人間精神は身体とともに破壊されえず、その中の永遠なる何ものかが残る、とスピノザは言う。人間身体と精神は様態であり持続であるから、身体が破壊されたとき精神も破壊されるはずである。また魂の不滅性に関してスピノザは否定的であり、それとは異なる形で精神の永遠性を考えていたと思われる。
スピノザは感情を喜び、悲しみ、欲望に分類する。喜び、悲しみは外部のものとの触発による身体の変様である。喜びはより大きな完全性、悲しみはより小さな完全性に至る。欲望はあるものに近づこう、あるいは離れようとする感情である。エチカではより複雑な感情もこの3種類の組み合わせで説明される。
スピノザの神は宇宙よりも広い。宇宙は所産的自然であり、神は能産的自然であるからだ。また宇宙は空間的には最も広いかもしれないが、神は延長属性の他に思惟属性や、人が認識できない属性を無限属性をもつ。スピノザの哲学に安心感があるのは、たとえ宇宙さえ滅びても神が残るという確信からだろう。
賢者は直接善いことへ赴く。道徳的にそれが善であることなど必要としていない。自らの本性として善いことを求めるが故に善いことを行うのだ。何が己にとって善であるか悪であるかは第二種の認識により明らかである。賢者にとって必要なのは内的倫理であり、外的道徳ではないのだ。
スピノザはエチカにおいて一見奇妙な記述方法をとる。それは幾何学的方法というもので、数学書プリンキピアを元にしている。ページを開くといきなり定義が並び、その次に定理やその証明、最低限の説明や注釈が並ぶ。まさに数学書である。スピノザは真理を示すにはこれだけで十分だと思っていたようだ。