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古民家再生はじめました ~いまや稀少な柾目(まさめ)の松材が必要です~

着々工事が進む現場の状況を、一カ月ぶりにオンラインで見せてもらった。都度送っていただく写真は確認していたけれど、大工さんたちの会話や作業する音が背後から聞こえてくる動画は、伝わってくる臨場感が一味違う。

建築士さんから少し遅れ気味と聞いていたので、おそるおそる状況を尋ねてみた。農繁期であることに加え、あまりの暑さで作業が止まっていたあちこちの現場が、すこし涼しくなって同時に動き始めて人手が足りないという。防蟻処理の業者さんの順番待ち、伝建物件に必須の「行政チェック待ち」も影響しているらしい。

まあ、私たちが焦ったところで役に立たないし、最善を尽くして下さっているのだから、おとなしく待つよりほかない。頻繁に現場に足を運ぶことのできないリモート案件だけに、信頼関係がなければ、相当にストレスを感じることだろう。こまめに連絡をくださるし、丁寧に説明をしてもらえるから、安心してお任せできる。実に有難いことである。

色々話を聞いていたとき、工務店社長の息子さんが言った。
「いま、『マサメノマツ』が手に入らなくて、探しているんです。」
 
私はすぐには理解できず「????」となってしまったが、聞いてみると、建材としての国産松材が、いま手に入りにくくなっているという。なかでも「柾目(まさめ)」というカットの仕方(言い方、合ってるかな?)の材料が必要なのに、赤松材を得意としていた近隣の製材所が今年の初めに廃業してしまい、調達先を探しているらしい。

「マサメって何ですか?マツじゃないとダメなんですか??」
知らないコトバが出てくると、俄然張りきってしまうワタシ。ついつい質問攻めにしてしまうのだが、カレは一生懸命説明してくれた。

「マサメというのは、まっすぐな木目がでる切り方で、年輪に対して垂直方向に切り出すので、一本の丸太からとれる量が少ないんです。たくさんの板を切り出すには、年輪に沿って切り出すやり方があります。これはイタメと呼ばれます。」

調べてみると、どうやらこういうことらしい(私の理解)


「二階の桁を取り換えるのに、『マサメノマツ』じゃないと、文化庁は納得しないだろうということなんで、いま探してます。」

母屋二階の軒部分

なるほど、そういうことか。

上の写真が、一階の縁側から少しせり出した二階の軒部分。以前から、崩れ落ちそうで危ない感じだった。外観保存しなければならない街道側ではないので、木製建具ではなく断熱サッシを取り付けて良いなど自由度が高いが、構造部分は伝統的建築物保存事業の対象となる。酷く傷んでいるので、安全面から桁の取替は認められたけれど、可能な限り既存建築物と同じ材料を使って修復する必要がある。それ故「柾目の松」マスト、なのである。

調べてみると、マツというのは、スギやヒノキに比べて強度があり、粘り強く密度が高いのが特徴だそうだ。めり込みにくく、潰れにくいことから、梁(はり)や桁(けた)などに多く使われるらしい。一方で、捻れが大きいため十分に乾燥させないと狂いが生じやすいなど扱いが難しい材料、とある。スギやヒノキのほうが扱いやすい上に高く売れるので、国産松の需要は減っていったのだと分かった。

手元にある「小屋伏せ図」「床伏せ図」「柱伏せ図」を確認すると、わが家の土台や柱は主にヒノキ材。梁・桁・垂木の材が、主にマツである。今回の保存修理工事で、一部は取替・補修が必要になったけれど、シロアリに強いヒノキ材の土台や柱だったからこそ百年耐えたのだろう。そして、別の記事でも紹介した古いマツの梁たちには、建物を支える堂々とした風格がある。適材適所って、こういうことなんだなあ、と思う。

松について色々調べていたら、こんなnote記事も見つけた。

松竹梅の一番上だし、お正月には門松だったし、思えば、松は日本人にとって身近な存在だったはず。扱いにくいから使わなくなる、なんて寂しいな。そして、松の花言葉は「不老長寿」「勇敢」なのだとか。ますます大切にしなきゃいけないような気も、してきたりなんかして。

ともあれ。「あちこち声かけて探しているので、きっと見つかります!」とのこと。わが家の軒先を新しい「マサメノマツ」が支えてくれると信じて、楽しみに待とうと思うのだー。


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