ものすごく小さいけれども、その影響は絶大なるものたち
病気の動物の手術をしていてよく思うことがあります。
脊椎の椎間板物質が飛び出してしまい、脊髄を圧迫して神経障害を起こしてしまう椎間板ヘルニア。
胆嚢の粘液物質が総胆管につまってしまう胆管閉塞。
尿管に結石がつまってしまう尿管閉塞。
などなど他にもあります。
こういった疾患を治療するためには手術が必要になることがあり、場合によっては命にかかわることもあります。
何が言いたいかと言いますと、
これらの疾患に共通することは、手術で取り出したものは『とても小さい』のです。
そのものすごく小さいものを摘出するために、体の深部まで手術を進めて行かないといけません。
椎間板物質を摘出するためには、脊椎の骨を削らないといけません。
胆管閉塞は摘出というかたちにはならないかもしれませんが、肝臓の奥まで操作して閉塞を解除しないといけません。
そして尿管結石は体の深部の大動脈や大静脈の近くです。
毎回、摘出したその小さな物質を見るたびに
『こんなわずかなもののために、こんなにも動物が苦しんでいたのか』
『こんな小さなものを摘出するために、ここまでの手術をしなければいけないのか』
と思います。
私だけかもしれませんが(笑)
一方、体に大きな腫瘍が出来ていて、それを摘出する手術をした時は納得感があります。
その腫瘍につながる血管などの処置もしないといけないし、それだけの手術をしなければ取り出すことは出来ません。
だからといって、腫瘍の方が良いというわけではありません。
腫瘍の場合は、術後の再発や転移の心配もありますから。
でもやっぱり前者の場合は納得感がね……
しつこいようですけど、やっぱり毎回
『こんな小さなもののために…』と思ってしまいます。
私がONE PIECEの悪魔の実の能力を得られるとするならば、やっぱり『トラファルガー・ローのオペオペの実』ですかね。
あの能力で、病気の原因となっている体の中の物質を、体を傷つけずに摘出したいです。(笑)
そう思っている外科医は私だけではないはず!
まぁそんなことは出来ないので、どんな手術でもしっかりとやって、術後に動物がちゃんと良くなってくれるのが一番ですね。