「月命日の打ち上げ花火」第5回
5.
一週間たった。札幌に着いて和夫はすぐに由美子の店に行った。
由美子を見つけて声をかけた。
「ようっ ご苦労さん。」
由美子も一週間前の話などなかったように
「マネジャー お疲れ様です。」と挨拶してきた。
「早速だけど 今晩、8時からこの前の居酒屋でいい?」
「はい、わかりました。8時に伺います。」
「じゃ ほかの店舗に行ってくるから。」
「はい いってらっしゃい。」
由美子の店を出た後、喫茶店に入って一息入れることにした。
由美子と飲みにいくことを考えると和夫はドキドキしてきた。
今日は大事な日だ。
俺の大きな勘違いか、俺の思いが叶うかのどっちかだ。
なんか、今日は仕事どころではないなあと和夫は思った。
といっても仕事はしなくてはいけないので、喫茶店を出て、3店舗を回った。
退店店舗のモチベーションを維持するのはとても難しい。
和夫と由美子が男女の恋愛関係になった事が他の女性社員にわかったら、モチベーションがガタ落ちになるのは火を見るより明らかだ。
みんなにばれない様にしないとヤバイよなあ。
でも、社長にだけは伝えることにしよう。
和夫はまだ、由美子とどうなるかわからないのに先走ってそんな心配をしていた。
由美子と会う約束をしていたのは普通のチェーン店の居酒屋で料金は安心できる店だ。
まだ7時で1時間も早かったが、行くところも特別にないのでその店に入った。
ビール1本で1時間粘ることにした。
でも、それは無理なことだった。
由美子が来るまでにビール3本が開いてしまった。
由美子が入ってきた。
「マネージャーお疲れ様です。あれっ マネジャー、ビール何本目ですか、顔、ちょっと赤いですよ。」
「7時に店にはいったから、1時間をビール1本で粘ろうとしたけど無理だった。3本飲んでしまった。」
由美子はちょっとほろ酔い加減になっている和夫に言った。
「私はご存じのようにアルコールは飲めません。マネージャーもこのあとはソフトドリンクにしてください。これからの話はマネジャーにこれ以上酔って欲しくないので。」
そうか この子もきちんと覚悟してこの場にきたんだなあ。
俺もきちんとしなくてはいけないと和夫は思った。
つづく