W.A.モーツァルト:ピアノソナタ K. 545, K. 570, K. 576
Mozart Piano Sonata K 545 1mvt Played by Sir András Schiff
MOZART Piano Sonate KV 570 Played by Sir András Schiff
MOZART Piano Sonate KV 576 Played by Sir András Schiff
KV 545は、父レオポルドの死の約1年後、1788年6月26日に書かれました。
このころの彼の手からは、何とか収入を得ようと舞曲など数多くの作品が産みだされています。
このハ長調の小ソナタは、「初心者のための小ピアノ・ソナタ」という、
教育者のような、それまでのモーツアルトらしからぬタイトルがつけられています。
メロディはピアノを習った人ならどなたでもご存知の馴染みのものです。
技術的にもさほど高度ではありません。しかし、静逸そのものの澄み切ったメロディです。
K 570は、モーツァルトが尚一層の生計の苦しさを意識する1789年の初め、2月に作曲されたものですが、ドンジョバンニ以降に現れる、吹っ切れた
確信に満ち、澄みきった音調に包まれています。
1789年4月から6月にかけ、作曲や演奏の仕事を求めてベルリンに行き、
宮廷で演奏を行った後、皇帝ヴィルヘルム2世のために6曲の弦楽四重奏曲を、皇女フリーデリーケのために、6曲のやさしいピアノ・ソナタを作曲するよう依頼を受けます。
モーツァルトは、結局、依頼を完全に果せず世を去ってしまいました。
が、それでも3曲の弦楽四重奏曲と1曲のピアノ・ソナタ( K 576 )を残します。
1789年7月に作曲されたこのニ長調の作品 K 576は、モーツァルトが皇女のために書いた唯一の作品になってしまうだけでなく、彼の作曲した最後のピアノ・ソナタにもなりました。
これらのピアノソナタの曲調は、ともに、静けさと上品さに包まれています。淡々とし、透明さに満ちた、悟りの心境に達したことを感じてしまうものです。
まるで、彼の心の奥底に潜んでいる秘密の泉のきらめきが聞こえてくるような音楽。
聴く人を唖然とさせるようなメロディの飛躍もなく、静まり返った夜半に弾いているかのような、気品に溢れて、誠に美しいのです。
まるで人が変わったように、あの傍若無人のモーツアルトは何処に行ってしまったのか?と思えるのです。モーツアルトの周囲は、相変わらず騒々しく、変わらず野卑な言葉に溢れていたのに・・・
⇒ W. A. モーツアルト:交響曲 第40番 K. 550 & 第41番 K.551 へ
参ります。