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社会課題解決のために「参画」する、寄付のカタチとは?ー認定NPO法人D×P理事長 今井 紀明さんが考える NPO法人の未来
みなさん、こんにちは。この記事は、火曜日の朝10時に配信している「スパイスファクトリーのラジオ」で2024年7月9日に放送されたラジオ放送の情報をもとにまとめています。パーソナリティは、スパイスファクトリー取締役・CSOの流郷と、パブリックリレーションズを担当している前田がお届けします。
今回も、大阪の認定NPO法人D×Pで理事長を務めている今井紀明さんに登場いただきます。スパイスファクトリーはD×Pに収益の一部を寄付したり、パソコンを提供するなどの支援をしています。10代の孤立と向き合うD×Pの活動を通して見える社会の課題と、NPO法人のこれからについて語りました。
▼前回の今井さんと話した内容をまとめたnoteはこちらです▼
NPO法人が信頼を得るためには?
前田:前回に引き続きになりますが、簡単に自己紹介いただけますか。
今井:大阪を拠点にしたNPOで、10代の孤立を解決するというテーマで事業をやっています。いま13期目で、オンライン相談事業の「ユキサキチャット」と、大阪ミナミの繁華街での居場所として「ナイトユースセンター」の運営を通して、子ども・若者のセーフティーネットを作っているNPOです。よろしくお願いします。
流郷:前回はD×Pさんの事業に焦点を絞りましたが、今回はもう少し広めに。NPO法人D×Pの今井理事長が考える「NPO法人の未来の姿」についてお話を深掘りしていきたいなと思ってます。すごい最初からぶっ込んでもいいですか?
今井:全然いいですよ(笑)。
流郷:日本だと「NPO法人って怪しい」みたいなSNSの投稿やニュースって多いですよね。あれって、どう思いますか?
今井:それは僕も日々すごく感じていまして。SNSを見ても、NPOの信頼度の無さというのがかなり目立ちますし、ニュースでNPOの不正会計が伝えられる時にも、個別のNPO法人の名前じゃなくて、「NPO法人の不正」みたいな形で報じられがち。世界各国の調査でも、日本は諸外国の中でNPOの信頼度がすごく低いんです。
流郷:私もスパイスファクトリーに入るまで、まともに寄付したことがほとんどなくて。赤い羽根の募金を小学校でやりますよね、あれくらいなんですよ。しかもほぼ強制的に寄付させるのがちょっと理解できなくて。羽根をもらえるだけで、何に私はアプローチしているのかわからないし。
今井:何も説明もされずに袋を渡されて、半ば強制的に寄付しなきゃいけないのは、まず寄付体験としてあまり良くないですよね。僕の娘たちにも小学生の時に、寄付しなきゃいけない空気だったって言われたことがあって。なので、寄付するっていう意味を娘にきちんと説明したらようやく納得して、じゃあ私の貯金入れようかなってなりましたね。
流郷:なんだか当たり前のように、出さない家庭は白い目で見られるみたいな雰囲気が、ちょっと納得いかなかったんですよね。
今井:日本だと、寄付とか自治会費とか、強制的な徴収という体験が根付いてるところもあります。それが不信感につながっているのはあると思うんですよね。
流郷:D×Pさんに寄付したら、たくさん活動レポートをくださるので、ちゃんと自分が寄付したお金を有効に活用してくれているんだってことがわかるから、寄付し続けていこうって思うんですけど。やっぱり私と同じような人って結構たくさんいると思ってて。
今井:現在の日本の寄付金額はだいたい1.2兆円ぐらいと言われていますが、アメリカとか欧米各国に比べたらはるかに低い。しかもそのうちの7000億ぐらいはふるさと納税みたいな状況。震災があった時にやや増えるぐらいで。
流郷:そうですよね。あんまり増えているという感じはしませんよね。
今井:ただし、日本人って面白いなって思うのが、贈与文化は実はめちゃくちゃあるんですよ。リブセンスの桂さんが言っていたんですけど、日本は昔からお年玉とかお中元とか、そういうモノで贈りあう文化はたくさんあるって指摘されていて。欧米各国にはない贈与=人に贈りあう文化があるし、お互いに支え合ったりする仕組みはある。寄付額の換算だと欧米各国よりは低いけれども、それ以外で割と日本人は寛容なところがあります。
流郷:確かに、そうですね。ただ、それも薄れつつある気はしますよね。例えば年賀状も廃れましたし、お歳暮とかお中元って文化もどんどん減ってきている。贈与によって成り立っていた文化が薄れてきているのが、今の日本の社会なのかなとは思いました。
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日本のNPO法人の現状と、D×Pが目指す情報の透明性
今井:実はNPOの話に戻すと、寄付型のNPOって割と少ないんです。NPO法人の数は、5万法人ぐらいですけど、ほとんどはボランティア組織で給与を支払っている法人はまだ少ない。それも行政の受託事業や福祉系のビジネスで株式会社と同じ形で稼いでいるNPOです。だから寄付で動いているNPOっていうのはもう2%とか3%とか、かなり少ないのが日本のいまの現状。しかも国際協力がメインなんです。
流郷:そうなんですね。そんなに少ないんですね。
今井:例えばうちみたいな子ども・若者の貧困やセーフティネットという支援をやっているNPOって、かなりレアです。そういったNPOが13期も続いて、寄付者さんも増えてきているっていうのは、俯瞰的に見ると興味深い現象だなとも思います。
前田:D×Pさんの活動を知ることで自発的な思いで寄付行動に繋がったことが、私自身でも驚きを隠せなくて。D×Pさんが意識されている寄付体験の設計ってあったりするんでしょうか?
今井:寄付体験の設計ではないですけど、寄付者さんへの説明はしっかりやっているかなと思っています。まず大前提として、なぜ寄付で事業をするかということを説明する。前回も話した通り、国や民間会社ができないこと・見過ごされている社会課題を解決していくので、活動予算の80%以上は寄付で賄っていかざるを得ない。さらに明確に伝えているのが、例えば「ユキサキチャット」で食糧支援や現金給付支援をやっていますけど、食糧や現金を給付するだけでは相談に来ている子どもたちの課題解決にはならないことがやっぱり多い。だからスタッフを雇用して支援する必要性があるってことを伝えています。
前田:私もその情報の透明性、寄付した後の情景が想像できるからこそ、自発的に寄付できたのかなって、今の話を聞いて思いました。
今井:それこそ大阪府の平均給与を目指して、D×P職員の給与を上げていくと、寄付者さんには明確に伝えています。だって人がいるからこそ、きている相談にも対応できるし、サポートが増やせるし、成果につながっていきます。案外、他のNPOはそういうことを明確に言えていないし、恥ずかしがって言わないみたいなところがやっぱりある。だから、信頼にもつながってないんだとも思いますね。
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すべての法人に必要なのは、ファンドレイジングのノウハウ共有
流郷: NPO法人の方だって働いているわけじゃないですか? それなのに、お給料をもらうことに対して違和感があるみたいなSNSの投稿をよく見ますよね。それは寄付を何にどう使って、どういうふうに支援して、どういうふうな人件費として使っているという説明が少ないからなんでしょうね。
今井:うちの活動でいうと、現金と食糧だけ渡して課題解決するっていうのは、すごい甘い話で。それで自分で債務整理するとか、学業を立て直すとか、なかなか一人でできるわけじゃないんですよ。だからそうしたサポートもしっかりやって、仕組みを作っていくためには、やっぱり人が必要で。そこをちゃんと説明していくってことは、NPO法人として大事にしてますね。
流郷:逆に今この令和の時代に、NPO法人はどうあるべきと考えていますか?
今井:非営利組織の役割とか、寄付の運営ノウハウってめちゃくちゃ重要だなって思っています。前回のラジオでも相互補助の仕組みが壊れてきている、セーフティネットが少しずつ壊れているって話しましたが、もう一回新しい仕組みとして構築し直さなきゃいけないと思うんですよね。その時に、国の税金や政策を求めていくというのでは遅いから、一人一人がお金を出してもう新しいモデルを作っていく。それにはやっぱり非営利組織の経営ノウハウって重要だと思っているんです。それはおそらくNPOだけじゃなくて、例えば学校法人とか医療法人、社団法人、あと非営利型の会社とかでも重要なはずです。
流郷:学校もですか。
今井:学校法人って明らかに国の予算も減っていますし、自分たちでファンドレイジングしていかないと、教育への投資って減っていくと思うんですよね。慶応とか東大とかかなり寄付を集めてますけど、地域の初等・中等教育でも、地域の方々とか、地域の富裕層の方からやっぱり寄付を集めていくことで、社会全体をある意味喚起していくのが大事。寄付を通じて市民に参画していただきつつ、新しい教育や福祉の仕組みをみんなでつくっていくのは、どの法人でも重要かなと思います。だから僕らはいま経営のノウハウの公開もやっています。
流郷:それXで拝見しました。NPO法人同士がつながるとか、ノウハウを伝え合うってイメージを全く持っていなかったので、すごく新鮮で。やっぱりつながっていくべきっていうのを改めて感じました。
今井:去年は7団体に、デジタルアウトリーチという「ユキサキチャット」で得たノウハウを公開しましたね。そうしたノウハウを一団体で貯めない、ちゃんと共有していくってのがNPOとしてすごい重要だと思ってます。
▼参考記事はこちら▼
寄付することは、社会課題の解決に参画すること
流郷:やっぱりこれからってNPO法人ってもっと増えるべきだと思いますか? 新しく立ち上げるべきかどうかどうお考えですか?
今井:NPO法人だけじゃなくて、NPO法人の寄付集めの手法とかがよりいろんな法人に広がってほしいなとは思っていて。だから増える増えないでいうと、それを活用する法人がより増えたり、実働している法人が増えたらいいなとは思ってますね。いろんな法人が、地域で寄付をお願いしていくことで、市民参加が増える、いわば関係人口が増えるっていうのが重要なのかなと思ってます。
前田:いいですね。そういった巻き込み型、みんなで作っていく形を作っていく方が健全ですもんね。
今井:寄付ってやっぱり参画なので、参加してもらうことがまずは大事ですね。
前田:「参画」って言葉がキーワードとしてありましたけど、寄付って今まではあげちゃうというか、あげっぱなしのイメージがありました。でも「参画」って言われると、どんどん馴染んできます。社会をよりよくするための仕組みづくりに参画してるっていう感覚の人が、増えるといいですね。
流郷:本当にそう。いろいろな社会課題があるけど、自分が手の届かないことって必ずあると思います。それに対して関係させてもらっている、関係人口の一人でいるって状況を作るのがすごく大事なんだなって、お話し聞いてて思いましたね。
今井:寄付ってすごく重たい行為だと日本人は捉えがちなので、やっぱり参加とか参画とか捉えやすい言葉で語るのが良いのかなと。うちの活動ならば、10代の孤立の解決のために参加しているんだっていうことを伝えていきたいなと思っています。
流郷:そんなD×Pさん、今井さん自身の今後のビジョンを最後にいただきたいなと思います。
今井:D×Pは「2030ビジョン」を作ってます。今13歳から25歳の日本の人口って1500万人強ぐらいって言われていて、「ユキサキチャット」のような支援が必要な子は200万人前後ぐらいいるはず。でも国や自治体が今リーチできている子どもたちは1割しかいないので、それを3割まで上げていく。これはD×P単体だけじゃなくて、他のNPOや国がオンライン相談できるようにしたり、そうやってリーチしていく。そうすると子どもや若者にかけるリソースが増えるってことになるので、まずはそこを目指していきたいですね。
流郷:尊敬しかないなぁ。ありがとうございました。あっという間にお時間が来てしまいましたので、また定期的にゲストでお呼びしたいなと思います。この番組は360度デジタルインテグレーターとしてDX支援を事業を展開しているスパイスファクトリー株式会社がお送りしています。それではまた次回お楽しみに。
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