年上の後輩Ⅳ
北海道は10月にもなると、紅葉が山を降りてきてどんどん色づき始める。
前々から豊平峡ダムには行ってみたかった。でもまさか「年上の後輩ちゃん」まで来るとは思わなかった。
ちょっと、嬉しかったけど。
遂に当日になった。朝10時。札幌駅のロータリー。
自分は泊りの仕事が終わってから車で二人を迎えに行く。
「紺色の車に集合ね!」と伝えてある。自分の同期はちゃんと来たが、肝心の後輩が待てど暮らせど来ない…
数分後、後輩がやっと現れた。
職場では髪をしっかりまとめていたので気づかなかったが、私生活ではセミロングを下ろしたままの後輩。
なにか、別の魅力がある気がした。
早速豊平峡ダムに向かう。
市内から豊平川の河川敷を走り、石山通を目指す。
自分の同期と後輩は久しぶりだったらしく、お互いの職場の話で盛り上がっている。
とても楽しそうだ。そんな姿を見ているだけでも楽しくなってくる。
豊平峡ダムの紅葉はとても綺麗に色づいていた。
路肩には数日前に降った雪が残っている。紅葉とのマッチングも最高だった。
色づきに見とれていると写真を撮り忘れてしまうほどだ。みんなで来て、この感動を共有できるだけで嬉しかった。
お昼は豊平峡温泉のカレーとナンを食べに行った。
自分が前から食べてみたくて、二人にリクエストをしていた。
しかし自分としたことか、後輩が矯正をしているのを忘れていた。医者に「カレーは汚れやすいからダメ」だから止められているって前に話をした気がする。
結局三人揃ってカレーとナンを食べることにした。後輩も「美味しいから大丈夫です」なんて言ってる。美味しければ矯正が汚れてしまっても大丈夫なのか…?
その後は少し市内を散策しつつ、自分が前から行っているパフェを食べに行くことにした。
マンションが立ち並ぶ通りを走行中、急に後輩が「あっ!ここです!ここ!」と言い出す。いや、パフェはまだまだ数十キロ先だよ…?
「いや!ここ!私の実家です!」
1ミリも聞いていないのに急にこんなことを言い出したりする。全く、不思議だ。
その後のパフェも大満足だった(主に自分が)。
時が過ぎるのは早いもので、あっという間に解散の時間に。
髪を下ろした姿も、時々入ってくる天然っぽい発言も、なんだか落ち着くなと思った。
けど絶対うまくいく恋ではないことくらいわかってた。だって、彼氏がいるんだから。