
W. A. モーツアルト:フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299
作曲:ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト
フルート独奏:ギィ・エシェド (Guy Eshed)
ハープ独奏 :ジュリア・ロビンスキー(Julia Rovinsky)
演奏:イスラエル・フィルハーモニック・オーケストラ
指揮:ズービン・メータ
収録:2016年1月20日 演奏時間:29分57秒
ようやく、1777年、大司教ヒエロニムスの宮廷楽師の職を辞し、マンハイム・パリへ移り住んだ齢(よわい)21歳のモーツアルトは大きな束縛からようやく解放され、新天地で大きく羽ばたきます。
それまでバロックの音楽家やバッハですらも書き得なかった、自由奔放なメロディ一杯に溢れた曲をどんどんと世に出し始めます。
そのうちの代表的な一曲。
モーツァルトが作曲などの家庭教師をしたパリの貴族から、娘の結婚式に於いて演奏するべく依頼されて作曲したこの曲は、華やかな結婚式にて、オーケストラをバックに父がフルートを、娘がハープを演奏する、粋な設定で作曲されたもの。
春の陽射しに溢れた、この上なく典雅にして比類なき美しさ。
青春と幸福に包まれた音楽!
とりわけ第2楽章「アンダンティーノ」(10分30秒位から)は、フルートの名曲です!
まさに天国の花園に流れる妙なる音楽としか、形容のしようがありません。
ハープとフルートという当時流行の2つの楽器をオーケストラの響きの中に融け込ませ、浅薄になってしまうことなく、典雅なフランス風のサロン音楽に仕立て上げていることは、モーツアルトの無限に近い力量を遺憾なく発揮した曲であり、さすがという他はありません。
映像内で指揮をしているズービン・メータ氏が、なんとも手持無沙汰に見えてしまうのです。
曲が完璧に出来上がっていれば、指揮者にはやるべき仕事がなくなるものです(^▽^)
既に書きましたが、天上の創造神が、彼の頭の中に「電波」で送ったものでありましょう。それ故に、ベルリン博物館に残されているこの曲の自筆譜(オリジナル)にも、一ヶ所も書き直しが無いそうです。パーフェクトな音楽。
さて、1778年2月には父レオポルドから、パリ行きを命じられます。
しかし、3月から9月までのパリ滞在は、悪夢であったようです。
受け入れ先(下宿屋)からは冷遇され、稼ぎもよくなかった。
自邸に招いてくれて演奏を望んだ人々は、絶賛はしてくれるましたが、報酬は少なかったのです。
音楽家という職業はまだまだ評価されておらず、その生活は不安定極まりないものでした。
その上、7月には同行してくれていた母をパリにて亡くしたモーツアルトは、傷心に満ち1779年初頭、父の待つ、田舎臭いあの「ザルツブルグ」へ帰り、改めてウィーンへ向かうのです。
⇒ W. A. モーツァルト:歌劇「後宮からの誘拐」K.384 へ
続きます。