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海を舞台に世界を旅する 12  NZ編

仕事を辞め、英語も話せず、大男が、情熱と好奇心で海を舞台に世界中を巡るノンフィクション青春ストーリー。 笑
思いっきり笑い、たくさん泣いて、仲間と共に世界の絶景に出会います。僕の大切な3年間にわたる冒険のお話

当時の書きためたノートや日記、メモをもとに書いていきます。
はじまりはじまり。


ロバトン島に来て数日経った。

この島に家は一軒、人は3人しかいない。この島は国立の自然公園になっていて、ジムとテリーはここの管理人でもある。

島での1日は午前中は忙しく、午後はのんびりと過ぎてゆく。

今日は島での一日のお話。


朝起きて全裸での海水浴を終えてスッキリしたら、簡単な朝食。手作りのジャムや貝の瓶詰め、島の畑で採れた野菜や野草をサラダにして食べる。チーズなどは街で買ってくる。

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朝食を終えたら、早速仕事に取り掛かる。なんたって、住むのも食事もお世話になっているんだ。それなりの働きをしたいと張り切る。

与えあられた仕事は、島の反対側にたくさん落ちてる松ぼっくりを拾ってくること。メルヘン!

冬のストーブの焚き付けに良いそうだ。身長185cmの僕がすっぽりと入るくらい大きな袋を渡され、途中崖があるから気をつけてと言われ、松ぼっくり拾いの場所に向かう。10分ほど山道を上がると松の林に着いた。日本で見るよりも松ぼっくりがでかい。気分は子供の頃に読んだ物語の主人公。

ここの松はまっすぐ伸びて、立派だ。この松、帆船のマストの材料になる。日本のイメージする龍のように曲がった松とはちょっと違うまさにマストになるような巨木だ。

そこら中に松ぼっくりが落ちているのでこれは楽勝だと、夢中で拾う。もう少しで袋がいっぱいになる時、足を止めると、目の前に崖。もちろん柵などは無いからなんか肝がぞわぞわする。崖を見下ろしながらしばらく休憩。本当に綺麗な景色だ。

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帰りはかつげないくらい大きくなった袋、中身は松ぼっくりなんでそんなに重く無い。口を縛ってころがして山を下ることにした。
これを三回ほど繰り返すと、松ぼっくり入れの木箱がいっぱいになり、次の仕事に移ることにした。

次は薪割り。

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薪割りは初めてだったけれど、思ったよりも木の薄い輪切りを割る簡単なものだった。船乗りの歌、シャンティーを少し教えてもらっていたので是非歌いたかったけど、まだよくわからなかったので、日本の歌や、高校の時の寮歌をお大声で歌って楽しく割れた。寮歌は7曲もあったのに、どれも働きながら歌うには合わない。あんなに必死で覚えさせられたのに残念だ。これからの船乗りにはシャンティーを教えるべきだ。働きながら歌うにはピッタリ。

薪割りは集中力が高まって、気持ちがスカッとする。映画で嫌なことがあると薪割りするおじさんいたよね。誰だっけ?今ならあのシーンの気持ちがよくわかる。

午前中に3人とも、それぞれの仕事や、作業を終わらせてしまい、午後は好きなことをしながら過ごすこの日常はとても効率が良く、集中もリラックスもバランスが良くて本当に素晴らしいサイクルだと思った。日本人は働く時間が無駄に長いこと、実はあんまり効率が良く無いこと、本当に効率が必要な現場の職人さんは早く働いてさっさと仕事を終える事に気づいた。

美味しいお昼を食べたら、午後は好きに過ごす。ジムはヨット作り、テリーは畑の手入れや釣り。僕は毎日ジムのヨットの手伝いをした。なんとこのヨット、全てジムの手作り。エンジンのついていない木造船で、設計図を元に約6年作り続けているんだ。

シビれるぜ、ジム。超かっこいい。

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恐れながら滞在中にロープを止める部品のクリートを作成した。

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まだ日が高いうちにヨットの作業は終わるので、テリーの釣りに一緒に行ったり、シーカヤックで島の反対側まで行き、マッソー(烏貝)を取りに行って、夕食を作ったりした。

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夕暮れになると、ビール(冷えてない)を渡してくれるので、そいつを庭の芝生で飲みながら夕日を眺める。

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夕飯の後は、少しだけラム酒を飲みながら、ジムの帆船の講義を聞く。ジムの本棚は船の本でいっぱいだ。テリーは教師だったので、僕に英語の勉強を教えてくれた。二人とも本当に優しく、親切にしてくれた。

かつて世界中に日本の船乗りがいた事、グリーンピースの船で船長をしていた頃の話、クジラの話、ニュージーランドの歴史、ニュージーランドの鳥の話、星の話、わかりやすく、たくさん教えてくれた。

クジラを食べるのが好きだということは黙っておいた。

もう、このままここにいたい。本当にここにいたい。

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そんなある日、島の沖をものすごい速さで帆船が横切る。

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トップスルスクーナーの特徴である横帆のヤードを目一杯に切り、まさに海鳥が風に乗るように帆走る。

R・タッカー・トンプソンだ。

「帰って来たな。君が次に乗る船だ。明日、港に行こう」とジムが言った。

胸が高鳴る。


続きまーす。




あなたのサポートのおかげで僕たちが修理している船のペンキ一缶、刷毛一つ、ロープ一巻きが買えます。ありがとう!!