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【コラム】神様と熊手のはなし|鷲神社の酉の市

11月29日に台東区の鷲神社(おおとりじんじゃ)で三の酉(さんのとり)が開かれた。三の酉というからには三回開かれており、一の酉(11/5)・二の酉(11/17)・三の酉(11/29)という三段構えだった、ということだ。

だが、毎年三回開かれるというわけではない。これは干支に関係している話で、12年単位で1周する干支を日にち単位で当てはめると12日で1周することになる。1ヵ月はだいたい30日なので、干支に当てはめるとどうしても酉の日が2回しか巡らない、ということなのだ。

11月5・17・29日と3回巡ったことから、2024年の酉の市は「三の酉」がひらかれた。そもそも、酉の日に対してそこまで祝う理由がわからなかったのだが、どうやら神社にお祀りされてる神様に由来するようだ。

鷲神社でお祀りしてる神様は、天日鷲命(あめのひわしのみこと)と日本武尊命(やまとたけるのみこと)の2人だ。まずは、天日鷲命には「鷲」という字があるように、日本書紀の伝説にまつわる話をする。

天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸に隠れた際、隠れてしまった天照大御神を呼び戻すための儀式がいろいろ行われた。力のある神様が岩を動かすと、天照大御神から放たれる光が世界に広がると同時に、弦楽器に「鷲」が降り立った、というのだ。

楽器を弾いていた神様には「鷲」の文字が加わり、天日鷲命(あめのひわしのみこと)と称されるようになる。神様と鷲のエピソードから「酉の日」に縁起を感じることから、酉の日が祭りとなるのだ。

もうひとつは、日本武尊命(やまとたけるのみこと)と熊手のはなしだ。東北地方の夷(えみし)と呼ばれる民族を従えるために遠征し、鷲神社に寄って勝利を祈願した。遠征の成功を収めると、鷲神社でお礼参りに行った。勝利するための武器が「熊手」のような形だったという。

日本武尊が熊手状の武器で勝利を収めたことから、「福や縁をかき集める」ことを表し、熊手を縁起物として扱うようになった。神社前には神様にも分かりやすく大きな熊手が設けられ、酉の日にお礼参りされたこともあり、「酉の市」なのだ。

天日鷲命は、神様と鷲のタイミングにまつわることから「開運」にご利益があり、日本武尊命は、縁と勝利にまつわることから時代に見合った商売繁盛にご利益があるとされている。来年の酉の市は2回開かれ、3回開かれるのは2026年なので参考までに。


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