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古民家再生はじめました ~瓦屋根の葺き替えと野地板張りの天井~

台風シーズンを迎える前に屋根工事を終えて欲しかったわが家の修復現場。なかなか着手されず、ボロボロ屋根の瓦が誰かの上に落ちたりしないかと気が気じゃなかった。ついに古い瓦が降ろされ、新しい瓦が載ってひと安心。

タイトル写真は工事前。崩れ落ちそうな下屋根の瓦は、粘土で固定されている。これは大正期の創建時のままだ。昭和になってから葺き替えられているらしい大屋根の瓦のほうは、桟かけ組立方式。どうやらセメント瓦だ。右側に写っている隣家の屋根瓦は、近年葺き替えられたものらしい。

すっかり傷んでいた古い瓦は全て降ろされ、あちこち雨漏りしていた野地板も張り替えられた。町並み保存のために指定されたのは「三州いぶし瓦」だ。

またまた急いで調べてみると、三州瓦というのは日本三大瓦のひとつ。旧三河国(現愛知県)で生産されている粘土瓦で、日本の瓦の6割を占めるらしい。「いぶし瓦」は、釉薬を用いずに素焼きしたあと、空気を遮断して燻す(いぶす)ことにより、炭素膜を形成させて仕上げたもの。この処理によって独特の銀色が生まれるという。

LINEで送られてきた写真を見ると、瓦側面の模様が、なんだかカッコイイ。屋根に載ってしまったら間近でみることはできないのが残念だ。

三州いぶし瓦 波と月と雲かな?…不明

このあと大屋根の下には天井をつける。けれども、下屋根のところだけは、直接二階の天井になる。購入前に下見をした時、見上げると隙間から空が見えて、風がヒュウと吹き込んでいた。

「これは直せばいいんですよ。」と、不動産屋さんはあっさり言っていたけれど、マンション暮らしに慣れてしまった、極めてひ弱な私たち。情けないことに、快適性を失うことには恐怖すら感じてしまう。だから、生活空間の断熱はとにかく可能な限り整えてほしい、と建築士さんにお願いしてみた。

「デンケン(伝建)の外観は変えられません。屋根の室内側に断熱材をいれてクロス張りにするのなら簡単にできますが、せっかくの設えが隠れてしまうのは勿体ないですね。何とか工夫します。」とのこと。

下屋根の下:化粧野地板の木目が美しい

どうなることかと心配したけれど、結局、二枚の野地板で断熱材を挟み込むようなやりかたで収まった。

送られてきた写真を見ると、杉の化粧野地板の木目と垂木のコントラストがなんとも美しい仕上である。古い丸太の軒桁を磨けば、更に素敵な雰囲気になりそうだ。これをクロスで隠したりしなくて、本当に良かった。

せっかく古い建物を残すのだからと、手間をかけて丁寧に対応して下さっていることがビシバシ伝わってくる。もう、感謝しかない。

こうして着実に進んでいる修復工事。けれど、あちこちで見かけるイマドキの新築物件と比べてみると、歩みは極めてゆっくり。なにしろ、ひとつひとつ状態を確認し、その場で加工しながら仕上げているのだ。工場で完成させた部品をどんどん組上げている現場とは、なにもかも違うのである。

伝統的建築物である既存の躯体構造と外観部分の修復を終わらせたら、行政による最終検査を受ける。そしてようやく、住居としての室内設備を整える段階に進むことができる。

古い建物では、お竈(くど)さん、御手洗などは、既に取り壊されていた別棟にあった。生活するには、足りない水回り設備などの増築が必要だ。工事進捗は現時点でも微妙に遅れていて、いつ新居に引越せる状態になるのかは、まだよく分からない。

あれこれ不安はあるものの、こうして新たな住まいが少しづつ出来上がっていくプロセスは楽しい。それを存分に味わいながら、次ステージの準備をじっくり進めていける今は、実に贅沢な時間だ。

これって、もしかして、私の人生の「サバティカル休暇」なのかしらん…、なーんて思ったりもするのである。


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