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台南で出会った三杯鶏(旅の覚え書き)

さて、5回に渡って書いてきた台湾旅行記もそろそろ最終回。
最後の話は、台南で出会った料理の事について書きたいと思っている。

台北から台湾新幹線で移動し、台南にやってきた。
台北から2時間ほどで着いた上に、新幹線チケット代は日本円に換算して5000円ほどだったと記憶している。
台湾はコンパクトな島国で鉄道での移動がとても便利である。
kkdayというアプリを利用したら安くチケットを買えたりするので、台湾を旅行する際にはダウンロードしておくと良いと思う。

台南は台北よりも小さな町で、何というか昔の日本のような、わたしの故郷の瀬戸内のような懐かしさを感じる街だった。
高い建物も少ないし、小さな個人商店が軒を連ねているという印象。
駅もかなり小さい。

カラスミ屋さんの店番をしているおじいちゃんがお昼寝をしていたり、映画の看板が手書きだったり、いちいち足を止めてじっくりと観察したくなる。台北に比べても時間の流れ方がかなりゆっくりしているように感じた。
気温がかなり高くて、1月なのに気温は28度を超えていた。
半袖でも良いぐらいの気候だ。

台北と同じく、台南の街でも食べ歩きをする。
台北では飲まなかったフレッシュジュースを飲んだり、台湾式のカレーライス(唐辛子と八角が効いている)、南部の名物料理である鶏飯も食べた。
台北と似たようなものも沢山あるけど、まず気がついたのは市場に沢山ハーブが売っていること。
気温が違うからか、台北と台南に並んでいる野菜のラインナップがかなり違っていて、台南の市場には九層塔(台湾バジル)や、茴香(ういきょう)などのハーブがワサッと積み上げられていた。

この台湾旅行で食べたかった台湾料理がある。
三杯鶏という料理だ。
台湾独特の調理法らしい、ごま油、醤油、米酒(米焼酎)を3杯ずつ加えて炒め物を作る。
最後にどさっと九層塔(台湾バジル)が入るのが特徴だ。

オンラインレッスンでも一度レシピを作ったことがあるのだけど、本場の三杯料理を食べて見たかった。
冬だったからか台北ではあまり見つけられなかったが、台南では簡単に見つかった。

夕飯を食べて小北觀光夜市に繰り出した(台湾ではおやつを含めて毎日大体10食ぐらい食べていた気もしている。食べ過ぎだけど、胃は結構大丈夫だった。その理由はまた番外編で)。
小さな夜市で台湾の夜市には珍しくアーケードがあった。
市場に併設されている夜市のようだ。

大きく三杯鶏と書かれた看板がある食堂に入った。
鶏だけでなく、兎も鴨舌も、ドジョウもあるみたい。
迷うことなく、三杯鶏とビールを注文した。
小さいながらも掃除が行き届いた清潔な食堂で好感が持てる。
平日の夜だからか、夜遅いからか客は我々3人だけだった。

中華鍋の柄がついていない、鉄鍋のようなものに入った出来たての三杯鶏にはガサッとバジルが入っていて、香りも素晴らしく、見た目もとても美味しそう。
鶏肉のレバーや砂ずりも骨付き肉と一緒に炒めてある!

一口食べて、我々3人は顔を見合わせた。
なんて、なんて、美味しいんだろう!
鶏肉の旨み、味の濃さ、油の加減、バジルの香り、全てが拍手を送りたくなるほどのバランス。
何とも見事な味だった。
骨付き鶏だったけど、骨のジャリジャリ感もなく、新鮮な鶏肉を使っているのだろうか臭みも全くなく、とにかく鶏肉の下処理も素晴らしい。

台湾で食べたものの中で、一番美味しいと感じられた料理だった。
バジルが入っているからか、東南アジアとの境界線も見えた気がした。

台南を訪れたら是非是非訪れてほしい食堂だ。
ここでしか食べられない味であることに間違いないく、何だったら台湾を訪れたらもう一度食べたいし、今度は違う素材の三杯料理に挑戦もしてみたい。

余談ではあるが、あまりに美味しかったのでどんな人が作っているのだろうと気になって、厨房を覗いた。
金のネックレスをした茶髪のマイルドヤンキー風のお兄ちゃんがフライパンを振るっていたようだ。
お兄ちゃんに三杯鶏がとても美味しかったことを伝えると、一生懸命Google翻訳に熱心に何かを書き始めた。
作り方か何かコツを教えてくれるのか、と3人でワクワクしながら待つこと30秒ほど。
お兄ちゃんは、「鶏」とだけ書かれた画面を我々に誇らしげに向けてくれた。
鶏であることは重々承知している。
「鶏肉の処理が全てである」と言いたかったのか、「鶏肉の質が全て」と言いたかったのかは謎である。

同行者3人で顔を見合わせた瞬間の事を大笑いをしながら帰路に着いた。
未だにそのことをよく覚えている。
きっとずっと忘れない台南の三杯鶏と台南の夜の思い出だ。