超短編/飽き性な神
神は全地全能である。創造神にして破壊神、つまり全ての生命を創ることも、壊すことも自由である。私は天使の中で一番下の立場であるから、神の行った偉業を一つも漏らさず記録することを任せられた。あのような尊いお方から命じらたので誠に光栄である。
神は、今日あたらしい世界を創られた。しばらくその世界を眺めていたが、すぐに飽きてしまい、一つの星に生命を創ることにした。
神はまず小さな生命を創ってみたが、あまりにも小さかったので植物というものを創られた。神は水をやったり花を摘んだりしていたが、そのうち飽きてやめてしまった。
神は海にたくさんの生物を泳がせてみた。それらは互いに食う食われるの関係を保ち、多いに神をを楽しませた。しかし、同じことの繰り返しでこれにも飽きた神は海の生物達をほとんど殺してしまった。
神は陸上にひときわ大きく、強い動物を創られた。それらを恐竜と神は名付けられた。彼らは強く、美しい生き物で、かなり長い間、私が一番上の天使に上り詰める間神は飽きなかった。おそらく今までで最長であろう。ところが、結局同じことの繰り返しを何回も何回も見ているとやはり神はつまらなくなってきた。彼らを壊すことに対して惜しむ天使も少なからずいたが、神は
「新鮮さを失ったものは壊すのが私の流儀である」と言い、彼らを壊した。
神はそれから新しいものを創っては壊し、創っては壊し、というのを繰り返した。そんな時、神はこんなことをおっしゃられた。
「今までは力が強く、闘いながら生きていく生き物を創ってきたが、今回は頭脳に特化した生き物を創ってみよう。」
私はその時想像がつかなかったが、実物を拝見した時はそれは驚いた。神が創り出された人間という生き物はこれまでの動物の中で哀れなほどに貧弱であった。神も最初は生き残った猛獣類に追いかけ回されている人間を呆然とみていた。ところがしばらくすると人間たちが妙な行動を起こし始めた。鹿の死体を見つけると、ツノを取って、二メートルほどの枝の先端に結びつけたのだ。一体何をするのかしばらく観察していると、突然一人の人間に猛獣が突進してきた。神も、私もその男は死んだと思ったが次の瞬間、男が先ほど作った棒がしっかりと猛獣の体を貫通していた。猛獣は暴れかけたが、すぐに動かなくなった。一連の出来事に唖然ときている私に対して神は好奇の目を向けていられた。
神は人間が作り出す様々な道具というものに非常に関心を持っておられた。生命を食べるだけでなく、利用する生き物はほかにいなかったからであろう。だが、新しいものを発明、発展させても、それは大きなワンパターンなのだ。そして、最近神はこう呟いてらっしゃる。
「人間も飽きてきたなぁ」