キレない子供にするための練習ー子どもの感情と社会性を育てるー
私の子供の学校では、キンダーガーテン(一年生の前の年:日本で言う年長さんの年)からFlexible Thinking(柔軟な思考)という授業が始まります。これは世界的にも重要視されてきている社会情動スキルの学習(ソーシャルエモーショナルラーニング:Social Emotional Learning)プログラムの一環です。
この社会情動スキルは非認知スキルというよくわかったようなわからない感じの呼び方もあるのですが、学術的勉強の能力ではなく、子供が将来人として社会生活を送っていくうえでとても大切なスキルとして世界的にも認められ、多くの国で低年齢のこどもの教育に組み込まれています。社会情動スキルとは、具体的に言えば以下のようなスキルが含まれます。
目標の達成(責任感、自己抑制)
感情のコントロール(楽観性、ストレス耐性)
協働性(共感性、協調性)
開放性(好奇心、創造性)
他者とのかかわり(社会性、積極性)
複合的な能力(批判的思考、自己効力感)
社会情動スキルの学習については専門家のページをぜひ検索して読んでみてください。例えばこちらのベネッセさんのページに詳しく説明されていますし、日本語の本もあるようです。
上記の社会情動スキルは、これまで乗せたようなクエーカー教育にもかかわりが深い感じがします。特に協働性、他社との関わり、批判的思考などなど。
詳しい社会情動スキルの学習については専門家の方にお任せするとして、今日は私の子供がFlexible Thinkingの時間で具体的に何をどのように学んでいるかについて例をあげてお話ししたいと思います。
あなたは今何色?
Flexible Thinkingの授業は週に一回30分から45分くらいで、学校のカウンセラーと特科の先生がチームを組んで行っています。子供がキンダーから一年生のころ、コロナによりオンライン授業が行われていたために、幸いにしてこの授業を私も(盗み)聞くことができました。週一回この授業を聞くのはとても楽しかったです。
その中でまず取り上げられていたのが、自分の感情を観察するZones of Regulationです。これは自分の感情の変化や体の反応を観察する癖をつけ、自分の中でそれにどのように対処していくかを学ぶものです。
まずは、感情や体の反応を色分けしてどんな感情がどの色に属するかを学びます。クラスでは赤、黄色、青、緑の4枚の紙と、いろいろな顔の絵文字シール(😃😨😤🤪😖😡など)が配られて、どの顔はどの色のゾーンに当てはまるのかをゲームのように推測し、各自で分けていきます。
そのあと、クラス内で話し合います。色としては:
青ゾーン:悲しいとき、退屈な時、疲れているとき、病気の時などが青ゾーンです。体が重く、だるい状態です。
赤ゾーン:興奮しているとき、怒っているとき、パニックになっているとき、恐怖を感じるとき、怒鳴っているとき。このゾーンの時、体はコントロールを失っている 状態です。
黄色ゾーン:心配になったり、何かに不満、不安を感じていたり、体がソワソワ、イライラしていたり、ふざけた気持ちの時 もこのゾーンです。たいてい、何か不満や不安があったり、 おかしな感じがしている時です。赤ゾーンのちょっと手前な感じです。
緑ゾーン:落ち着いてハッピーな状態です。課題をこなす準備ができていて、痛いところやイライラした気分などもなく、いい感じの時です。
そのあと、自分の色は今何色か、どういう時に自分は色が変わるのか、週末は何色だったかなど、クラス内で話し合います。そして、もしも自分がそれぞれのゾーンにいたらどうすればいいかなども話し合います。
例えば赤ゾーンにいた場合は、「その場から離れる」、「休憩する」などが考えられますし、青ゾーンにいた場合は「ストレッチする」、「楽しいことをする」、「水を飲む」などが考えられます。クラス内で子供が話し合って、自分がそうなったときにできることを考えます。グループワークをして、自分で考えたことを人に伝えること、人の話を聞くことがここでも大切です。
Figure 8 Breathing (八の字呼吸法)
クラスで話される対処法として、先生が子供に紹介していた方法は、"Figure 8 breathing"というものです。これは八の字の動きに沿って息を吸って吐くのを繰り返す医学的にも証明された呼吸法のようですよ。大人にも役立つのでぜひお試しください。
すぐに身につくものではないですが、毎日のどこかで、子供に繰り返し意識させることで、自分の感情に対してどのように取り組めばいいのかが練習できるかもしれません。うちの子ですか?、はい、もっと練習が必要です。親の私も同様。駅とか道でキレる大人にもぜひ実践していただきたいです。人は何歳になっても学べますが、子供のころから身に着けるということは重要かもしれません。
このZones of Regulationのサイトには無料で提供されている教材もありますので、もしも教育者の方がいらしたらぜひ検討してみてください。また、日本語では関西国際学園 神戸校さんの実践記事がとても有効と思いました。リンクを載せておきます。
いまでは対面学校がはじまったため、コロナ下のようにこのFlexible Thinkingの授業をのぞけないのは残念ですが、その期間内でほかにもいくつか学んだことがあるので、次回以降ご紹介したいと思います。