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三年計画と自分と浦和レッズ #3

  前回は変革の年 2020年を振り返りました。2020年は新型コロナウイルスの影響が非常に大きく、スポーツを楽しむどころか、日常生活を日常として、日常のまま送るということすら困難な年でした。その年に浦和レッズの監督として指揮を執った大槻監督は契約満了で退任し、2021年からは徳島ヴォルティスを率いていたリカルド・ロドリゲス監督が指揮を執ることになります。

  今回も前回、前々回と変わらず完全に自分主観の感想文となります。ご了承ください。

今までの感想文は以下になります。

新しい風を採り入れられるか

  2021年、浦和レッズにリカルド・ロドリゲス監督がやってきた。昨シーズン末の閉塞し、暗澹とした空気感が漂っていたクラブに新たな流れを持ち込み、三年計画の遅れを取り戻してくれるきっかけになるのでないかと自分は期待していた。まぁ、毎年のようにシーズン前はソワソワしているのだが。
  そして、その期待に応えるかのように新加入選手は続々と発表され強制的にでも新陳代謝を図るかのような意志を感じていた。

  もちろん、不安が全くなかったわけではない。新加入選手はJ2リーグからの選手もいたし、所謂ビッグネームが居るわけでもない。
  監督だって、正直なところ浦和の掲げたコンセプトに完全合致してるわけではなさそうだった。
  キャンプ中に行われた練習試合では札幌に大敗したこともあった。サポーターからしたら、キャンプ中に行われる練習試合の結果なんて当てにならないと頭では理解していても、心では心配になってしまうものだ。

  そして、柏木選手と杉本選手がキャンプ中に外食をするためにホテルから外出されてるのを禁止されていたにも関わらず、ホテルを出てしまった。普段であれば不祥事と呼ぶには些細な出来事である。合宿中に中学生がこっそり宿を抜け出した、そんな感じだろうか。
  しかし、世の中はコロナ禍真っ只中である。それに、柏木選手は昨年女性と外食しているところを週刊誌に捕まってたこともある。なのでその報告に自分は酷く落胆したし、柏木選手はパサーとしてリカルド新監督のもとでもう一花咲かせられそうだと期待していたので、急に冷水をぶっかけられたようなそんな気持ちになった。

  話は少し逸れてしまうが、柏木選手について少し記そうと思う。
  
  柏木選手はその後練習に参加を許されることはなく、FC岐阜に移籍することになった。柏木選手が浦和に残した記録や記憶は嘘偽りなく輝かしいものであるし、近年抱えていた苦しみやプレッシャーは外部の人間である自分にもよく伝わってくるものであった。
  当時はもちろん柏木選手に対しては裏切られたという気持ちはあったし、その時に財布に付けていた10番のユニフォーム型のキーホルダーはその時に外してしまった。
  ただ、そのキーホルダーを捨てることができなかったくらいにはやはり彼のことを愛していたのだなと思う。今までありがとう、そしていつか選手としてかスタッフとしてか、はたまた浦和レッズとは直接関係しない立場か分からないけど浦和の街で会えたらと思う。

  話をキャンプに戻すと、その時に一緒に処分を受けた杉本選手も練習から一時離れることとなった。これらの処分は妥当だし、仕方の無いことだと思う。リカルド監督の目指すサッカーは規律が必要であり、普段から規律を守れないメンバーが試合の中で規律を守れるとは思わないからだ。

  とても順調と言えないキャンプ期間を過ごし、Jリーグの開幕を迎えることとなった。

物語の始まり

  なんとなく見出しで物語の始まりと書いたが、恐らくはこれは正しい表現ではないと思う。浦和レッズというタイトルの物語はJリーグ開幕前の三菱自工時代から続いていると思っているし、三年計画という物語も前年の2020年から始まっているわけである。
  ただ、それを理解した上でこの見出しを付けたくなるくらいには2021年のシーズン序盤はストーリー性を感じるような内容だったのだ。
  やりたいこと、目指していくスタイルを披露した開幕戦、自分たちの課題を突きつけられた横浜F・マリノス戦と川崎フロンターレ戦、理想だけではなく時には割り切った戦い方も必要なんだと示したコンサドーレ札幌戦、まさか槙野選手がキッカーを務めるとは思わなかった鹿島戦など、記憶に残る試合が多かったのも理由だろう。

  また、まだ未熟な戦術によって苦戦していた時期にユンカー選手による理不尽さが浦和を救ってくれたことも大きかった。まさに助っ人と言う名に相応しい圧倒的な活躍で連続ゴールを決めていく。

  自分はこの頃のサッカーがたぶん好きだったと思う。自分の好きなサッカーをうまく説明するのが難しいのだが、規則性の中で不規則な事柄が起こるサッカーが好きなのだ。狙いを持ってコントロールできるカオスを作り出すとでも表現するべきなのだろうか。ただ、このサッカーはリカルド監督の目指すサッカーではないのだろうけど。

  夏になり浦和レッズはさらに強力な戦力を加えた。ショルツ選手、酒井選手、そして平野選手だ。酒井選手は言わずもがな、ショルツ選手と平野選手が共にデビュー戦で活躍し自分の心を一瞬で掴んでしまった。特に平野選手の多少リスキーでもチャンスとみるや果敢に前に仕掛ける攻めのパスはスタジアムに行って観たいと思った。

  兎にも角にも、浦和レッズは多少ゆっくりとしたペースではあるが三年計画の二年目としては順調なシーズンを送っていたと思う。

真実の時間

  2021シーズン、ラスト10試合を迎えてリカルド監督は真実の時間というワードを出した。この時点では目標とするACL出場権を獲得できるJリーグ3位圏内になんとか留まっている状況だった。ただ、ACLを争う他クラブとの直接対決を残していたし、ヒリつくような試合を制しながら3位を獲るのはその時の浦和レッズであれば十分現実的なラインであると思っていた。

  しかし、その後にはヴィッセル神戸に大敗したりルヴァンカップでセレッソ大阪に準決勝で敗北したり、ガンバ大阪に土壇場で追いつかれたりと悔しい試合が続いてしまう。

  シーズン終盤にリーグの勢いが落ちるのはもはや浦和レッズのいつものパターンとなってしまっているが、今シーズンこそはやってくれそうだと勝手に思い込んでいたために大きくショックを受けることとなった。この後の天皇杯、待ち受けるのはガンバ大阪やセレッソ、川崎フロンターレと嫌な思いをした相手や強力なクラブばかりだ、今年の冬も厳しそうだなと思っていた。

意地と勝負強さをみせた天皇杯

  天皇杯準々決勝、浦和レッズは前回悔しい引き分けに終わったガンバ大阪が待ち構えるパナスタへと乗り込む。そこで開始早々に先制点を奪ったのは浦和レッズであった。平野選手がポンッと裏にボールを出すとそこに走るはユンカー選手。スピードを活かして相手をちぎりゴール隅に流し込む。相手のゴールキックから10秒程度の素晴らしいカウンターゴールだった。
  前半終了前に追加点を決めた浦和がしっかりと勝ち切り、準決勝へと駒を進めることになる。

  リーグ最終節を終えて迎えた天皇杯準決勝、相手はセレッソ大阪である。ルヴァンカップ準決勝で味わった悔しさ、苦しさを鎮めて振り切るのには絶好のチャンスである。準決勝で負けた相手に準決勝でやり返す、自分のモチベーションは最高に高かった。

  先制点は準々決勝に続きまたしても浦和が奪うことになる。この時、すでに退団が決まっていた宇賀神選手が、らしい場所から、らしいシュートを撃つとそれは見事にゴールに吸い込まれる。長年浦和レッズのために闘ってきた漢が退団が決まって尚、浦和レッズのためにシュートを決める様はなんと美しかったことか。

  しかし、セレッソ大阪も黙ってやられ続けるわけはなく何度も危ないシーンを作られたし、彼らにとっても大久保選手が引退するという事で彼にカップを掲げさせようと非常に高いモチベーションで挑んできているのは明らかであった。

  何とか追加点を取らないと追いつかれてしまうのではないか、そう危惧をし続けたまま試合最終盤に差し掛かったところで小泉選手が主人公となり得るような切り返しからのシュートを決めてみせる。試合の結果は決定的となった。
  
  ベテランと若手の素晴らしい得点で決勝に勝ち進んだ浦和レッズ、決勝戦の相手はなんと大分トリニータであった。

  川崎フロンターレとのPK戦まで戦った、死闘とも言える試合を制したのは大分トリニータだったのだ。降格が決まり、意外とも言える相手にはえもいえぬ不気味さがあった。

  2021年12月19日、新国立競技場。天皇杯決勝戦。今日、日本一が決まるのだ。世界を目指し、アジアでの熱い闘いを切望する我らにとってJリーグ3位を逃してしまったことは痛恨だが、ここで優勝すればACLへの切符を手に入れることができる。いや、そんなことは今はどうでもいい。目の前に優勝という栄誉が、日本一という栄冠が待っているのだ。負ける訳にはいかないのだ。前日から気持ちが高揚して寝れなかった程にこの日は興奮していたのを覚えている。

  前半6分、関根の彼らしいドリブル、粘りから先制点は生まれた。相手キーパー、ディフェンスをギリギリまで引き付けて折り返すとそのボールを冷静にゴールに蹴りこんだのは江坂だった。そこからは一進一退の攻防が続いたと思う。いや、後半からはむしろ大分の勢いに押されていたかもしれない。後半45分、ゲームも終わりという頃に失点をしてしまう。

  このままいくと延長戦、PK戦か。川崎フロンターレにはPK戦の末に勝利しているよな。

  あまり望ましくない結末が心の中に芽生えた時、自分の前にあるテレビから感性が聞こえてきた。宇賀神選手と同じく、今シーズンで退団が決まっていた槙野選手がゴールを決めたのだ。目線を上げて画面を確認すると、ゴール裏に走る浦和の選手たちがみえた。試合はすでにアディショナルタイムに突入していた。

  浦和レッズは優勝したのだ。天皇杯を手に入れ、アジアへ挑戦する権利を手に入れ、引退を決めた阿部選手の獲得タイトル数をひとつ増やし、2019年に味わった悔しさを晴らすチャンスを得たのだ。

  浦和レッズはアジアの頂きを目指しつつ、三年計画の最終年を迎えることとなった。


  今回は少し長くなってしまいました。次回は2022年を振り返ります。

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