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「月命日の打ち上げ花火」第2回
2.
和夫は32歳の頃、1歳の男の子を残して、離婚した。
離婚前、子どもがいることで和夫は離婚することに悩んでいた。
悪いのは両親で全く罪のない子供を片親にしてしまう事がいいのだろうか、悩みに悩んだ。
仲の悪い両親に育てられるより、母親の愛情を一身に受けて育った方がいいだろうと無理に納得した。
2回流産した後の子だったので、前妻は親権を譲らなかった。
和夫は子供に対する申し訳ない気持から、かなり多めの養育費を渡すことにした。
離婚当時は1歳ぐらいの男の子を見ると、心がざわざわした。
経済的なことも含めて、次の結婚はしばらくないだろうなと思っていた。
離婚から3年過ぎて心の傷も癒えてきた和夫が35歳の時だった。
26歳の由美子と知り合った。
雑貨チェーン店のエリアマネージャーだった和夫が札幌6店舗担当することになった。
6店舗のうち、3店舗が不振店舗で和夫の仕事はその3店舗の退店を速やかに行うことだった。
3店舗の退店が終わると新しいエリアマネージャーと変わることになっていた。
和夫はいつもそのような後始末の仕事ばかりをしていた。
由美子はその退店する1店舗の社員だった。
和夫は普段は東京の流通センターで本部商品の管理をしながら、月に3回ぐらい、札幌に出張して、退店の準備を進めていた。
退店店舗の社員と夜、飲みに行って、彼女らの希望を聞いていった。
関東に30数店舗あったので、関東に転勤できるなら、そのまま関東で仕事を続けられる。
札幌から出たくない社員には、退職してもらうしかなく、次の職場を紹介などしていくのが和夫の仕事だった。
由美子と居酒屋に行った時、由美子は酒は飲めなかったが、モリモリと食べた。
関東に行くかどうかはすこし考えたいとのことだった。
3か月ぐらいの猶予はあったので、ゆっくり考えてくれるように言った。
仕事柄、たくさんの女性と一緒に仕事をしてきた和夫は会社の女性に男として、心が動かされることはなかった。
この子可愛いなあと思っても、それ以上の気持ちになることはなかった。
まして、恋愛感情など持つことはあり得ないことだった。
そんな和夫が由美子に対して男としてドキドキしてしまった。
えっ 嘘だろう、和夫は自分で自分にびっくりした。
つづく