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「月命日の打ち上げ花火」第3回
3.
150センチと小柄だった由美子。
その小柄な由美子の歩く姿を和夫な何回か見た。
背筋を伸ばし、速足で凛とした感じで歩いていた。
可愛い由美子が札幌の街中をゆっくり歩いていると、ナンパな男から声をかけられてしまうだろう。
長い髪をなびかせながら速足で歩く由美子の姿は男が声を掛けられない雰囲気があった。
会社の上司と部下という関係でなければ、和夫は由美子と知り合うことなど絶対なかったろうと思う。
和夫は由美子の事が忘れられなくなった。
東京の流通センターに帰ると、何かの用を作っては由美子の店に上司として電話をした。
仕事の話は3分ぐらいで15分ぐらいはコミュニケーションを図る大事な雑談と称して取り留めもない話をしてしまっていた。
1カ月、2か月経つうちに由美子も和夫が自分に対して特別な感情を持っていることに気が付いているようだった。
和夫は東京で飲み歩きながら、由美子のことをあきらめようと何回も思った。
どう考えても由美子が10歳も離れていてバツ一で養育費の為にお金のない最悪の条件の和夫とどうにかなる訳がない。
そして、女性が戦力の小売業においては、部下の女性と恋愛関係になるのはあまり好ましくない。和夫は独身だったのでまだよかったが、それでもあまり好ましくなかった。
3か月たって由美子のいたお店の退店の手続きもだいぶ進んできた。
そろそろ、由美子も態度を決めなくてはならない。
関東に行くか、退職するかを聞きに札幌に行く予定を一週間先にしていた。
そんな時に由美子から電話があった。
「一週間後に札幌で詳しく聞くが、どうする、東京へ来るか、それとも、札幌に残るか。」と由美子に聞いた。
「マネージャーは私をどうしたいですか?」と由美子は和夫に聞いてきた。
えっ、どうしたいってどういう意味だ。和夫はなぜかドキドキしてしまった。
「俺は君に対して、上司以上の気持ちを持ってしまった。君には迷惑な話だが、正直言って君には東京に来てもらいたと思っている。これは明らかに俺の私情だ。」
あっ、ヤバイ、ついに本当の気持ちを言ってしまった。
ダメに決まっているのに。
この後、一緒に仕事をしていくの気まずいなあ。
和夫はそんなことを思いながら、言ってしまったことを後悔し始めていた。
つづく