見出し画像

【私のパラサイト考察】その2

※完全なるネタバレ記事です
※2020年2月中旬に書いたものを加筆修正しました
※現在無料公開中です。

※前回の続きです。(以下よりどうぞ)



登場人物をもう少し見つめたら 

前回は、韓国社会における階層(ピラミッド)を中心に書いたんですが、今回は他の事について、特に石のことについて書こうかなと。



 

その前に、階層についてもう少しだけ追加を。
冒頭、他人の家にガンガン入って来て、当たり前かの様にあの石を持ってきたミニョクと、


石を見てすぐにその種類がわかる父、壁にあった額縁(格言みたいなの)とか、母のドレッサーがやたらラグジュアリーなのとか、予備校行ってないの?というセリフなどからも、おそらく少し前まで、キム家もそこそこの階級の家庭だったことが分かります。
そしてギジョンがミニョクを「オッパ」(→女性が親しい年上男性に使う呼び方)で呼んでいること等から見ても、ギウとミニョクは幼馴染とか、頻繁に各家を行き来する親友だったのかもしれないですね。
 
それから、パク妻はおそらく、パク社長と結婚することで上流階級の人間になった人。
私がまずそれを感じたのは最初にギウに報酬を渡すためにお金を数えてたシーンで、パク妻は封筒に入れようとしてから、少しだけお札を抜きましたよね。あの時に。
キム家の人からする「におい」がわからないのとかもそうだし、チャパグリに高級肉を入れたものを完食する感じも、庶民と上流階級のミックスを暗喩的に見せているのだなと思いました。
他には、地下鉄に乗らなくなって久しいとか言うのも、かつて庶民だったことを感じさせました。

ちなみに、ポン・ジュノ監督がパク妻を演じたチョ・ヨジョンに「この人は大学生の時にできちゃった結婚していて、世間知らずなところがあるという設定」があることを話したという記事を見ました。階級については言及はなかったけれど、つじつまが合うかなと思います。

謎の食べ物チャパグリ

で、チャパグリなんですけどね(笑)。
あれなんやねんって皆さん思ってると思うんですよ。
割と最近出てきた食べ物で、調べてみたら全国区で有名になったのは2013年って出てきました。
チャパゲティとノグリという、2種類のインスタントラーメンをまぜて作るものです。どちらも、必ずすべてのスーパーで扱っているもの。韓国の基本のインスタントラーメンと言えます。

チャパゲティは韓国の中華料理、ジャジャン麺を模したラーメンで、私たちにとったら焼きそばUFOみたいな?つまり汁無しです。麺はちょい細め。
ノグリは、辛ラーメンと肩を並べるくらい人気のラーメンで、汁が赤い系。麺はちょい太目。乾昆布がついてて、それで出汁をとったとこに粉末スープ入れるんです。辛い味とちょい辛味抑えてある味の2種類があります。(私は後者が好き)
で、チャパグリはノグリの粉の方は半分だけ使って汁無しで作るらしいです。つまり辛みが少し抑えられてる味。
美味しいらしいんですよねー。誰か、近々「チャパグリ食べる会」やらない(笑)? (そして結局やれなかった…コロナめ。)

...ということで、この典型的な庶民の食べ物チャパグリに高級韓牛を入れて食べるという事がどれだけおかしなことか、お分かりいただけたでしょうか。
焼きそばUFOとサッポロ一番で作った汁なし麺に、黒毛和牛の焼いたやつを入れるようなもんです。それも小さな男の子の夜食として。
 
 

石が意味するもの

ではそろそろ、あの石についてまとめます。

そもそも、ミニョクは何故あんな石をくれたんでしょうか?
まぁ正直、いらんじゃないですかアレ(笑)。コレクションと言うのは金持ちの道楽ですから。
でも、ああやってキム家に持ち込まれた。そして最後まで登場する。
洪水の時、唯一ギウがもって出たのがあの石でしたよね。
なぜギウはあそこまで石に執着するのか?を考えていたのです。
そして、あの石は結局、金持ちの「計画」を象徴しているのだな、と思いました。

信用のベルト

そもそも、ミニョクがあの家の家庭教師という職を「紹介する」という行為自体が、まさに韓国をあらわしてるなぁと思います。
紹介ってすごいんですよ、韓国において紹介=人脈がないっていうのは、ちょっとほんとに、なんていうか、生きにくいです。
多くのポストが、紹介で埋まっていくと言っても過言ではないです。
私も、韓国にいた時に紹介で得た仕事がどれほどか…もちろん、その為に自分も人付き合いにすごく時間もお金も使うことになるし、外で食事をしたり、お茶をしたりも激しいんですが。
 
実は紹介は、パク妻が「信用のベルト」って言ってたように、双方の信用を上げるための一種の営業行為でもあるのですよ…変な人を紹介できない代わりに、良い人を紹介すれば自分の評価も上がるわけですから、誰でも良いわけではなくて。だから、同等の人が来ることしかありえないと考えても良いです。そして、周りもそれを望んでる。
つまりそれもまた、上流階級の「計画」のうちのひとつだと見ても良い。

そしてそれが「無計画」のキム家に持ち込まれたわけです。

無計画な計画

ミニョクが最初に石を持ってきた時、立小便している酔っ払いに威勢よく怒る姿勢を見て皆が褒めていましたよね。
ギウは、最初自分にはできないことだったのに、石が家に来て、家庭教師を始めてから、直接外に出て酔っ払いに文句を言えるようになる。
ミニョクがそうだったように、パク家娘とちょっといい感じになり、ミニョクが言っていたのと同じセリフを言うようになる。
キム家の人間が次々と紹介という方法でパク家に入っていくのとかも、階級が上の人達の「真似」をしてるだけ。
それは、キム家の人々自身の計画ではないのです。それらは全て、ミニョクが持ち込んだ=金持ちの計画、ただ自分達はそれに従うことになるだけの、まやかしの「計画」だったということ。
 
そしてそれが自分のものではないという事も知らずに、計画通りにうまくいく、と思い込み、石=計画を抱いて、ギウは地下室へと向かいますよね。でも、手からころげ落ちてしまう。
そして、あれで殴られてしまう…。

下へ下へと流れていく

前回も書きましたが、キム家は決して最初から「無計画」ではなかったはずです。
ちゃんと働いて、人気の事業に手を出せるくらいの家柄だった。映画の中で描かれる全ての事が、きっと「計画」の外のことだったはず。
だけど、貧しさがキム家を「無計画」へと導いてしまう。

最後に、川に石を返すシーンがありましたけど、あの事件の日の時点であの石が、現実的にギウの手に戻ってくることは無かったはずですよね。
なのに、返すシーンがある。
つまり、ギウはあの時点でようやく、金持ちの「計画」を手放し、自分の計画を立てたのです。
すべてが終わってから。

半地下に住んで、失われたアイデンティティ。
あの石=金持ち、計画のある、計画通り進む人生に執着していたけれど、結局は自分の手からは零れ落ちるものだった。
新しく立てた計画(あの家を買って父を救う)も、結局は実現することはないのでしょう。


 
 
今日はここまで。

また書きます。




いいなと思ったら応援しよう!

おけいはん。
サポートしてくださったら飛び跳ねて喜びます🤹‍♀️✨ 学習イベントの準備に使わせて頂きます📖 감사합니다.ありがとうございます🙇‍♀️