L.V. ベートーベン:交響曲 第7番 イ長調, Op. 92
L.V. ベートーベン
交響曲 第7番 イ長調, Op. 92
指揮:イヴァン・フィッシャー
演奏:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
演奏日時:2014年1月10日 At : アムステルダム・コンセルトヘボウ
第1楽章: Poco sostenuto – Vivace
第2楽章: Allegretto
第3楽章: Scherzo. Presto
第4楽章: Allegro con brio 演奏時間:42分14秒
ベートーベンの交響曲を聴く時、常に脳裏に浮かぶ、高らかな自由への
宣言文があります。
1776年7月4日に発表された「アメリカ独立宣言文」です。
ベートーベンの少年時代に起草された「アメリカ独立宣言」は、中世の王朝支配と圧制の象徴「大英帝国」に立ち向かう、名もなき民衆の力強い反抗であり、理想郷を生み出そうとする激しい熱意に満ち満ちています。
この時代の思想を象徴する格調高い名文です。
一部、抜粋でご紹介いたします。
**** ここから ****
われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。
すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主に
より、生命、自由、及び幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている。
こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づい て正当な権力を得る。
そして、いかなる形態の政府であれ、政府がこれらの目的に反することと
なった場合には、人民には政府を改造または廃止し、新たな政府を樹立し、人民の安全と幸福をもたらす可能性が 最も高いと思われる原理をその基盤とし、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる形の 権力を組織する権利を有するということである。
(中略)
権力の乱用と権利の侵害が、常に同じ目標に 向けて長期にわたって続き、
人民を絶対的な専制の下に置こうとする意図が明らかであるときには
そのような政府を捨て去り、自らの将来の安全のために新たな保障の組織を作ることが、人民の権利であり義務である。
(以降、省略) **** ここまで ****
同時代に生きたベートーベンは、この晴れやかな朗々たる文章を読んだに相違ありません。
本曲、交響曲 第7番をお聴きになってみてください。スキップを踏みながら「理想郷の誕生に期待」するベートーベンの姿を、容易に思い浮かべることができるでしょう。
しかし、残念ながら、現実の歴史は理想的には進行しませんでした。
大英帝国との独立戦争に勝利したアメリカ合衆国は、テキサス併合・インディアンの駆逐はおろか、カナダとの領有地争いと、次々に戦いを繰り返し、列強同様の拡大主義にのめり込んでいきます。
ベートーベンの理想はまたしても裏切られるのです。
本曲 第二楽章 の悲哀溢れる葬送の曲は、彼の挫折感と、人間という存在への失望と疑念に満ちみちています。
然しながら幸いにして、ベートーベンの「理想郷への思いと人類賛歌」は
尽きることなく、第4楽章の心躍る高揚の賛歌 へと 続いていくのです。
本曲 交響曲第7番の発表後、約12年の長い歳月をかけて、現存する9つの交響曲、つまり36章の最後を飾る4つのリング:交響曲 第9番が発表されることとなります。
⇒ 第9に行かせて頂く前に、2曲のご紹介をさせて頂きます。
まずは、L.V. ベートーベン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 OP. 61 の
ご紹介を。
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