつ実現するのかは分からないが、我々はその時が来るのを静かに待つのみである。

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